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ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

人間の目の加齢黄斑変性をiPS細胞による治療で治すヘリオスの話を伺いました

2014年03月07日 | 汗をかく実務者
 バイオ系ベンチャー企業のヘリオス(東京都中央区)の代表取締役・COE(最高経営責任者)の鍵本忠尚さんのお話を拝聴しました。

 同社はiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用して、人間の目の加齢黄斑(おうはん)変性という失明に至る病気を治すことを目指しています。加齢黄斑変性とは具体的には、人間の目の網膜の中心にある、一番良い視力が出る部分の黄斑部に障害が生じ、見えにくくなる病気だそうです。





 網膜は、光や色を感じる視細胞を含む感覚網膜(神経性網膜)と、これを支える色素上皮と呼ばれる組織で構成されています。色素上皮細胞は、網膜の外側にある1層の細胞で、感覚網膜に栄養を補給したり、感覚網膜から出る老廃物の消化を担っています。そのため、色素上皮の機能が低下すると視機能を担う感覚網膜の機能が低下し、やがて失明するケースが出てきます。

 この網膜の疾患に対して、同社はiPS細胞から色素上皮細胞を作製し、黄斑部に移植する治療技術の開発を行っています。

 鍵本さんは「地球上の先進国などを中心に高齢化が進むために、60歳以上の高齢者が急増すると、50歳以上になると発病する加齢黄斑の患者が増える」と推定しています。

 地球全体では、2010年時点では60歳以上の人口は7.5億人で人口比率の11パーセントだったのに対して、2025年には同12億人、同22パーセント、2050年には同20億人、同23パーセントに達します。2050年時点では、60歳以上の高齢者は4人に一人の割合になります。

 この結果、目が加齢黄斑変性になる高齢者の数が多くなり、万が一、失明すると、高齢者の方々の生活は厳しいことになります。大きな社会問題になります。

 この問題を理化学研究所の発生・再生科学総合研究センターの網膜再生医療研究開発プロジェクトを率いる高橋政代プロジェクトリーダーは解決しようとしています。患者の細胞から色素上皮細胞のiPS細胞をつくり、代替することで、治療しようとしています。

 このため、ヘリオスは理研発ベンチャー企業として2011年2月24日に設立されました。資本金は15億800万円です。同社は当然、iPSアカデミックジャパン(京都市)などと連携しています。

 ヘリオスは、この治療法が多くの加齢黄斑の患者に適用しても、安全かどうか、治療法として有効かどうか、同iPS細胞を大量生産できるか、治療ビジネスとして成り立つかどうかなどを解決しています。

 同社は2013年にシリーズAという出資を、大日本住友製薬、ニコン、新日本科学、澁谷工業、ヘリオス投資事業有限責任組合などから受けて、約30億円を事業投資資金として集めたようです。さらに、2013年には大日本住友製薬に国内市場限定の提携を結び、その対価としてマイルストーン+共同開発費として70億円を受け取りまいした。

 鍵本さんは、日本国内の患者だけではなく、米国などの海外の患者にも適用し、日本発の治療法として普及させたいようです。

ベンチャー企業のクオンタムバイオシステムズの威勢のいいお話を伺いました

2014年02月05日 | 汗をかく実務者
 先日、知的財産活用のフォーラムが開催された際に、その中の講演で、大阪大学発ベンチャー企業のクオンタムバイオシステムズ(Quantum Biosystems、大阪市)のお話を伺いました。

 同社の代表取締役社長・COE(最高経営責任者)を務めている本蔵俊彦さんは熱烈に同社の製品開発とその事業化の独創性を語りました。



 同社は、DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列を解析する第四世代のDNAシークエンサー(塩基配列解析装置)の装置開発を進めています。いくらかDNAシークエンサーのことをご存じの方は、日本はこの分野では後塵を拝していると思っています。

 ところが本蔵さんによると、「製品開発中の第四世代のDNAシークエンサーは“破壊的イノベーション”を起こす可能性を秘めている」といいいます。「1990年代に製品化され始めたDNAの塩基配列を解析するDNAシークエンサーの進化は速く、解析の仕組みが異なる第3世代まで製品化されている。この第3世代までは、欧米が先行しました。しかし、「まだ決定打といえるDNAシークエンサーは登場していない」といい、そして「当社が現在開発中の解析装置が実用化されれば、一気に世界の先頭に立てる」と力説します。

 DNAシークエンサーについては、「米国大手コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニーが効率的な次世代DNAシークエンサーが製品化されて、DNA塩基配列解析が1時間と短時間で100米ドルと低コストで可能になれば、1年当たりに2600万人に最適な治療を行うオーダーメイド治療に貢献でき、その経済効果は1年当たり70兆から160兆円との試算結果を発表している」と、“破壊的イノベーション”を起こす製品であると予想していると、本蔵さんは伝えます。

 クオンタムバイオシステムズは2013年1月7日に創業されました。同社の技術シーズは、大阪大学産業科学研究所の川合知二特任教授や谷口正輝教授などが参加して2005年から始めた最先端研究開発支援プログラム(内閣府が推進)の「1分子解析技術を基盤とした革新ナノバイオデバイスの開発研究」プログラムが産み出したものです。

 この技術シーズは、微細な空間でのトンネル電流を利用してDNAの塩基配列を解析する手法です。実は、これまでにも米国のIBMや韓国のサムソン電子、米国のインテルなどという蒼々たる企業が挑戦しましたたが成功していない難題です。

 本蔵さんは「トンネル電流を実現する超微細電極と超微細電流測定が必須になる点が難しい課題になっていた」と説明します。

 同社が製品化を図っている塩基配列解析の大まかな原理は、1本のDNAだけが流れる流路をつくり、その流れる速さを制御します。この1本のDNAが約1nm間隔の電極の間を通過する際に、1塩基分子の電気抵抗を連続的に測ることで、塩基配列を解析します。この基本原理を用いて、川合さんと谷口さんの大阪大の研究グループが2012年7月に塩基配列解析が可能であることを実証したことから、本蔵社長は「創業を決意した」と経緯を説明します。

 本蔵さんは当時、経済産業省が中心になってつくった産業革新機構(東京都千代田区)の戦略投資部ディレクターとして、投資先を調査し投資する業務に従事していました。2012年5月に大阪大学の川合さんと谷口さんの研究開発グループが発表した開発成果を本蔵さんは知って、破壊的イノベーションを起こす可能性があると考えたそうです。、

 本蔵さんは産業革新機構をすぐに退社し、クオンタムバイオシステムズ社を創業するための資金集めを始めたそうです。そして2013年1月7日に同社を創業しました。

 本蔵さんによると、作製したプロトタイプは1台当たり200万円程度で製品化することを目指しています。その低価格化のカギとなる使い捨ての半導体チップは1個当たり約5000円をメドに実用化を図っているそうです。この半導体チップは「最終的には1個50円を目指している」とのことです。

 現在、製品化されているDNAシークエンサーは日本円換算で6000万円から1億円程度と高価なので、製品化すればかなりの価格破壊をもたらすとも、付け加えます。

 同社の創業時から日本市場を含めたグローバル市場向けの事業戦略を立てています。製品開発メンバーも国籍、年齢などに制限を設けず、実力がある人材を集めて進めているそうです。このため、同社での主要言語は英語で、Webサイトも英語表記にして、全世界に情報を発進しています。



 また、測定器メーカーや半導体メーカー、名古屋大学などと連携するなどの外部リソースを活用し、製品化・事業化を早める工夫をこらしているそうです。

ベンチャー企業グラモの代表取締役社長の後藤功さんから話を伺いました

2014年01月08日 | 汗をかく実務者
 IT(情報技術)系ベンチャー企業のグラモ(東京都豊島区)の代表取締役社長を務める後藤功さんのお話を伺いました。

 グラモは2011年2月に創業されたばかりの若いIT系ベンチャー企業です。後藤さんも日本ではかなり若い社長です。



 グラモは、米国アップル社のスマートフォン「iPhone」などを入力機器に用いて、外出先から自宅の家電製品などのスイッチをオン・オフできる機器「iRemocon」(アイリモコン)を実用化して注目を集めています。



 この「iRemocon」を利用すると、外出先から自宅のお風呂のお湯を入れるスイッチや、床暖房やエア・コンディショナーのスイッチなどをオンにできます。逆に、外出先から、スイッチを切り忘れたエア・コンディショナーなどの電源を切ることができます。

 「iRemocon」は、テレビなどをオン・オフする赤外線利用のリモコンの仕組みを学習させると、その学習した制御機能をスマートフォン「iPhone」やアンドロイド系スマートフォンなどで操作できるようになるものです。

 後藤さんは、2001年に東京都内にあるITサービス事業を展開する、新進気鋭のベンチャー企業に転職しました。いずれ、自分のベンチャー企業を創業するために、ITサービス事業の仕組みなどを学びたいと考えて転職したそうです。

 そのベンチャー企業に勤務している最中に、米アップル社が2007年1月にスマートフォンiPhoneを発売しました。後藤さんはiPhoneの液晶ディスプレーに映し出される操作画面がとても気に入ったそうです。

 その後もアップル社は次々と発売したiPhoneなどの最新版を見た後藤さんは、その画面の美しさ、使い勝手の良さに魅入られると同時に、「アップル社がiPhoneアプリケーションを求めるオープンな姿勢を表明したことがとても気に入った」そうです。

 後藤さんはITベンチャー企業に勤務しながら、将来の起業に向けてさまざまなアイデアを練っていました。その中の一つが、スマートフォンのiPhoneを情報操作の端末として利用するものでした。これが家電製品などをネットワークを利用して外出先から操作するiRemoconを誕生させるきっかけになったそうです。

 このiPhoneを情報操作端末として使うというアイデアは、後藤さんが自宅ににある、さまざまな家電製品をそれぞれのリモコン端末によって別々に操作することの煩わしさを解消したいとの考えから浮かんだものでした。

 グラモは、2011年7月にネットワーク型リモコン端末iRemoconを発売します。iRemoconに、まず各家電製品の赤外線通信によるリモコン通信の仕方を覚え込ませます。次に、iRemoconを自宅の無線LANルーターと接続するという家庭側での準備を済ませます。この準備を済ませた後に、グラモのWebサイト内にある「iRemoconサイト」から「UIデザイナー」というアプリケーションを、自分のiPhoneやiPadにダウンロードすると、そのiPhoneなどがiRemoconを通じて自宅の家電製品を操作できるようになるという仕組みです。

 グラモは2011年2月に創業されたばかりの若いIT系ベンチャー企業ですが、その事業価値は既に高く評価され、2013年9月25日に、音声認識事業などを展開するアドバンスド・メディア(東京都豊島区)がM&A(合併・買収)によって、子会社化しましたた。子会社化したグラモの社長を続ける後藤さんは「これによって、これからの事業資金が確保できた」といいます。

 グラモが今後、どんな製品を実用化するのか期待が高まっています。

ベンチャー企業のコロプラ副社長を務める千葉功大郎さんのお話を拝聴しました

2013年11月30日 | 汗をかく実務者
 慶応義塾大学連携型起業家育成施設の慶応藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV、神奈川県藤沢市)は、11月下旬に東京都港区で、アントレプレナーシップ・セミナー「起業にまつわる『ヒト』と『カネ』のお話」という刺激的なタイトルのセミナーを開催しました。

 このアントレプレナーシップ・セミナーはパネル・ディスカッション形式でした。パネリストのお一人は、IT(情報技術)系ベンチャー企業のコロプラ(東京都渋谷区)の取締役副社長を務める千葉功大郎さんです。



 パネル・ディスカッションの司会は慶応大学SFCのインキュベーション・マネージャーの広川克也さんです。

 コロプロは、スマートフォン向けのゲームアプリ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」のダウンロードの累計数が11月中旬に1300万を超したことなどで注目されている企業です。毎日、テレビでゲームアプリのCM(コマーシャル)が流がされています。

 2008年10月に、グリーにいた現・代表取締役社長の馬場功淳(ばばなるあつ)さんがコロプラを創業した時に、千葉さんは創業メンバーの一人として「携帯電話機のGPS(全地球測位システム)情報などを利用して得点をなどを稼ぐ位置情報ゲームを提供する事業を始めた」そうです。



 慶応大学環境情報学部を卒業してリクルートに入社し、WWWなどのインターネット事業に関わった千葉さんは、いくつかの企業を経て、いよいよIT系ベンチャー企業を創業しようと考えます。

 この時に、馬場さんが個人として2003年5月から始めたWebサイト「コロニーな生活」を思い出します。COO(最高執行責任者)として、馬場さんをCOE(最高経営責任者)に据えて、位置情報ゲーム事業を一緒に始めます。

 位置情報ゲームを提供する事業とは、個人各人のGPS情報を用いた位置情報を利用する旅行ゲームや観光旅行での個人の行動傾向分析などの分析データを提供するものです。

 千葉さんと馬場さんは、以前に携帯電話機向けゲーム事業などを手がけていたケイ・ラボラトリー(現 KLab)で同僚だった経緯があり、顔見知りでした。千葉さん「大学を卒業し、新卒として就職したリクルートなどの会社では、将来起業する時の“同志”を探していた」と語ります。

 コロプロは2011年からはiPhoneやアンドロイド向けなどのスマートフォン向けのゲーム事業に注力し始めたそうです。この時点から、創業メンバーで構成する経営陣は「スマートフォンという情報端末を活かしたエンターテインメント分野で、世界ナンバーワンを目指すという理念を共有している」とのことです。

 コロプラは、創業時から「事業モデルはB to C(Business to Consumer )に徹すると決めた」そうです。「携帯電話機やスマートフォンのユーザーに課金する事業モデルに徹するという理念を、創業メンバーは共有している」とのことです。現在、300数10人いるコロプラの役員・社員のほとんどはITエンジニアやWebクリエーターなどだそうです。営業部員は千葉さん「ただ一人だ」そうです。

 コロプラは、ケーム事業の成功などによって会社が成長しているため、当然、中途入社の人材を採用しています。千葉さんは「中途入社した方を、すぐにはマネージャーなどの管理職にはつけず、その人物の仕事ぶりをみて、同僚などがマネージャーにふさわしいとの声が出た時に、マネージャー職にするという基本ルールを大事にしている」と人事策を説明します。

 千葉さんは、自分の考えを分かりやすく説明する能力に長けた経営者です。

東京大学発ベンチャー企業のペプチドリーム創業者の話を偶然、拝聴しました

2013年10月17日 | 汗をかく実務者
 東京大学発ベンチャー企業のペプチドリーム(東京都目黒区)の創業者である東京大学大学院理学系研究科の教授の菅裕明(すが ひろあき)さんの話を拝聴しました。

 東京大学の政策ビジョン研究センターが主催したシンポジウムに、パネリストのお一人として登場されました。




 
 この画像では分かりませんが、菅さんは、後ろ髪を“ちょんまげ”のように束ねています。

 ペプチドリームは、弊ブログの2013年10月11日編で紹介した、日本経済新聞紙の朝刊に掲載された記事の「新興上場、市場に活気 35社連続 初値が公開価格超え」に登場した、IPO(新規株式公開)したベンチャー企業の1社です。

 ペプチドリームは、2013年6月11日に東京証券取引所マザーズ市場にIPO(新規株式公開)し、翌日の6月12日に初値をつけたベンチャー企業です。このIPOによって「同社の株式総評価額は15000億円を突破した」といわれています。

 同社は菅裕明さんが米国のニューヨーク州立バッファロー大学から東京大学先端科学技術研究センターに異動され、日本で研究開発を本格化したことを契機に創業したようです。平成18年(2006年)7月に創業しました。同社の代表取締役社長は窪田規一さんです。菅さんは社外取締役です。

 ペプチドリームは「特殊ペプチドと呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドから医薬品候補物質を創製することを事業にしています」とのことです。一般の方にはあまり馴染みのない難解な化学分野です。

 東京大学政策ビジョン研究センターが主催したシンポジウムでは、菅さんは2004年当時は、創薬企業各社は特殊ペプチドを基にした創薬開発を信じてなかったために、自分たちで当該技術を実用化しようと考えて創業の準備を進めたとのことです。

 特殊ペプチドを基にした創薬開発技術は「“プラットフォーム”技術であるために、特許戦略を立てやすい」と考えたそうです。

 設立当初は創業時の3人が自分の資金から、設立の初期資金を出したので、会社を運営する資金は少なく、「事業経営は苦しかった」そうです。しかし、設立時にベンチャーキャピタル(VC)に資金を提供してもらわなかったので、「経営権を握ることができた」と説明します。

 ペプチドリームの事業を進める研究開発資金は、大手製薬企業との提携契約による資金提供を受けて確保し、事業化してきたそうです。菅さんが国際的なシンポジウムなどで招待講演した時に、大手製薬企業などを訪問し、当該技術に関する基礎研究契約を締結したそうです。例えば、2009年3月にアステラス製薬と基礎研究契約を締結します。こうした“アライアンスパートナー企業”は、スイスのノバルティス、英国のグラクソ・スミスクライン、英国のアストラゼネカなど9社にのぼるそうです。

 その一方で、「この特殊ペプチド技術を事業化することと、自分の大学教員としての研究の自由を守ることの区別をしっかりつけた」そうです。この辺は、さらりとした説明で詳細は不明ですが、大学発ベンチャー企業を設立しながら、大学教員としての研究と絡めている方への皮肉なのかもしれません。