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東京ナイト

旅行、食事、映画にお芝居、日々のささやかな幸せを記録します

「絶滅危惧種見聞録」

2010-05-29 00:56:12 | 
本は「絶滅危惧種見聞録」。
浅草キッドの玉袋筋太郎さんの書いたインタビュー集。



内容はこんな感じ。
●もつ焼き「カッパ」の大将に聞く、客商売のルールとマナー
●「新宿東宝会館」での、数々の思い出。師匠・ビートたけしの追っかけ時代、
ダンカンさんと通ったディスコ・ゼノン、江頭 2:50 との「クラブハイツ」での感動秘話
●まめ札、千社札・・・。名入れ専門店「竹内漆芸」の技術とアイデア
●全国のトラック野郎が集まる峠の食堂「一休食堂」の歴史
●身長114cm、最後の小人マジシャン・マメ山田さんの人生。
玉さんの小人プロレスの思い出もたっぷり(フランス座修業時代の浅草キッドのコントも収録)。
●個性ある本当のファッションとはなにか。目指せ、サカカジ!「サカゼン」へ急げ!
●元ポール牧のマネージャーさんが開いたスナックで聞く、最後の関東昭和芸人の世界。

玉袋筋太郎さんと言えば、「タモリ倶楽部」のお酒企画の時にいつも美味しそうにビールを飲んでいる姿が印象的。
一度だけライブも行ったことがあるけど、すごく練られた内容で実力がある人だなーと思っていた。

で、この本。
21世紀の今、絶滅寸前の「濃くて楽しいおっさんたち」を取材しているんだけれど、著者が彼らの存在を愛しているのが伝わってきて、なんだかこちらも楽しくなってくる。
人選も、著者の人生と絡む人たちがほとんどで、悪ガキ時代のエピソードも交えつつ、地元の飲み屋で愉快に飲んでいるようなスピード感が心地よい。

チェーン店の居酒屋より、家族経営のもつ焼き屋。
そんな嗜好の人が読めば、きっと気に入るオススメの一冊です。

「だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ」

2010-05-26 00:34:33 | 
本は「だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ」。
最近よく読んでいる都築響一の書評集。かっこいいタイトルだ。



都築響一は一貫して、内面から溢れてくる「業」的な表現を評価しているけれど、書評も同じような目線で選んでいる。

中国の精神病院を取材した写真集や暴走族の写真集、訳の分からない進化を遂げたレディスコミックなど、際物として無視されそうな本を「実はこんなに面白いものが・・・」と紹介する文章は、とっておきの掘り出し物を見せる骨董品屋の親父のぴくぴく動く小鼻のよう。
で、紹介されているどの本もとても魅力的。
週に3回は本屋に足を運び、家は本であふれている状態だけれど、この書評で紹介されているほとんどの本を知らなかった。

中でも「財布の中身」という写真集の紹介が素晴らしい。
京都の美大生が、他人の財布の中身を写真に撮らせてもらうというコンセプトの写真集なんだけれど、内気な彼女がどれだけ勇気を振り絞って他人に声を掛けているのか、その情景が伝わってくる。

「知らない本をすごく魅力的に紹介する」という書評の一番大切なツボがきちんと押さえられた一冊。
また「読まなきゃいけない本」リストが増えちゃいそうだよ。

「俺、勝新太郎」

2010-05-20 07:40:51 | 
本は「俺、勝新太郎」。



俳優・勝新太郎が自ら書いた「俺」の半生。
大麻で捕まった時、「総理大臣の代わりはいても、勝新太郎の代わりはいない」と嘯いた男。
前から、その破天荒な生き様が気になっていた。

山城新伍も「おこりんぼさびしんぼ」(この本もすごく面白い)という本で、勝新太郎と兄の若山富三郎の事を「ぼくは、この二人以外の影響以外、誰の影響も受けていない」と語っているが、周りの人に良かれ悪しかれ大きな影響を及ぼしてしまうとんでもない男だったんだろうと思う。

お父さんは長唄の大師匠。花柳界や歌舞伎の世界の大人たちに囲まれて育ち、いろいろなものを見てきた。
でも、優しいお母さんは大好きで、母親とのエピソードを語る語り口は愛情にあふれている。で、そんな幼少の頃の心温まるエピソードのすぐあとに、13歳で淋病になってしまった話が出てくるのが笑える。

その後は、花柳界の女性との話、中村玉緒との出会い、映画への思いなどが続くが、どのエピソードもテンポ良く書かれているのが特徴。
「間」が良いんだと思う。普通なら最初に書く状況説明がスパッと抜けていて面白い部分のディテールだけポンと語られている。こういう書き方は少し不思議。
勝の把握している世界が伺える書き方だと思う。

で、そんな破天荒な勝新太郎だけれど、山城新伍が著書のタイトルに「おこりんぼさびしんぼ」と書いたように、実はさびしがりやで猜疑心が強い半面もこの自伝からは伺える。
破天荒さも外向けのポーズの部分もあったと思う。(とは言え、もともとそんな性向は多分にあったと思うけど)

という訳で、存在感あふれる「俺」勝新太郎のパワーが感じられる一冊でした。

「もう一度逢いたい」

2010-05-17 23:28:45 | 
本は「もう一度逢いたい」。



昨年お亡くなりになった森繁久彌さんが83歳の時に書いた追悼の言葉。
美空ひばり、志ん生、渥美清、越路吹雪など、名優が「もう一度逢いたい」と思う人たちとの思い出を綴ったエッセイ。

さいきん、なんだか森繁久彌、フランキー堺など、昭和の名優が気になってしょうがない。ものすごく「濃い」感じがするから。
この本にも前述の人たちの他、谷崎潤一郎、永井荷風、昭和天皇との出会いが綴られている。国語の教科書に出てくるような文豪との、けっこう下世話な思い出(たいてい女性絡み)を、もう時効とばかりしれっと書いちゃうところが面白い。
著者は「もう何も覚えていない」と再三、書いているけれど、細かなディテールまできっちり書き込んでいて登場する人たちそれぞれの生々しい素顔が興味深い。濃くて深い人生だったんだろうと思う。
森繁映画をもっと観たいよ。

「佐渡新発見」

2010-05-13 05:45:33 | 
本は「佐渡新発見」(三一書房)



タイトルと表紙は、なんだか観光案内所に置いてあるパンフレットみたいだけれど、実は執筆者はゴージャスで、永六輔、小沢昭一、柳家小三治、江国滋、、、など個性的なメンバーがそれぞれ「佐渡」について書いた一冊。

「東京やなぎ句会」という句会を結成している彼らが、何度か佐渡に吟行に行った時のエピソードなどをまとめている。
でも、俳句について真面目に書いているのは句会の宗匠である入船亭扇橋くらい。
あとは、佐渡の巫女さんに会った話とか、佐渡に流された日蓮の話、小沢昭一と小三治に至っては延々と佐渡にある「寿司屋とラーメン屋が一緒になっている店で食べたすしは旨かった」という話をしている(もちろんすごく面白いけど)。

でも一番ビックリしたのは永六輔の「佐渡独立計画秘話」。
40年位前、社会党の国会議員の肝煎りで、永六輔、野坂昭如、有吉佐和子、小沢昭一、役人だった西丸震也、それに若手の官僚も交えて、けっこう本気で「佐渡が独立したらどうなるか」ということをシミュレーションしたことがあるとの事。
教育、外交、税金、、、、いろいろな事を検討して、さらに国家や国旗まで作っちゃったというから可笑しい。
本気な面もあったと思うけど、この顔ぶれなら話はどこまでも広がっていったはずで、そうとう面白かったはず。
すごいね。

楽しそうな句会も毎月必ず続けてきたみたいだし、なんともうらやましい大人の遊びが垣間見れた本でした。

「悶々ホルモン」

2010-05-12 08:18:32 | 
本は「悶々ホルモン」。
「間取りの研究」で有名な佐藤和歌子さんが、究極のモツ焼き屋を探して巡り歩いたお店ガイド。
09年2月に買って読んでいたのを久々に再読。
http://blog.goo.ne.jp/mask1970/e/2f330a71e4929c2d7eee2dbabed542cb
しょうじき内容を全く忘れている自分に愕然としたよ。



でも、紹介されるお店はどれも魅力的。
料亭の様な京都のお店から場末の酒場までいろいろ紹介されているのですが、読みながら、このお店も行きたい、こっちもいいぞ、と迷ってしまうほど。
知られざる名店がたくさんあるのですね。

この本の魅力はもうひとつあって、それは著者の文体。
ちょっと突き放すようなぶっきらぼうな文体は読んでいて心地よい。
また、お酒とお肉が好きな鋭敏な20代後半女子の心境や交友関係が垣間見れるのも興味深い。
著者と一度、一緒にお酒に行きたい気もするし、紹介したお店をどう評価されるか不安な気もするし、なかなか魅力的な方とお見受けしました。

でもホントお肉が食べたくなってきたよ。

地域社会圏モデル ――国家と個人のあいだを構想せよ

2010-05-08 09:05:47 | 
本は「地域社会圏モデル ――国家と個人のあいだを構想せよ」



建築家達が考えた意欲的な構想をまとめた刺激的な一冊。
「1つの住宅に1家族が住む」という住宅の「常識」が、既に破綻していて、それに対し建築の側から新しい提案が生み出されていない、という建築家・山本理顕の問題提起が最初にあります。
それに対し、中村拓志、藤村龍至、長谷川豪という三人の若手建築家が、その問いに対し、それぞれ考え、設計計画というビジュアルで回答しています。

「1住宅=1家族」に変わる建築的提案としての「地域社会圏」。
都心、郊外、農村とそれぞれの場所に「400人で住む」というテーマで構想された3つの「地域社会圏」はなかなか意欲的です。
「新宿山」と名付けられた「プラズマゴミ処理施設」を内蔵した高さ50mの400人住宅。
限界集落の農村に「農業、流通、加工を一体化した6次産業」コミュニティを作って若者の移住を促進する400人住宅など。

こうして生まれた3つのプランに対し、東浩紀、建築家・原広司、経済学者・金子勝などが合同批評するパートが最後にあり、これがひじょうに面白いです。
しょうじき十分練られているとは言えない若手建築家の作品を元に、専門家の知識や知恵を使い、さらに大きな可能性へと持ち上げていく過程は刺激的でした。
建築って面白いですね。

「夜露死苦現代詩」

2010-05-02 08:48:35 | 
本は「夜露死苦現代詩」



都築響一の本を最近よく読むのですが、けっこう前に出たこの本はまだ読んでいませんでした。
良い本です。

ブンガクやシイカの世界からは完全に無視され、でも言葉に必然とパワーの込められた「現代詩」が様々なフィールドから収集されています。
例えば、暴走族が特攻服に刺繍してもらう言葉の数々、老人ホームで介護される痴呆の老人がつぶやくとんでもないシュールな言葉、文字も書けなかったりする死刑囚が詠んだ味わい深い俳句、湯呑に印刷されたためになる人生訓、歌謡曲の世界を広げる玉置宏の名調子、トイレの壁で輝く相田みつをの言葉、、、。
どれも力強いです。

もはや都築響一は僕達が足を踏み入れることのない辺境を旅する探検家ですね。
知らない世界を教えてくれる貴重な一冊。オススメです!

この本について村上春樹がコメントを寄せています。
そういえば一緒にいろいろ旅をしていますよね。
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/301431.html

「中国共産党を作った13人」

2010-04-24 09:05:12 | 
本は「中国共産党を作った13人」。
著者は譚 璐美さん。これまでも中国現代史に関する著作が多い。



中国共産党の歴史は以前から何故か興味があって、関連する本を見つけると読むようにしている。
何というか、容赦ない権力闘争の壮絶さが日本の比ではなくて、それが興味深い。

で、この本。
1921年7月23日。上海のフランス租界で中国共産党第一回全国代表大会が開かれた。
と言っても、まだ共産党は産声を上げたばかり。
党員は50人ほどしかおらず、メンバーの思想や経歴もばらばらで、この会議で初めて会ったという人がほとんど。
それでもコミンテルンの指導の下、北京、上海、武漢、長沙、そして日本などからそれぞれの地域の代表として13人の男達が参加した。

ちなみに毛沢東はこの時28歳。長沙代表として参加している。
しかしこの会議の主役は毛沢東ではなく李漢俊や李達、張国といった経験や理論に優れた都会の活動家達。
毛沢東は会議中もほとんど発言せず目立たなかったとの事。

参加13人のうち、日本に留学経験のある者も多くいた。
この会議には参加していなかった周恩来も日本への留学経験があったそうだ。それに蒋介石もそうだったらしい。

で、この本の面白かったところは、歴史的壮挙である中国共産党第一回全国代表大会の出席者13人のその後の運命を調べていること。
想像通りとも言えるが、自然死したものはほとんどいない。
1949年の中華人民共和国誕生の日、天安門の楼上に共産党幹部として立つことが出来たのはふたりだけ。
うーむ・・・。

という訳で、革命初期の貴重なエピソードをいろいろ知ることができた一冊。

「銃・病原菌・鉄(上)」

2010-04-20 07:10:27 | 
本は「銃・病原菌・鉄(上)」
草思社から2000年に刊行された本ですが、朝日新聞で紹介されたのをきっかけに、また売れ出しているようです。
なんと20万部を突破したとか。



著者はジャレド・ダイアモンドというカリフォルニア大学の先生で、この本でピュリッツァー賞を受賞しています。

厚い本で、しかも二巻組みですが、内容は「なぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか」という疑問を探ること。

人類は同じ時期に誕生したにもかかわらず、石器時代のままの暮らしをしている部族もあれば、宇宙ロケットを開発する国もある。それはなぜなのか?
この壮大なテーマを、分子生物学から言語学まで様々な知見を駆使して解き明かしています。

著者が着目したのは、栽培が容易な農作物や飼育可能な動物の有無。
例えば家畜の場合、大陸によって、生育状況が全く違います。現在では世界中で飼われている、羊、山羊、牛、豚、馬などの家畜はユーラシア大陸か北アフリカにしか存在していませんでした。
大きな種子を持つイネ科植物もほとんどがユーラシア大陸に存在しており、北米、南米、オーストラリアなどでは数種類しかみることが出来ません。

技術の進化の過程で、狩猟採集民から農耕民への移行は大きなターニングポイントですが、そもそも農耕に適した栽培種が存在しなければ、その移行はとても高いハードルになってしまいます。
北米、南米、オーストラリアなどで銃や大型船が開発されず、ユーラシアからの一方的な侵略になったのはこうした動植物の分布の違いが決定付けたのです。

それでも、インカ帝国などのように、北米、南米、オーストラリアなどでも独自の文明を発達させていましたが、ユーラシアからの一方的な侵略となったもうひとつの原因が病原菌。
人口の95%がインフルエンザで失われてしまうなど、ユーラシア大陸から持ち込まれた病原菌は、免疫のない民族を壊滅的に殺してしまいました。

病原菌の大陸間による分布の違いは、実は家畜の飼育状況が大きな影響を及ぼしていると著者は言います。
病原菌は動物由来のものが多く、ユーラシアの人々は多くの犠牲を払いながらも免疫システムを身につけてきましたが、ほとんど家畜がいなくて、そうした病原菌にナイーブだった新大陸の先住民はあっという間に壊滅的な状況になってしまったのです。

上巻の内容はここまで。
本当に壮大なテーマですが、記述は平易で、具体的な分かりやすい事例をたくさん挙げて解説しているので誰でも読めます。
で、これだけワクワクするような内容なのが売れている理由でしょう。
オススメです!