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高野秀行『巨流アマゾンを遡れ』

2008-11-21 18:20:13 | ノンジャンル
 高野秀行さんが'91年に出した「地球の歩き方・紀行ガイド アマゾンの船旅」という本を改題した「巨流アマゾンを遡れ」を読みました。普通の観光客として、アマゾンを河口から源流まで遡った紀行文です。
 まず、出発の準備として揃えなければならないものは「人それぞれ、勝手にしやがれ、だ。」と突き放し、それでも「最低、確保すべきものは、着るもの寝るところ食うものである。」と教えてくれます。アマゾンの河口を遡る際に揃えておくといいものは、船で寝る時に使うハンモック、ハンモック用の蚊帳(かや)、明け方に冷え込むので毛布、盗難予防で荷物を柱に縛り付けるための、犬の鎖と鍵、念のための水とトイレットペーパー、抜群に効く日本製の蚊取り線香なのだそうです。
 船でアマゾンを遡り始めてすぐに、著者は船の揺れに応じてブンブン揺れるハンモックに悩まされ、ジャングルの中に不夜城のように突然現れる、日本の巨大な製紙工場に驚きます。「昼夜を問わず、アブ、ブユ、蚊、ダニ、刺しバエ‥‥とありとあらゆる虫にやられ、全身、足の先からパンツの中まで、赤い跡だらけ、しかもそれがいつまでたっても、かゆい。ときどき、手が二本しかないのが耐え切れず、『わあっ』と叫んで、狂ったように、かきまくる。」という苦難にも会います。上流から下って途中で会うはずだった仲間は、何度も盗難に会い、会った時には、薄汚い格好で地面に座り込んで露店商の手伝いをしていました。インディオの村に潜入すると、そこではインディオ初の統一組織を結成するための決起集会が行なわれていたりするのです。こういう点は、僥倖に恵まれるという、高野さんの面目躍如といったところです。
 また、コロンビアは独立以来、一度も独裁政権が長期に行なわれたことがないという、中南米では稀な国であり、それくらい民主主義が発達しているので、軍隊が市民に対して礼儀正しく人なつっこいというのも、この本で初めて知ることでした。
 プロの写真家の方が同行しただけあって、見事な写真も豊富に見られ、とても充実した読書体験をしました。気軽に読め、また面白い。文句なしにオススメです。