救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

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救急医療 水銀中毒と体温計の注意事項/留意事項

2009年05月09日 04時09分32秒 | 講義録・講演記録 3

救急医療 水銀で注意すること

救急科指導医・専門医/集中治療専門医

松田直之 

 

 1歳の子供さんが,水銀式体温計で体温を測っている際に体温計を壊してしまい,水銀を飲んだのではないかと,お母さんに心配されて,救急搬入されました。体温計の水銀は,飲んでも体内に吸収されることはないとされており,基本的に心配は要らないです。

 しかし,口腔内に残っていたり,環境に水銀を放置すると,気化した水銀が経気道的に体内に吸収されることに注意します。このため,こぼれた水銀は,放置せずに掃除機で吸い取ったり,水に沈めて保存する必要があります。

 体温計1本中に含まれる金属水銀は0.8~1.2gレベルと報告されています。飲んでも消化管からの吸収はないとされています。通常,割れて口腔内にはいる体温計の水銀は先端部のものだけなら,0.1 gレベルです。このため注意すべきこととしては,気化した水銀を吸わないことです。

 気化した水銀を吸入してしまうと,発熱,悪寒,呼吸困難感,頭痛が数時間で出現し,下痢,腹痛,視力低下などに加え,痙攣,肺気腫や急性腎不全を合併する可能性があります。つまり,壊れた水銀温度計を机などの上に放置すべきではありませんし,気道に誤嚥した場合には水銀中毒としての注意が必要となります。

 体温計に限らず,蛍光灯にも水銀が含まれています。40 Wの蛍光灯は,約8 mgの水銀を含んでいます。また,魚介類では,日本は0.3 mg/kgまでの水銀含有を正常上限として認めていますし,米国FDAは1.0 mg/kgまでの水銀含有を正常上限として認めています。


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