杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

第3回茶道に学ぶ経営哲学研究会

2011-10-06 17:49:06 | 駿河茶禅の会

 昨日(5日)夜、駿府公園にある紅葉山庭園の茶室で、『茶道に学ぶ経営哲学研究会』の第3回例会が開かれました。あいにくのお天気で、参加者も少なかったのですが、素晴らしい茶室で望月静雄先生に懇切丁寧に教えていただき、大いに満足しました。

 

 

 

 

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 紅葉山庭園の茶室(大広間・雲海)は、千利休以前の室町・東山文化の名残を伝える書院造り。時代劇でよく見るように、殿様が座るところが一段高くなっている格式ある様式です。これは表千家流の茶室によく見られるそうで、その理由は、表千家が江戸時代に紀州徳川家に庇護されたことに由来するとか。これに比べ、裏千家は千利休が唱えた侘び・寂びの精神に連なる質素な茶室を好んだそうで、その理由は質実を重んじる加賀前田家に庇護された経緯によるもの。なるほどな~って思います。

 

 

 

 

 

 紅葉山庭園が(表千家流に多い)書院造りになったのは、静岡市はどちらかといえば表千家流が多く、また徳川ゆかりの駿府城内ということもあったと思いますが、市営施設ですから他の流派の人が使ってImgp4876
も一向に構いません。望月先生は「管理が行き届いている。掃除するときも掃除機を使わず、箒で丁寧に掃除している。実に使いやすい」と褒めておられました。

 

 掃除機を使っていないのがなぜ判るかといえば、ちょうど畳に座った時、壁に、ちょうど腰の高さぐらいまで和紙がコーティングされている部分(=着物の帯があたって擦れるのを防ぐ)があって、掃除機を使えば、和紙の下の部分に掃除機の柄の先端があたって、線を引いたように擦れるんですね(写真)。紅葉山庭園の茶室は、まったく擦れていませんでした。・・・解る人が見れば判るんですね~そういうところ。

 

 

 

 

 

 茶道というのは、万事、「解る人には判る」に尽きると思いました。たとえば掛け軸。昨日の紅葉山庭園茶室にかかっていたのは、碧厳録に書かれた禅語『山雲Photo海月情』でした。・・・えーっと、まず素人は何て書いてあるか読めない(苦笑)。

 望月先生の解説によると、静岡県引佐出身の小野寺寛海師が書かれたもので、寛海老師は千利休の墓がある京都大徳寺聚光院の住職も務められた、茶の世界では名高い方です。

 

 

 意味は、〈山にかかる雲も海に映る月も、天地自然の妙趣。しばし世俗を離れ、気の合う者同士、心ゆくまで大自然の美しさを語り尽くそうではないか〉ということ。家に帰ったら、自分の書棚にあった禅語の本にちゃ~んと、『話尽山雲海月情・・・かたりつくす、さんうんかいげつのじょう』と紹介されていました。いやはや、書棚に、買いっぱなしで未読の本が多い現実を今さらながら思い知りました(恥)。

 

 

 

 

 それはさておき、茶室に招かれたら、まず、正面の掛け軸に一礼するのがマナー。掛け軸の言葉の読み方、意味、書き手・・・すべてに亭主(ホスト)の思いや、おもてなしのテーマが込められていて、“正客(第一ゲスト)”ならば、問わずとも理解する・・・というのが理想なんだそうですが、よほどの教養の持ち主でなければ無理というもの。亭主に訊いても、けっしてマナー違反ではありません。っていうか、解らなければ訊かなきゃ。ホストが、「心ゆくまで語り尽くしましょう」なんてメッセージを込めてくれたのであれば、その思いに気づかずに、ただ正座して緊張してお茶飲んで終わり、じゃあモッタイナイですよね!

 

 

 仮に、『山雲海月情』の意味や、寛海老師のことを知っていても、それをあからさまに言葉にしたり、自分の教養をひけらかすようないい方は、茶席では“無粋”。「老師はお達者でしょうか・・・」等など、さりげな~いやりとりが粋なんだそうです。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、紅葉山庭園には他に『瑞光』『西江水』『無事是貴人』『千里同風』『清新茗一杯』という掛け軸がありますが、望月先生が『山雲海月情』を選ばれたのは、月という秋を感じさせる文字があったにせよ、縁あってこの席に集った者同士、胸襟を開こうと、無言で呼びかてくださったのだと思います。

 

 

 

 

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 掛け軸一つで、これだけの意味があるってことは、亭主が用意してくれた茶花、菓子、道具の一つひとつにも、“あつらえ”の意味があるわけです。

 昨夜は、茶室の構造や各パーツの“あつらえ”を理解しようとしただけで頭がハチ切れそうになり、その後、ひととおり茶をいただく作法を実践指導していただきましたが、“型”を覚えるだけで精一杯。身体で覚えるのが先決だと思いました。これは、初めて坐禅をしたときと同じでした・・・。

 

 

 

 

 

 終了後は、「自分もはまりそう」とおっしゃってくれた海野尚史さん、一緒に会の運営を担当してくださる静岡県ニュービジネス協議会の前専務理事・末永和代さん、ニュービジネス協議会事務局の渡邊千紘さんと4人で、オープンしたての新静岡セノバレストラン街のお蕎麦屋さんで遅い晩ご飯。静岡のど真ん中でこれだけ話題になっている商業施設に入った蕎麦屋なら、静岡の地酒があるだろうと期待したんですが、残念ながらハズレで、ビールと焼き鳥と蕎麦で乾杯し、肩の力を抜きました。

 

 

 

 茶道の本質にちょっとでも近寄りたいって思っても、一歩近寄れば、相手は十歩くらい離れて行く、みたいな、底なしの奥深さがあると実感します。とりあえず、次回は10月30日酒と匠の文化祭Ⅱでのミニ講座で、どなたでも無料参加できますので、ぜひお越しくださいまし!

 

 

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