西武池袋本店『静岡ごちそうマルシェ』終了後、自宅に届いたのは、マルシェが始まる前に大車輪で取材執筆したJA静岡経済連情報誌『スマイル』の最新号・いちご特集。いちごのハイシーズンであるクリスマス前の発行が至上命題だったのですが、いちご生産現場の取材が出来るのは10月末以降という制約があり、短期間でのあわただしい誌面作りとなりました。なんとか間に合ってよかった!
繁忙期に入ってしまって取材先のアポイントが思うようにとれず、いつもの誌面よりも取材先が少なく、少し物足りない感じもしましたが、仕上がりを見てビックリ! JA静岡経済連が、西武池袋本店で静岡いちごのトップセールスを今年1月に開催し、来年1月にも行うことが巻頭で大々的にアピールされていたのです。「西武池袋本店って静岡県をこんなに応援してくれていたんだ~」と今更ながら感激でした。
西武池袋本店『静岡いちご紅ほっぺストロベリーフェスタ』は2018年1月10日から30日まで。地下2階の生鮮倶楽部青果市場での試食のほか、地下1階のスイーツ専門店で期間限定の紅ほっぺスイーツメニューを販売します。紅ほっぺというブランドは知られていても、静岡原産だと知らない人が少なくないそう。九州や北関東など強力な特産地が多い中、品質で勝負の静岡いちご。地酒と同様、優れた品質をいかに消費者に理解してもらうか、販売現場での役割は大きいと思います。今回発行のスマイルが、消費者理解の一助になれば、と願っています。
さて誌面では紅ほっぺに続く新しい静岡いちごブランド『きらぴ香』の開発経緯と特徴について、県農林技術研究所での取材をまとめてあります。一部をご紹介しますので、ぜひ実際にスマイルをお手に取ってみてくださいね!(県下主要JA窓口、ファーマーズマーケット等で無料配布します)。
次世代のエースをねらう!静岡いちご「きらぴ香」
(解説)静岡県農業技術研究所
いちご史上最高の香り
『きらぴ香』は表面がツヤツヤと輝き、スマートな形状。鼻を近づけるだけで甘くフルーティーな香りが立ちます。開発者自身、「いちごでは現在考えられるベストな香り」と太鼓判を押すように、確認された香気成分は実に129種類。主要成分ではいちご香(Furaneol)をベースに、バラの香り(Geraneol)、りんごやバナナのようなフルーティーな香り(Isoamyl acrtate)も含まれ、くどさのない爽快な香りを構成します。
きらぴ香
紅ほっぺ
糖度は紅ほっぺより高く、収穫シーズンを通して9.5度と安定しています。逆に酸味は低く、酸っぱいいちごが苦手という人にも勧められます。今年シンガポールで開かれたバイヤー向けの試食会では全国の名だたるブランドいちごを抑え、人気ナンバーワンを獲得。日本が誇る美味しいいちごのブランド競争最前線に躍り出ました。
収穫時期が長く安定的
研究所では品質の優位性はもちろん、生産効率が高く、農業所得の向上につながる品種の開発を目指しています。きらぴ香の開発にあたっては、市場のニーズが最も高まるクリスマスシーズンや年末年始に出荷できる極早生の品種で、なおかつ高い品質を実現することを念頭に置きました。
いちごは春や夏など気温が高く日が長い時には、茎の基部にある成長点で葉を作りますが、秋になって涼しくなり、日が短くなると葉ではなく花芽を作ります。この状況を『花芽分化』といいます。きらぴ香は紅ほっぺより花芽分化が2週間ほど早いため、タイミングを見逃さず、適度に摘花します。これによって果重の増加と糖度の上昇が見込まれます。きらぴ香は紅ほっぺに比べて花付きが少ない品種のため、摘花には多くの手間がかからないというメリットもあります。
きらぴ香の花芽
きらぴ香の最大の栽培メリットは、収穫時期が長く安定しているという点です。いちごの苗を定植させる育苗方法としては超促成夜冷(8月中旬~)、夜冷(8月下旬~)、紙ポット(9月初旬~)、普通ポット(9月上旬~)、電照抑制(9月中旬~)、未分化定植(7月下旬~*収穫は最も遅い)の6段階あり、このうち紅ほっぺは夜冷・紙ポット・普通ポットの3段階のみ。きらぴ香は6段階すべてに対応できます。定植時期が少しずつずれることで作業が楽になり、収穫も一時期に集中することなく、長く安定します。
さらにトップシーズンとなるクリスマスや年末年始に切れ目なく出荷できるため、市場の評価も高まり、価格の面で生産者へのリターンが大いに望めるというわけです。
平成26年(2014)のデビュー以来、県内各産地できらぴ香栽培に取り組む生産者は順調に増えています。今後はさらなる生産性向上に努め、きらぴ香のブランド化=高単価・高収益・省力化による経営規模拡大に尽力していきます。
■問合せ 静岡県農業技術研究所 静岡県磐田市富丘678-1 TEL 0538-35-7211