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マキノ雅弘監督『すっ飛び駕』

2008-11-28 15:38:50 | ノンジャンル
 WOWOWで、マキノ雅弘監督の'52年作品「すっ飛び駕(かご)」を見ました。山中貞雄監督の'36年作品「河内山宗俊」のリメイクです。
 銭湯に女がやってくると、男湯で浪花節を歌っている中年の坊主・河内山宗俊(大河内傳次郎)は、武士に追われている若い浪人・金子市之丞を、銭湯の主人に頼んで、女湯に匿ってもらいます。女は宗俊に惚れている、吉原の森田屋の女将・お春でした。宗俊は、森田屋の妹・みちとせを吉原から救い出す算段をし、宗俊の知り合いでもある直次郎(河津清三郎)にみちとせがぞっこんであるのが障害だと言います。直次郎は市之丞を追う武士たちから協力を請われ、話に乗り、また、悪行の分け前を寄越せという盲目の按摩を川へ突き落とし、博打の寺銭で大金を儲け、檀家の嫁をたらしこんでいる坊主を脅して金を巻き上げる計画を宗俊に持ちかけると、宗俊はいくら自分たちが悪人でも、人としてやっていいことと悪いことがあると、直次郎の頭をぶち、追い返します。先日助けてもらった挨拶をしに来た市之丞は、幕府から富士川堤防改修を命じられていた棚倉藩で不正が発覚し、それを幕府に知らせようとした市之丞の父が、不正を働いた家老の大村一派に殺され、不正の犯人に仕立て上げられたことを、宗俊に説明します。宗俊は森田屋に市之丞を匿ってもらい、直次郎はみちとせから市之丞のことを聞き出します。そして市之丞は駕篭で移動中に大村一派に襲われ、宗俊が助けますが、市之丞は付き人を皆殺しにされてしまいます。お春は酔って宗俊に言い寄りますが、自分がいつ死ぬか分からないと思っている宗俊が相手にしないので、お春は泣きます。森田屋は自分とみちとせの母が市之丞の父の召使いであったことを知り、改めてみちとせのことを宗俊に頼みます。宗俊はみちとせを吉原から救い出すてはずを整え、森田屋はみちとせが逃げ出す機会を作るために吉原に火をつけ、罪を背負って自首します。宗俊は川で溺れていた直次郎を助け、その恩を売って、みちとせと別れさせ、自分のお伴をさせて、大僧正に化けて江戸幕府の屋敷を訪れ、人払いをした後に自分の本当の身分を明らかにした上で、棚倉藩の大村一派の不正を告げ、市之丞たちを救うのでした。そして帰ると、大村一派に通じていた直次郎に斬り掛かり、自分が大僧正に化けたことに加担したことでお前も獄門だと脅して、路銀をやって江戸を去らせます。そして市之丞とみちとせを一緒にさせようとしますが、市之丞が女郎と一緒になることは立場上できないと言ったことに怒り、声を荒わげて市之丞を打ち据え、家から追い出すのでした。宗俊はお春のことを思っていたことをお春に告げ、みちとせには直次郎と無理矢理別れさせたことを詫び、家を囲む御用提灯の中にひとりで出て行くのでした。
 江戸城で宗俊をニセ者と見破る侍が、「百万両の壷」で殿様を演じた役者であるように、山中貞雄監督へのオマージュにあふれています。流麗なカメラワーク、見事なカットつなぎ、素晴らしい構図、機微に通じた俳優たちの演技(特に女性のため息は一つ一つが色っぽい!)、どれをとっても映画そのものとも言える素晴らしさです。マキノ監督の隠れた傑作でしょう。文句無しにオススメです。