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ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

政策投資銀行系VCが開催したグリーン・イノベーションフォーラムを拝聴しました

2013年02月25日 | イノベーション
 日本政策投資銀行系のベンチャーキャピタル(VC)のDBJキャピタル(東京都千代田区)が開催した「グリーン・イノベーションフォーラム」を拝聴しました。東京都千代田区大手町の日本政策投資銀行が入居している、割と最近できたビルで開催されました。

 「グリーンイノベーションフォーラム」の主題は、日本の農業でイノベーションを起こして国際的な競争力を高めることです。



 つい最近、安倍晋三首相が訪米し、オバマ大統領とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定について原則を議論した直後で、日本側は日本の農業をどう守り、事業性を向上させるかを議論している最中です。この点で、今回のフォーラムはタイミング良く開催されたものといえます。

 今回のフォーラムの基調講演の一つは「植物工場によるグリーン・イノベーション戦略を考える」です。講演者は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(NARO、つくば市)の上席研究員の中野明正さんです。

 高度な環境制御によって、野菜などを計画生産できる“植物工場”を基に、工場的な生産を可能にし、季節や天候に左右されずに安定供給することを目指すそうです。従来の温室ではなく、人工光・太陽光などや二酸化炭素ガス(CO2)温度、湿度などをそれぞれ高度に制御するシステムを導入したものを“植物工場”と呼ぶそうです。光合成などを盛んにする仕掛けなどです。

 この“植物工場”は、日本では三回目のブームだそうです。第一回目と第二回目の植物工場ブームの問題点はなんだったのかは、実は講演内容からはあまり分かりませんでした。

 中野さんは、具体的にはトマトの植物工場の実施例・未来予想図を基に解説されました。日本のトマトの植物工場(準じるものも入っている模様)は中規模生産施設が中心で、規模が1ヘクタール以上の大規模生産施設が少ないのが現状だそうです。

 今後は、国土は狭いが農業品の収量が高く、高い国際競争力を持つオランダを目標に、日本の農業の国際競争力を高め、“儲かる”農業を実現することが、日本の未来の農業を救うと主張されます。

 農業・食品産業技術総合研究機構が実施した“植物工場実証拠点”のプロジェクトでは、トマトやキュウリ、パプリカなどの野菜を対象に、養液栽培での生産性を高め、作業環境も快適化し、作業の自動化を図るなどの実証試験を実施したそうです。ユビキタス環境制御システムを導入してるそうです。このシステムでは作業者や作物情報も、安全・安心を高めるために発信しているそうです。



 トマト栽培では、CO2(2酸化炭素)ガスを供給し、加湿などの温度・湿度制御を施すことで、生産量を増やすことに成功しているそうです。

 “植物工場実証拠点”での実証成果から、環境制御する植物工場を普及させることで、多収穫・高品質(高糖度)を実現できると解説sします。

 講演では、農業分野の専門用語などが多く、何がイノベーションなのか、そのビジネスモデルは何かなどは、ある意味では当たり前として解説されたために、ビジネスモデルの具体像はよく分かりませんでした。ただし、農業先進国のオランダでできたことを、日本でも実施、普及させることで、日本の農業を成立させたいとの主張は印象に残りました。

 農業の専門家が、日本の農業でのイノベーションを素人にも分かりやすく説明しないと、食べ手である消費者の共感は得にくいとも感じました。

 中野さんは、日本の未来の農業のあり方を植物工業によるイノベーションによって未来像を解説されました。こうした議論を深めていかないと、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についての実質的な議論が進まないと感じました。日本農業のイノベーションについて分かりやすく解説し、ユーザー(消費者)の共感を得ないと、前進しないと感じました。

CYBERDYNEが担当した災害対策用作業アシストロボットも公開されました

2013年02月23日 | イノベーション
 経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、2013年2月20日午後に「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」の成果報告会を千葉工業大学の芝園キャンパスで開催した話の続きです。

 “災害対応”とは、事実上は東京電力の福島第一原子力発電所の原発事故の解体・廃炉などの作業向けに、多様なロボット技術を開発し、必要な要素技術を整えることだと推定しています。

 「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」で開発は、平成24年度の約1年間に約10億円投入された“緊急のプロジェクト”です。参加した組織・機関は、千葉工業大学、千葉工業大学発ベンチャー企業の移動ロボット研究所(千葉県習志野市)、三菱重工業、日立製作所、東芝、筑波大学発ベンチャー企業のCYBERDYNE(つくば市)の6者です。

 この中で、異色なのはCYBERDYNEが担当した「災害対策用作業アシストロボット」の開発です。福島第一原子力発電所の事故現場では、有害物質や高温多湿などの極限環境の中で、ロボットだけではなく“人間”も過酷な復旧作業をする可能性が高まっています。

 こうした事故現場の周辺部で復旧作業をする作業員の安全や健康を確保することが必要条件になっています。この課題を解決するために、CYBERDYNEは同社が持つロボットスーツHALを基に、新型の災害対応用ロボットスーツを開発しました。







 災害対応用ロボットスーツは、放射線による被曝量を大幅に低減させるために、タングステンなどの防護服によって、ガンマー線の被曝線量を半分程度まで低減させる被爆防止を付け加えました。



 災害対応用ロボットスーツを“着た”作業員の防護服内に冷気を直接送風することによって、作業者の体温上昇を抑えて熱中症を防ぐクーリングシステムを付加しました。

 災害対応用ロボットスーツを“着た”作業員の胸にバイタルセンサーを取り付け、心拍数、体温、加速度のバイタル情報をリアルタイムにモニタリングできる安全管理機能を付加したそうです。

 話は、三菱重工業、日立製作所、東芝の3者に戻ります。今回の災害対応無人化システムでは通信規格などを共通化し、互いに開発した要素技術を互いに使えるシステムとしての基盤技術を築いたそうです。三菱重工業、日立製作所、東芝の3者は、今後は原子力発電所の解体や廃炉という共通の目的で連携し協力していく構えの表れです。

 さらに、今回の災害対応無人化システムの開発は、各社の原子力事業部がすべて担ったそうです。他の事業部の支援は原則、受けていないそうです。この辺に、大手重工メーカーの人材の豊富さを感じると同時に、事業部が事実上の“会社”単位になっており、大手重工メーカー自身が全事業部を横断的にまとめ上げることはできないと感じました。

 これが将来、強みになるのか弱みになるのかはまだ判断できません。日本的な大企業体質であることは間違いありません。

原子力発電所事故現場の解体・廃炉向けのロボット技術が公表されました

2013年02月22日 | イノベーション
 経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2013年2月20日午後に「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」の成果報告会を、千葉県習志野市にある千葉工業大学の芝園キャンパスで開催しました。

 この“災害対応”とは、事実上は東京電力の福島第一原子力発電所の原発事故の解体・廃炉などの作業向けに、さまざまなロボット技術を開発し、技術面で必要な要素技術を整えることだと推定しました。このロボット技術を東京電力が採用し、原発事故対応を図る環境を整備するのが狙いのようです。

 この「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」は、平成24年度の約1年間に約10億円投入された“緊急のプロジェクト”です。参加した組織・機関は、千葉工業大学と千葉工業大学発ベンチャー企業の移動ロボット研究所(千葉県習志野市)、三菱重工業、日立製作所、東芝、筑波大学発ベンチャー企業のCYBERDYNE(つくば市)の6者です。三菱重工業、日立製作所、東芝の3者は日本で原子力発電所を事業化している企業です。



 今回発表された成果の中で、福島第一原子力発電所の事故を起こした現場ですぐに役立ちそうなのは、日立製作所と移動ロボット研究所が開発した“事故現場探索”用の移動体ロボット「Tsubaki」です。



 放射能汚染の実態を測るガンマーカメラを搭載した移動体ロボットです。



 ガンマー線量を測ることができるガンマーカメラは、日立製作所が開発しました。同社の従来品の約20倍に当たる300ミリシーベルト/時間の高い線量率環境でもガンマ線の強度分布を測定できるそうです。福島原発の事故建屋内で線量が高くて測定できなかった区画に実情を調べに行くことができます。
 
 測定可能な線量率も300ミリシーベルト/時間と高いそうです。このガンマーカメラの開発では、周囲から出る放射線の影響を低減するシャッター機構や高線量率環境下に対応するために放射線を遮蔽する鉛板の厚さを4センチメートルから6センチメートルへと厚くしたものの、遮蔽構造を最適化して質量を約80キログラムに抑える工夫をこらしたそうです。

 ガンマーカメラを搭載する移動ロボットは、移動ロボット研究所が担当しました。これまでに実際に福島原子力発電所の事故現場に入っている、千葉工業大学未来ロボット技術開発センターが開発した「Quince」を基に改良した移動体ロボットです。四つのクローラで移動する仕組みは同じです。

 移動体ロボット本体の質量を72キログラム、外形寸法を長さ1500×幅530×高さ710ミリメートルに抑え、ガンマーカメラ約80キログラム、カメラの向きを上下左右に動かす機構20キログラム、パンタグラフ機構41キログラムの合計約140キログラムを搭載できます。その上で、急こう配の階段の昇降を行い能力をもっています。

 今回は、より小型の被災現場調査用移動ロボット「Sakura」も公開しました。



 福島第一原子力発電所のある原発事故建屋にある、幅が狭い約70センチメートルの鋼製階段を上って、現地調査できる能力を持っています。

 今回の公開実験では、無線操作で移動していますが、実際には300メートルのケーブルで遠隔操作する仕組みです。長くなりましたので、今回はここまでです。

理化学研究所主催のシンポジウム「科学が紡ぐ未来」を拝聴しました

2013年02月09日 | イノベーション
 理化学研究所が主催した第2回先端社会シンポジウム「科学が紡ぐ未来 細胞を利用した次世代医薬品が広げるイノベーションの可能性」を拝聴しました。東京都千代田区の有楽町で開催されましたシンポジウムです。

 “第2回先端社会シンポジウム”と銘打ったのは、理化学研究所の社会知創成事業の広報活動として開催されたからです。



 今回のシンポジウムの主題は「細胞性医薬品」が治療法として普及する再生医細胞医療の産業化の将来像でした。講演の中身は、再生医細胞医療の実現を図っている研究開発現場の方々の現状報告でした。

 講演者は再生医細胞医療の研究者や研究開発責任者の方々で、専門用語を駆使して現状を解説されました。このために、話の中身は半分ぐらいしか理解できませんでした。専門用語を説明なし・解釈なしに使うために、理解できない部分が多かったからです。

 例えば、いきなり用いられた略語「IVIVC」は「In-vitro in-vivo correlation」の略です。これは中身が想像でき、なんとか分かりました。「In-vitro」は“試験管内で”という意味で、試験管や培養器などの中でヒトや動物の組織を用いて、体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応を検出する試験のことを指す」ことです。「in-viv」は「生体内でという意味で、マウスなどの実験動物を用い、生体内に直接被験物質を投与し、生体内や細胞内での薬物の反応を検出する試験のことを指す」と難解です。

 これに対して、「3Rの精神」と表現された意味が、現在でも分かりません。一般に「3R」との略語は、リデュース、リユース、リサイクル(reduce、reuse、recycle)の3つの単語を意味し「限りある資源を有効に使ってごみを減らすやり方」を意味します。しかし、この意味では文脈上で飛躍があり、意味が分かりません。まったく別の意味か、あるいはかなり飛躍した表現のどちらかです。

 再生医細胞医療の研究者や研究開発責任者の方々は、学術面で普段から英語ベースの専門用語を議論の際に使っているようです。この分野の専門家同士は十分に理解できるようです。

 今回のシンポジウムは、ある程度周辺の専門家を交えた方々に、再生医細胞医療の現状を伝え、その産業化のやり方を伝え、周辺関係者とその実現性を議論したいということが趣旨だったと考えています。そうだとしたら、専門用語を“ナマ”のままで使うのは趣旨違いです。専門領域を持つ者同士がどのようにコミュニケーションするのかを考えさせられるシンポジウムでした。日本の大学・大学院では、専門分野が異なる専門家同士がコミュニケーションをどうのようにとるのかを、学術的に教える講義はほとんど無いからです。

 参考になったのは、“PMDA”と呼ばれる独立行政法人医薬品医療機器総合機構が科学委員会を、2012年5月に設けた話です。ただし、ここでも「レギュラトリーサイエンス」という専門用語を説明なしで話されたために、この部分は理解できませんでした。

 専門家同士がどのようにコミュニケーションを取り合い、社会的な意味を話し合うことは難しいことと感じました。イノベーションを起こすには、専門分野の研究開発者が周囲を巻き込むことが重要になります。

 今回の講演者のお一人だったドイツの大学研究者の方が、専門用語に気をつけて話したことに、ドイツ(あるいは欧州)の科学技術の背景にある哲学を感じました。日本の科学技術の専門家は工夫しなくても通じ合えると誤解している方が多いようです。


nano tech 2013展で、多様な研究開発成果を拝見した話の続きです

2013年02月02日 | イノベーション
 1月30日から2月1日までの3日間にわたって、東京ビックサイトで開催されている第12回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議「nano tech 2013」に行って、多様な研究開発プロジェクトの成果を拝見した話の続きです。

 「nano tech 2013」の入り口付近には、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の巨大なブースが広がっています。新エネルギー・産業技術総合開発機構が研究開発を支援した研究開発プロジェクトなどの成果が各ブースに展示されています。

 その各ブースの中を歩き回って、さまざまな研究開発プロジェクトの成果を見て、有機EL照明や炭化ケイ素(SiC)パワー半導体、高反射型カラー電子ペーパーなどの展示が印象に残りました。材木などからセルロース“シングル”ナノファイバーを取り出し、ポリ乳酸と混合して高ガスバリアーフィルムを作製した展示ブースも印象に残りました。

 あれと思った展示ブースは、熱可塑性樹脂のポリプロピレン(PP)を短い炭素繊維で強化した研究開発プロジェクトの成果を示すブースです。研究開発プロジェクトは東京大学と企業の共同研究ですが、事実上は炭素繊維大手の東レの展示です。



 あれと驚いた理由は、数日前の大手新聞紙の記事に「大手炭素繊維メーカーの帝人は、短い炭素繊維で強化する樹脂に熱可塑性プラスチックを用いるのに対して、東レは熱硬化性プラスチックを用いるという研究開発方針が異なる」という内容のコラムが掲載されていたからです。研究開発と事業のそれぞれの戦略について、かなり断定的な書き振りでした。

 帝人が試作した短い炭素繊維で強化した熱可塑性プラスチック製の自動車ボディーを、東京モーターショーで拝見した記憶があります。

 今回、東レが展示した試作品は、短い炭素繊維で強化した熱可塑性プラスチック製の小型自動車部品です。通称、“スタンパブル品”と呼ばれる、短時間加熱して、金型でプレス成形してつくるものです。

 東レは、平均長さ5ミリメートルの炭素繊維を完全にバラバラにし、その表面を化学処理して熱可塑性プラスチックとなじむようにし、繊維強化効果が十分に働くようにしたそうです。

 先日の新聞記事の真意は、帝人は熱可塑性プラスチックベースで大型の自動車ボディーを試作して、自動車メーカーに売り込んでいるのに対して、もう一方の炭素繊維の旗頭の東レは、まだ小型部品しか試作していないという意味だったようです。

 豊田合成などが展示した“筋電義手”も気になりました。昨年も展示されていたこの義手は、高分子誘電アクチュエーター製の新型モーターで動きます。



 実際に製品化する際には、現行の2本指から、指はもう少し多い本数になるそうです。

 小難しくなりますが、特殊な樹脂製の誘電層を電極層でサンドイッチ構造ではさんだシート状のものをくるくると巻いて、ロール型高分子製の誘電アクチュエーターにするものです。

 この高分子誘電アクチュエーターは、義手以外にも、病院などの床ずれ防止マットや電動歯ブラシ用の駆動モーターとしての用途開発を考えているそうです。

 ここで展示された研究開発成果は、10年ぐらいしたらお目にかかれる可能性があるものです。どの研究開発成果に将来、お目にかかることができるのかを想像しています。