救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

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救急医療 急性アルコール中毒:血中アルコール濃度の予測

2017年10月11日 10時13分00秒 | 救急医療

留意事項 血中エタノール濃度の予測

急性アルコール中毒:血中アルコール濃度の予測について

〜自転車事故との関連にも注意〜

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

 

【はじめに】救急外来( ER:emergency room)に,急性アルコール中毒で搬入される患者さんがいらっしゃいます。アルコールについては,過剰摂取に注意することが大切です。また,現在は,アルコール摂取後の自転車運転(自動車運転はもちろん犯罪です)による路上ひき逃げ事件などもあり,自転車運転前の飲酒も厳禁として対応されてください。2016年の日本の自転車乗車中の事故負傷者は90,055名であり,そのうち死者は509名です(総務省消防庁データ)。自転車運転は,路上交通事故,刑事犯罪の可能性として,厳格に評価される傾向があります。ここでは,ERに搬入された傷病者の血中アルコール濃度予測について記載します。

 

【血中アルコール濃度と症状の関連性】

 血中アルコール濃度と症状(参考:個人差あり)

 □   20~  40 mg/dL:気分爽やか,活発傾向

 □   50~150 mg/dL:ほろ酔い

 □ 160~300 mg/dL:酩酊状態(千鳥足や運動障害の出現)

 □ 310~400 mg/dL:泥酔状態(歩行困難および意識混濁の出現)

 □ 400 mg/dL 以上:昏睡状態(舌根沈下,心肺停止の可能性の考慮)

 

【血中アルコール濃度の予測式】

血中エタノール濃度(予測値)= 血漿浸透圧ギャップ(測定血漿浸透圧値 ‐ 予測血漿浸透圧(計算:2Na + BUN/2.8 + Glu/18))mOsm/L x 46(エタノールの分子量 46.07)g/Osm ÷ 10 (dLへの換算)= 〇〇 mg/dL 

解説:血中アルコール濃度の予測には,血液・生化学検査として,① 血漿浸透圧,② 電解質(Na+),③ BUN,④ 血糖値,この4つを用います。エタノールの分子量は46.07ですので,血中アルコール濃度の算出(概算)には46という数字も用います。以下が予測式となります。事故との関連性,覚醒までの時間の予測などの参考値として,私は使用する場合があります。

【おわりに】急性アルコール中毒では,A(Airway)のトラブルとして舌根沈下,B(Breathing)のトラブルとして誤嚥(ごえん)に注意します。また,C(Circulation)のトラブルや心停止の関連として,低体温に注意します。意識の評価においては,低血糖(血糖値< 50 mg/dL)にも注意します。ERへの急性アルコール中毒の搬入では,心電図波形ではオスボーン波(J波)(早期脱分極波)やAFをすぐに感知し,体温計で体温を計り終えるまでの間に,触診で体幹や四肢の温度を予測するようにします。最後に,医療従事者,医学生さん,消防関連,教育者,行政の皆さんにおいては,急性アルコール中毒は起こり得ないようにいたしてください。


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