杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

祝!『カミハテ商店』静岡公開

2012-11-30 10:27:46 | 映画

 当ブログでも再三ご紹介した山本起也監督の『カミハテ商店』が、12月2日(日)、JR静岡駅前の静岡シネギャラリー・サールナートホールにて特別先行上映されます。年明け1月5日から静岡シネギャラリーにて公開になります。

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『カミハテ商店』特別先行上映会 (くわしくはこちら

◇場所  静岡シネギャラリー(サールナートホール) JR静岡駅前

◇時間  10時・13時・15時30分・18時35分

◇毎回舞台挨拶あり/山本起也(監督・脚本)、高橋伴明(プロデューサー)、水上竜土(脚本・出演) 

 

 

 私はすでに東京で観ており、今週末は京都に行くので2日の上映会は行けませんが、山本監督から送っていただいた資料の中で、惹かれた部分をご紹介します。2日は4回上映されますので、ぜひご都合のいい時間にお運びください! 

 

『カミハテ商店』山本起也監督インタビュー

 

■映画の立ち上がり

 2009年、私が専任を務めている京都造形芸術大学映画学科“北白川派”第3弾(注)をやらないかというお話を、現学科長の高橋伴明監督からいただきました。(中略)伴明監督から、学生が授業の中で書いた映画の企画を何本か渡されました。そこで一番気になったのが、日當遥と山口奈都美という2人の学生が書いたオリジナルストーリー『カミハテ商店』でした。

 隠れ自殺の名所となった断崖の近くで、寂れた商店を営むひとりの老女。訪れた自殺者は何故か商店に立ち寄り、アンパンと牛乳を買い求めます。しかし老女は自殺者を引き止める訳でもなく、ただ見送ります。しかも、翌朝断崖に行き、自殺者が残した靴を回収して来るのです。

 2人の学生が生み出した、千代という名の奇妙な老女に、私は何故か強く魅かれました。また、そこに込められた“人間はちょっとした人と人との心のつながりで変わる”というテーマに共感したのです。

 まず2010年2月に学生参加型のシナリオ合宿をやりました。そこで出た学生のアイディアを取り入れたり、共同脚本の水上竜土さんとも相談しながら脚本を煮詰めていきました。脚本と平行しながら撮影の準備を行い、2011年2月に撮影を開始しました。

 

 

■映画に描かれる自殺について

 脚本を作成している段階でさまざまなリサーチを行いました。中でも福井県・東尋坊で自殺防止活動をされている茂幸雄さんのお話は、映画に登場する人物の心理を描く上でとても参考になりました。

 いっぽうで、自殺者がなぜ自殺をするのか、その心理を追及することを作品の核とするのはやめました。むしろ、生きることについての映画を作りたいと考えました。何かをあきらめたり絶望している人間が、その人にとっての神様に出会い、変わってゆく。そんな話を作りたかったのです。『カミハテ商店』は、この映画をご覧になるひとりひとりの心の中にあるのだと思います。そういう意味では、この映画はファンタジーなのかもしれません。

 

 

■ヒロイン千代について

 千代はトルストイの短編『Where Love is,There is God.(愛あるところに神はまします)』の中に出てくるお話「靴屋のマルティン」の主人公を参考にしました。靴屋のマルティンが、日常生活の中でむしろ蔑んだり見下している人間こそが自分の神様だったと気づくお話です。千代にとっての神様は、牛乳配達の青年だったり、無口なバスの運転手だったと思います。企画のテーマである“ちょっとした心のつながりで人は変わる”ということを、自分なりにそのように解釈した、というわけです。

 

 

 なお、(注)北白川派とは、映画を通して新たな芸術運動の狼煙を上げるため、京都造形芸術大学映画学科から立ち上がったプロジェクト。学科が一丸となり、その全機能を駆使しながらプロと学生が共同で毎年1本の劇場公開作品を完成させ、発表していくものです。第2弾作品からは学生が配給・宣伝にも参加しているそうです。

 

●第1弾 『黄金花 秘すれば花 死すれば蝶』(08年公開) 木村威夫監督、原田芳雄・松坂慶子主演

●第2弾 『MADE IN JAPAN こらッ』(11年公開) 高橋伴明監督、松田美由紀主演

●第3弾 『カミハテ商店』(12年公開) 山本起也監督、高橋惠子・寺島進主演

●第4弾 『弥勒』(13年公開予定) 林海象監督、永瀬正敏・井浦新主演

●第5弾 福岡芳穂監督作品(14年公開予定)企画進行中


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