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ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

ロボット開発ベンチャー企業のテムザックはデンマークで実証事業を始めます

2014年11月07日 | 汗をかく実務者
 2014年11月4日に、ロボット開発ベンチャー企業のテムザック(福岡県宗像市)とNTTドコモは、介護・福祉施設などの被介護者・高齢者向けに開発した電動車イス「NRR」を、11月からデンマークで実証実験を始めると、東京都内で発表しました。

 経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援によって、テムザックは電動車イス「NRR」を開発し、デンマークでの実証試験を始めます。

 電動車イス「NRR」は、前乗り型の“電動車イス”という構造が一番の特徴です。普通の車イスは背もたれに身体をあずける構造のために、電動車イスに乗るには、介助者などの身体を持ち上げてもらって、乗ります。

 これに対して、電動車イス「NRR」は自分が座っているイスの前まで、移動して来て、その座っているイスの高さまで、電動車イス「NRR」のイスの座面が下がります。そして、座っているイスに向かって後退して、被介護者・高齢者が乗り移りやすい位置で駐まります。



 被介護者・高齢者は自分の腕力によって、座っているイスから電動車イスに乗り移ります。



 介護者に頼らずに、電動車イス「NRR」に乗り込むことができる点が重要です。この結果、他人に頼らずに移動をすることができます。

 この電動車イス「NRR」に乗って移動できるために、例えば洗面所に行って、顔を洗ったり、歯を磨くことができるそうです。今回の電動車イス「NRR」は前乗り構造になっているので、前のハンドルに手をかけると、自転車や二輪車に乗っている感覚で自分の姿勢を保つために、洗面所のすぐ側まで接近でき、自分だけで顔を洗ったり、歯を磨くことができるそうです。被介護者・高齢者は自分の考えた行動を自分だけでできる点に、“満足感”を感じるそうです。

 電動車イス「NRR」のハンドルの中央部には、スマートフォンを固定する場所があります。



 電動車イス「NRR」に固定されたスマートフォンはUSBケーブルによって、接続されます。

 介護・福祉施設などに住んでいる被介護者・高齢者は、自分のスマートフォンを使って、10台ほど用意されてる電動車イス「NRR」に連絡をとります。

 スマートフォンを通して、使いたい時刻と利用時間を予約すると、その時間に電動車イス「NRR」が自分がいるイスやベットなどの側に指定された時間にやってきます。そして、その被介護者・高齢者が座っているイスの高さまで、電動車イス「NRR」の座面が下がり、イスに向かって後退します。

 スマートフォンには、各被介護者・高齢者の身体のデータが記録されており、その身体の能力に応じて、移動スピードの上限が設定されます。また、万が一、転倒などの事故が起こると、管理センターに連絡する機能を持っています。

 日本国内で電動車イス「NRR」を開発する際のスマートフォンはNTTドコモ製を利用していますが、デンマークでは同国で通信できる欧州製のスマートフォンを利用します。

 各被介護者・高齢者が使いやすい電動車イス「NRR」は、デンマークでの実証試験を経て、その便利さを検証できれば、デンマークの介護・福祉施設などが導入する計画です。来年2015年に採用され、製品化・事業化することを、テムザックは目指しています。なぜ、実証実験が日本ではなく、デンマークになったのかは、明日にご説明します。
 

板倉雄一郎さんがベンチャー企業を再び起こした講演を拝聴した話です

2014年06月21日 | 汗をかく実務者
 先日、板倉雄一郎さんが熱演した講演を拝聴した話の続きです。約1時間半にわたる熱演でした。

 
 板倉さんは、経営していたITベンチャー企業のハイパーネットが1997年に倒産した後に、その経営時の苦労体験記を執筆して単行本「社長失活」」を上梓します。その単行本がベストセラーになったことを契機に、本の印税など入ったこととその経緯の講演依頼が増えたことから活動を再開します。経営指南や株式投資術の講演やコンサルティングなどを事業とする個人事務所の板倉雄一郎事務所を1999年に設立し、講演活動などを始めます。



 その板倉雄一郎事務所の会社形態は、2004年からは「“企業2.0”の形で運営している」といいます。新語を使って話を盛り上げます。

 「社員や役員は固定費そのものになるので、給料は支払わず、報酬としてストックオプション(株式証券)の形で支払っている」といって、講演聴講者を驚かせます。



 
 現在、その当該企業には、優秀な公認会計士や弁護士、金融の専門家やITの専門家などのできる役員や従業員が参加しているそうです。この方々は別に仕事を持っている方や、ある程度の財産の持ち主などで、当面の食い扶持(ぶち)は他から得ている方々だそうです。
 
 また会社として事務所も構えると、その家賃が固定費になるので、原則はインターネット上で連絡を取り合い、事業の中身を打ち合わせる形式で進めているそうです。これが企業2.0の意味です。

 板倉さんは、途中で同社の社名をSynergy Driveに改め、その事業内容の発表会を開催します。事業内容の新サービスの名称は「Voicelink」だそうです。音声に特化した電話会議サービスで、音声なので世界中どこからでも、どの言語でも使えるサービスということだそうです。

 その電話会議サービスは、あるオーナーがその電話会議ルームを作成し、6人まで同時通話が可能だそうです。ある電話会議サービスに登録したゲストユーザーが視聴できます。登録したゲストユーザーは、視聴するだけでなく、通話に参加したいと意思表示すれば、オーナーが会話に参加させる許可をだします。

 この新サービス事業は、そのサービス提供が一時止まったりして、苦労しているとのうわさです。

“伝説のベンチャー経営者”の板倉雄一郎さんの講演を拝聴しました

2014年06月20日 | 汗をかく実務者
 先日、ベンチャー経営者の板倉雄一郎さんのベンチャー企業を創業する意味や経営する“コツ”などを伝える講演を東京都内で拝聴しました。

 板倉さんは1998年に単行本「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」(発行は日経BP)を執筆し、大ベストセラー本を書いた人物として有名な方です。創業したIT(情報技術)ベンチャー企業を倒産させた経緯をつづり、当時話題を集めたベンチャー企業がなぜ倒産したのかを解説したものです。



 この講演会の主催者は文部科学省です。板倉さんは「お役所が主催者なので、講演料が非常に安く、ふだんの講演料の車代にもならないほどだ」といって、笑わせます。「講演料が安いので、この講演の聴講者の方は単行本『社長失格』を買っていただくようお願いします」と伝えます。「まだ、再版して書店に並んでいるので、買っていただければ印税が入るので」と続けます。

 板倉さんは現在、講演を主な仕事の一つにしているだけに、話の進め方は巧みで、聴講者を話に引き込みます。



 笑わせながら、巧みに伝えたい内容を語ります。

 板倉さんは、1991年のインターネット黎明期に新しいビジネスモデルのインターネットプロバイダーとして、ハイパーネットというベンチャー企業を創業します。現在の米国のグーグル(Google)が実施している、特定企業の広告を別枠に表示する“ターゲット広告”の原型のようなシステム・ビジネスモデルを始めます。

 同社は、1996年3月期には売上高約7億円、経常利益約2億円を記録した大注目企業でした。大手証券会社や銀行、ベンチャーキャピタル(VC)などから融資の申し出が殺到したそうです。

 板倉さんは、同社を設立する前にも、ゲーム会社などのいくつかのベンチャー企業を創業し、ベンチャー企業の事業モデル、経営を学んでいきます。しかし、ハイパーネットの事業関連で融資を受け、その資金繰りで困り始め、1997年にハイパーネットが倒産し、さらに板倉さん個人としても37億円の債務を負い自己破産します。

 板倉さんは「ベンチャー企業は投資は受けても、融資に頼ってはいけない」と、事業資金集めのコツを語ります。当時は(現在も)、日本にはベンチャー企業に事業資金を投資するベンチャーキャピタル市場が育っていませんでした。同社は融資に対する借金返済に日々、追われ「最後はどうしようもなくなった」と語ります。

大阪大学教授の近藤滋さんが語る、魚の模様ができる仕組みに感銘しました

2014年06月08日 | 汗をかく実務者
 最近、大阪大学大学院生命機能研究科の教授の近藤滋さんの講演を拝聴しました。

 講演の内容は、例えばシマウマの縞模様はどのような仕組みでつくられるのか、白と黒の位置はどのような仕組みで決まるのかという興味深い話でした。



 近藤さんが講演された話は、ここ数年間に拝聴したさまざまな講演の中で、分かりやすさの点で第一位か第二位と感じるほど優れたものでした。難しい内容を分かりやすくしっかりと説明された点に感心しました。

 大学や公的研究機関などの研究者による自分の研究内容を話す講演では、専門外の方にも分かりやすく説明する方は予想以上に少ないのです。近藤さんは、難しい内容を分かりやすく、変にこびることなく解説しました。

 近藤さんの研究室は“パターン形成研究室”を名乗っています。シマウマの縞模様や魚の縞模様(イシダイの縞模様やイワナの水玉模様)などが、ある比較的簡単な“ルール”でできることを数学を用いて示し、その細胞レベルで起こっている仕組みを明らかにし始めています。

 近藤さんの研究目標は、生物の不思議さの一つである「どうやって単純な構造から自発的に複雑な秩序構造が生まれてくるのか」という原理を解明することです。生物の卵は精緻(せいち)な位置情報を持っていないのに、身体の器官などは同じような位置にそれぞれつくられるという形態形成できることの解明は難問だとのことです。これ自身は奥深い大研究テーマですが、その入り口として、近藤さんは魚の身体の模様はどうやってできるのかという研究テーマから研究を始めました。



 ここからは一見、話は難しくなりますが「中身は高校・大学の初歩的な数学レベルで理解できる」と、近藤さんは説明します。

 近藤さんは研究者として、分子生物学分野などを研究している最中に、英国の有名な天才数学者のアラン・チューリング(Alan Mathison Turing)が、ある条件を満たす化学反応システムは自発的に周期パターンを生み出すことを見いだし、1952年に「形態形成の化学的基礎」という論文を発表したことを知ります。 この化学反応の周期パターン(波)は、「反応拡散波」「チューリング波」「チューリング・パターン」などと呼ばれているものです。

 チューリングは、コンピューターの原理の発明や暗号解読などで有名な数学者です。チューリングが発表した「チューリング波」の仕組みは、生物学ではその後は長い間、無視されていたそうです(理解できず、そのままになっていたようです)。近藤さんは、その「チューリング波」の仕組みを用いて、簡単な微分方程式によるシミュレーションをパソコンのソフトウエアとして示し、いろいろな魚の身体表面の模様ができることを示しました。数学によるシミュレーションが生物が持つ仕組みをよく説明できることを示しました。

 さらに、近藤さんたちは細胞の反応の仕組みとして、実際に「チューリング波」が起こる現象を示しています。ここは分子生物学の細胞内での仕組みの知識がいくらか必要です。最近の実験生物学の話はやはり難しいので省略します。

 大阪大学大学院生命機能研究科が持つ実力・魅力を今回、知りました。同研究科を支えているお一人である近藤さんのすごさを知りました。本当に頭のいい方がいることを改めて確認しました。日本の研究者の中に、すごい人もいることを再確認しました。

慶応藤沢イノベーションビレッジのマネジャーの広川さんにお会いしました

2014年03月21日 | 汗をかく実務者
 神奈川県藤沢市の郊外にある慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)は森に囲まれた公園のような環境のキャンパスです。1990年に新設されたキャンパスです。

 その湘南藤沢キャンパスの入り口からキャンパスの中心部とは逆側に数100m歩くと、しゃれた2階建て建物の慶応藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)の前にでます。この慶応藤沢イノベーションビレッジは、地元の中小企業や慶応大学関連のベンチャー企業などの事業起こしや創業を支援する大学連携型の起業家育成施設です。



 この慶応藤沢イノベーションビレッジに勤務するインキュベーションマネジャーのお一人の広川克也さんは、慶応大学の教員・研究者や学生が研究成果などを基に、ベンチャー企業をつくる際の強力な“助っ人”として有名な方です。



 慶応藤沢イノベーションビレッジには、現在約20社のベンチャー企業やNPO(非営利組織)などが入居しているそうです。例えば、医療サービス情報を提供する事業で話題を集めているカルー(Caloo、東京都目黒区)、多彩なIT(技術情報)系サービス事業を展開するユーヒロ(uhero、東京都中央区)などの注目企業が入居している。

 また“面白法人カヤック”を自称するIT系ベンチャー企業のカヤック(神奈川県鎌倉市)も慶応大学を卒業した若者が起業し、以前は慶応藤沢イノベーションビレッジに分室を構えていて、事業の仕組みを考えた企業です。

 湘南藤沢キャンパスにある総合政策学部や環境情報学部と大学院政策・メディア研究科などの研究成果やアイデアを基に、卒業生が創業したベンチャー企業では、コロプラ(東京都渋谷区)やクックパッド(東京都港区)などが有名です。クックパッドは創業者の佐野陽光さんが環境情報学部を卒業後につくった企業です。

 慶応藤沢イノベーションビレッジは、経済産業省傘下の独立行政法人の中小企業基盤整備機構が中小企業やベンチャー企業などの事業起こしや創業を支援するために設置した大学連携型の起業家育成施設です。原則としては、大学の研究開発成果や共同研究などを基に起業するベンチャー企業などの育成を図っていま。

 その創業を支援するのが役目のインキュベーションマネジャーである広川さんは、慶応藤沢イノベーションビレッジで学生や若者にベンチャー企業の創業の仕方や創業計画などの相談に乗り、助言している。ベンチャー企業を創業する学生や若者は自主的に自立して創業し、ベンチャー企業を運営していく考え方を学ぶ支援を続けています。

 最近、日本ではIT系やサービス系のベンチャー企業のIPO(新株上場)が相次いでいます。この分野では、創業時の事業資金が少なくて済むために、独自の事業戦略をしっかり練り上げ、その事業計画を適時、つくり直すタフな精神の持ち主であれば、成功する機会が高いようです。その起業家精神を若者に指南しているお一人が広川さんです。