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ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

「NEDOロボット白書2014」が発行されたとのWeb系ニュースを拝読しました

2014年07月19日 | イノベーション
 先日、経済産業省系の独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「NEDOロボット白書2014」を世界で初めて取りまとめて発表しました。

 このニュースは主にWebサイト系のメディアが伝えています。



 同白書の副題は「社会を変えようとするとき、そこにロボット技術がある!」です。「日本が現在、蓄積しつつあるロボット技術によって、社会的課題解決の処方箋を提言することを狙って、今回まとめたもの」と、NEDOロボット・機械システム部の担当者は力説したそうです。

 そして、日本が現在直面している少子高齢化や日本国内での製造業などの産業空洞化、道路などの社会インフラストラクチャーの保全対応、災害時への対応などのさまざまな社会的な課題を「“ロボット技術”によって解決する処方箋を提示する」と説明します。

 ロボットというと、すぐに頭に浮かぶホンダ(本田技研工業)が開発中の人型ロボット「ASIMO」などの具体的なロボットだけではなく(最近の話題だと、ソフトバンクの「Pepper」になるようです)、人を支援する“ロボット技術”全体が今後の処方箋になるそうです。

 同白書は、例えば日本での今後の少子高齢化による介護労働力不足を補うために、日本では既存企業やベンチャー企業などが介護ロボットを次々と開発し、実用化されている実例を解説し「介護ロボットなどの人間にサービスする“サービスロボット”分野の技術開発指針と活用事例を解説している」そうです。

 同時に、今後に少子高齢化が深刻化し生産現場での労働力不足を解消する人間と一緒の環境で働くロボットの実用化も進んでいます。



 NEDOは、国際標準化機構(ISO)が2014年2月1日に発行した、生活支援ロボットの安全性に関する「国際標準化規格ISO13482」の取りまとめでは、中核的な役割を果たし、日本が“サービスロボット”の事業化を進めるイニシアティブを握る環境を整えました。国際標準を先行させた点で、評価されています。

 NEDOは同白書では、今後、市場が急成長するとみている屋外などで活躍する遠隔操作型のロボットである「“フィールドロボット”分野でのの技術開発指針と活用事例にも力点を置いて解説した」そうです。

 今回、NEDOのWebサイトに公表した「NEDOロボット白書2014」については、さまざまな意見を広く募集し、今後2年ごとに改訂する計画の同白書改訂版の参考材料として活用していく方針だそうです。

 2014年10月ごろに、NEDOはNEDOロボットフォーラム(仮称)を開催し「日本でのロボット事業の活性化を図るイベントを検討中」だそうです。

高分子学会バイオミメティクス研究会の講演会を拝聴した話の続きです

2014年07月09日 | イノベーション
 先週、高分子学会内に設けられたバイオミメティクス研究会が東京都江東区で開催した2014年度講演会を拝聴した話の続きです。

 「生物模倣」と翻訳される学術分野・工学分野である“バイオミメティクス”について、同講演会では北海道大学の名誉教授の下澤楯夫さんが講演しました。

 下澤さんが雑木林を歩いていると、エゾハルゼミの死骸が小道に落ちていて、その羽の透明性が高い点に興味を持ったそうです。そこで、この羽根の仕組みを明らかにするために、走査型電子顕微鏡(SEM)で羽を観察してもらうことにしました。

 その結果、エゾハルゼミの透明性の高い羽の表面は、直径が50ナノメートルから100ナノメートルで、高さが250ナノメートルの円柱状の“ナノパイル”がびっしりと並んでいました。昨日2014年7月8日編でお伝えした「モスアイ」と同じ微細構造です。

 この結果、エゾハルゼミの透明性の高い羽は、無反射構造でした。同時に撥水(はっすい)構造にもなっています。

 下澤さんは「エゾハルゼミの透明性の高い羽は表面クチクラが分泌され、自己組織化によってモスアイ構造ができている」と推論します。

 最近、昆虫などの身体の各部分の構造などの解析が進んでいる理由は、走査型電子顕微鏡などのナノスケールで観察できる観察装置・機器を生物学分野でも駆使し始めたからです。

 実は、生命体である昆虫などの各部分を走査型電子顕微鏡で観察するための試料づくりは、そんなに簡単なことではありません。走査型電子顕微鏡の試料室部分は極低圧力(昔でいう真空)になり、電子線を浴びるので、その電荷を除去する仕組みを与える必要があるからです。

 さらに最近は、“ナノスーツ”と名付けられた生物の細胞が水分を保った状態で走査型電子顕微鏡で観察できる技術も実用化されています。このナノスーツは、浜松医科大学の針山孝彦教授が東北大学原子分子材料科学高等研究機構などと共同で、高真空下でもほぼ細胞が生きていた状態を保つように生体適合性プラズマ重合膜を開発した技術だそうです(詳細はよく知りません)。

 さて、今回拝聴したバイオミメティクス研究会の2014年度講演会でのトピックスは 比較的新しいバイオミメティクスという学術分野・工学分野でも産学連携を進める組織として、特定非営利活動法人バイオミメティクス推進協議会を設立することを決議したと、発表したことです。

 そのバイオミメティクス推進協議会の仕組みを伝えるWebサイトの画像です。



 実際にプロジェクターで映し出された画像なので、あまりよく撮影できていませんが。

先週、高分子学会のバイオミメティクス研究会の2014年度講演会を拝聴しました

2014年07月08日 | イノベーション
 先週、高分子学会内に設けられたバイオミメティクス研究会は東京都江東区で、2014年度第一回目の講演会を開催しました。

 “バイオミメティクス”とは「生物模倣」と翻訳される学術分野・工学分野の比較的新しい分野です。生物が本来持つ機能や構造、生産プロセスなどを解析・解明し、人間が省エネルギーなどの低環境負荷性に優れた高機能性などを模倣して実現させる学術領域として注目を集めています。

 たとえば、トンボは直進しながら、進路を急に変更し、軽やかにUターンします。ある大学の機械系の研究者が、トンボを模倣した“ペリコプター”状の飛行体を試作しています。トンボのように小回りでUターンさせることはとても難しい制御技術であることが分かったそうです。

 約4億年前に地球に誕生した昆虫類は、その進化の過程での“偶然と必然”を経て、比較的簡単な制御機能によって、複雑な動きなどを実現しています。約4億年という時間が、昆虫に多様な高機能を与えました。こうしたことを伝える展示会が2014年3月から、国立科学博物館で開催されていました。

 同じ趣旨の展示会は、東京都千代田区にある科学技術館でも開催されていました。



 人類は、昆虫などが持つ、その高機能を発揮できる仕組みの解明を始めています。

 こうした昆虫から学ぶバイオミメティクス系のセミナーは、国立科学博物館や日本科学未来館、北海道大学総合博物館などで時々、開催されています。たとえば、北海道大学博物館では以下のセミナーを開催しています。



 北海道大学博物館はこうした趣旨のセミナーを継続的に開催しています。市民向けのサイエンス・コミュニケーションの一環として実施しているようです。

 バイオミメティクス分野では、昆虫の多様な機能の仕組みの解明を始め、その研究成果も出始めています。

 その有名な事例の一つは“モスアイ”と呼ばれるガ(我)の眼の構造です。ガの眼の表面は、ナノメートルサイズの細かい円柱状のものがびっしりと規則正しく並んでいます。こうした微細構造に、光が入ると円柱状の側面で反射し衰退して、入射した光は反射しません。

 夜、ガの眼に光が入射して反射すると、トリ(鳥)などの天敵に存在場所が知られて、襲われることになります。これを防ぐために進化の過程で会得したようです。

 この細かい円柱状のものが規則正しく並ぶ仕組みは「自己組織化」という現象であることが分かってきました。昆虫をはじめとする生物は、この自己組織化を利用することでいろいろな機能を獲得しています。

 このモスアイ構造を応用し、帝人は液晶パネルの表面に貼る無反射フォルムを開発しています。実際に、液晶パネルにどの程度採用されてるのかは分かりません。今後は昆虫などから学んだ高機能な製品や部品がいくつか出てきそうです。


日本経済新聞紙の記事「ディーゼル 燃費30キロ前後 マツダ」を拝読しまいした

2014年06月13日 | イノベーション
 2014年6月11日に発行された日本経済新聞紙の朝刊中面に掲載された見出し「ディーゼル 燃費30キロ前後 マツダ、デミオに新エンジン」という記事を拝読しました。

 この記事は日本経済新聞のWeb版である日本経済新聞 電子版では、見出し「マツダ、デミオに新ディーゼルエンジン 燃費30キロ前後」として載っています。



 この記事を読んで、2014年5月19日に記者会見を開いた自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)が目指す基盤研究開発の内容がいくらか分からなくなりました。同技術研究組合は、日本の乗用車メーカー8社と日本自動車研究所が参加して今年4月1日に設立され、エンジン開発の効率化を共同で図ることを目指します。

 実際には、欧州の自動車メーカーに対して「エンジン開発効率の点で、欧州メーカーに後れを取っている」とみられるディーゼルエンジンの基盤研究研究を共同で実施すると考えられています。

 今回の記事は、マツダが6月10日に「夏以降に発売する予定の小型車デミオの新型車に排気量1.5リットルの新型ディーゼルエンジンを搭載する」と発表したことを受けて書かれたものです。燃料1リットルの走行距離は30キロメートル前後の見込みで、ハイブリッド車(HV)と軽自動車以外では国内トップの燃費になる見通しです。



 日本では、ディーゼルエンジンを搭載した乗用車・SUV(多目的スポーツビークル)車は燃費性能の高さや走りの力強さが再評価され需要が急回復しています。マツダはディーゼルエンジン搭載車のテレビコマーシャルを流し、「クリーンディーゼル」として「第3のエコカー」としての存在感をアピールしています。

 正確には、マツダはSUVの「CX-5」と乗用車「アテンザ」「アクセラ」の3車種に2.2リットルディーゼルエンジンを搭載しています。そして、今回の1.5リットルディーゼルエンジンは、新型「デミオ」と新型「アクセラ」などに搭載すると予想されています。

 このおかげでしょうか、日本でのディーゼルエンジンを搭載した乗用車・SUV車の国内販売台数は2014年には10万台の大台に急回復する見通しです。2002年から2008年当時までは、同1万台以下だったことを考えると、隔世の感があります。このディーゼルエンジン搭載車には、欧州メーカーの輸入車も含まれています。

 そのディーゼルエンジン技術で先行するマツダは自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)に参加し、ディーゼルエンジンの基盤研究開発の何を担当するのかよく分からなくなりました。

 日本では、ディーゼルエンジンを搭載した乗用車・SUV車はマツダ以外には、トヨタ自動車と日産自動車、三菱自動車が発売しています。

 日本の乗用車メーカー各社はディーゼルエンジン技術の点では実力はかなり違います。この結果、ディーゼルエンジンの基盤研究開発でどんな内容を共同で実施するのかが分からなくなりました。10年以上先のディーゼルエンジンとは何かという目標設定の点で、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)に参加した企業8社は意見が一致するのかどうか予想できません。

 だいぶ以前ですが、日本のトラックメーカーなどは大型ディーゼルエンジン技術面で、超高圧技術を共同で試作した事例はあります。ディーゼルエンジン先進メーカーのマツダは日本企業として何を分担するのか興味は尽きません。

日産自動車が新型「スカイライン」にダイムラー製エンジンを採用した話です

2014年06月07日 | イノベーション
 昨日は、2014年6月5日に発行された日本経済新聞紙の朝刊一面に掲載された「トヨタなど全14社統一 汎用部品の仕様コスト低減」を拝読した話でした。

 日本の自動車メーカーも激しくなるばかりの国際市場で生き残るために、いろいろと手を打っているとの話でした。その日本の自動車メーカーのさまざまな打開策の中で話題を集めたのは、日産自動車の動きです。

 日産自動車は2014年5月26日に乗用車「スカイライン」に、高出力・低燃費・軽量なターボチャージャー付ガソリンエンジンを搭載した「スカイライン 200GT-t」を追加し、6月5日から国内で発売すると発表しました。



 この「200GT-t」はドイツのダイムラー(Daimler)社の2.0リットル・ターボエンジンと7速自動変速機(AT)を搭載したことで話題を集め、驚きを与えました。このエンジンはメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)ブランドの「E250」に搭載している「M274」型エンジンをベースに、燃焼方式を変更して搭載したものです。



 この「200GT-t」は、日本以外の欧州、米国、中国などの海外市場では「Infiniti Q50」として販売されます。スカイラインは既に車体デザインなどは海外市場を意識したものになっているといわれています。この「Infiniti Q50」は海外市場で“売れる車”として日産自動車が企画し、発売したものです。

 そのベストセラーカー狙いの開発に当たって、自社でのエンジンと自動変速機の開発を断念し、ドイツのダイムラー社製を採用しました。某メディアによれば、日産自動車はこのクラスの縦置き用直列4気筒エンジンを持ってないために、外部調達に踏み切り、開発費を約100億円節約できたと伝えています。問題は、日産自動車内部のエンジン・自動変速機の開発部門の開発意欲が低下しないかということと、その技術の蓄積不足が将来問題を起こさないかということです。

 日産自動車の乗用車「スカイライン」の新型車開発はなかなかしたたかです。

 同社は、新型「スカイライン」を2014年2月末から国内で発売しています。この国内販売車はをハイブリッド・エンジン(排気量3.5リットルのV型6気筒エンジン)を搭載しています。ハイブリット技術を蓄積しながら、主な市場である海外では、ハイブリット車より安いグレードのターボエンジン搭載車の「Infiniti Q50」として稼ぐ戦略です。

 手強い欧州の自動車メーカー、巨大な米国の自動車メーカー、勢いのある中国やインド、アジアの自動車メーカーと競争し続けるために、日本の自動車メーカーのその時に打つ事業戦略の“布石”を見続けたいです。

 一番の感心事は、大トヨタ自動車が“GM”病にかからない布石をどのように打つかです。