静岡県商工会連合会の今年度事業のひとつ・しずおかうまいもの創生支援事業(小規模事業者全国展開支援事業)で開発中のフルーツゼリー。1日(月)の会合で商品がおおよそ完成し、ネーミングとパッケージデザインが本格的にスタートしました。
過去ブログでも紹介したとおり、ゼリーの原材料は、伊豆の月ヶ瀬産梅シロップ、富士川のキウイフルーツ、牧之原の紅ほっぺ、袋井のマスクメロン、三ケ日の青島みかん。これをご当地のお菓子屋さんがゼリーにして、5つをセットにして全国へ売り出すというプロジェクトです。
私の仕事は、ネーミングと、セットに添付するリーフレットの制作。5つの果物産地と、5人の菓子職人の横顔を紹介するため、今日(3日)から各店の取材を始めました。
最初に訪れたのは、富士市になったばかりの旧富士川町中之郷にあるツル屋製菓店。県道よりも山寄りの、細い抜け道沿いにある小さな和洋菓子店です。
店主の山田さんから「絶対にわかりにくいから、富士川楽座まで迎えに行きますよ」と言われましたが、ネットでマップ検索してなんとか迷わず到着しました。周辺には商店がまったくなく、目印になるような建物もなし。正直、ここで商売ができるの?と思ってしまいました。
ツル屋は、パン製造会社で修業した山田さんのお父さんが昭和32年に洋菓子店として開業。折からの高度成長期、クリスマスケーキのはしりで、作れば作るだけ売れたそうです。当初は卸中心に作っていましたが、25年前、山田さんが修業先の東京から戻ってきた頃には店頭売りにも力を入れ始めました。
店の看板菓子である「モザイクロール」は、創業時からの変わらぬ味。バターとココアの二色スポンジがモザイク柄にロールされているのですが、グラニュー糖がふりかかっていて、あぁ、子どもの頃、よく食べたおやつの味だぁと思いました。
このモザイク部分がフワッとバラけるので、幼児の離乳食なんかにピッタリだそうです。グラニュー糖が表面にキラキラ光っているケーキって、おやつゴコロをすごーく刺激しましたよね!!半年前まで1個80円。小麦粉&バターの高騰で、やむをえず100円にしたそうですが、これも子どものおやつ価格のまんまです。
もうひとつの看板商品、「チャーミング」は、山田さんが家業に戻ってきた25年前からの人気パフケーキ。不二家から「ペコちゃんのほっぺ」という類似商品が出ているそうですが、ツル屋さんのほうが先。いろんなお店で類似品がずいぶん出回ったそうです。
デパ地下のスイーツコーナーに並ぶ有名パティシエの作品に比べれば、モザイクロールもチャーミングも、特別凝った作りではない、実にシンプルなお菓子です。たぶん、子どもが最初に自分のお小遣いで買う“はじめてのスイーツ”なんですね。こういう商品を、ブレることなくロングセラーで作り続けるって、とても貴重なことだと思います。
「店を大きくしようとか、メインストリートに支店を出そうとか、デパートに出店しようなんて欲を考えず、家族で作れるサイズをずっと守ってきました」と山田さん父子は謙虚に語ります。
とはいえ、お菓子屋さんの業績は、少子化の問題と切っても切れないものがあり、子どもが大勢いた時代はお祝い事やそのお返しの需要がたくさんありましたが、今はさっぱり。
それでも、この地域でなくてはならない店として継続していくためには、多少、目先の変わったことに挑戦もしなければ、ということで、今回、キウイフルーツのゼリー作りに取り組むことになりました。
なんでも山田さん自身はキウイアレルギーなんだそうで、家族に味見してもらいながら、試行錯誤を繰り返したとか。キウイは収穫時によって香りや酸味にバラつきがあり、とくにキウイの酸味はとりたててスイーツ向きでもなく、ジャムにする程度の需要しかなかったそうですが、私がこの事業で最初に味見した5種のゼリーで、一番おいしかったのがツル屋さんのキウイゼリーでした!
日持ちするゼリー菓子にするには、試作品をある程度保存しておいて、色や香りの変化をチェックする必要がありますが、個人的には仕上がりがすごく楽しみ!
なにより、子どもがスイーツデビューするような大事なご近所のお菓子屋さんが、ご近所で獲れた果物で作るゼリーです。デパ地下の有名パティシエスイーツにはない、オンリーワンの魅力があるはずです。それをなんとか、私のつたない筆で少しでもアピールできますように・・・帰路、富士川の向こうにくっきり見えた富士山に、誓いを新たにしたのでした。