ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその347-按摩と女

2019年06月24日 | 邦画
戦前の日本映画の傑作喜劇。

日本映画の喜劇については、深く語れるほど詳しいわけではないが、どうも「人情」「涙」などが絡み、とてもウエットな感じをうけてしまう。
海外映画の喜劇については、スラップスティック以来、ドライな映画が多く「笑い」に徹した作りになっていると思う。
しかし戦前の日本映画では、以前このブログで紹介した「彦六おおいに笑ふ」と言うオフビートでドライな喜劇が存在した。
今回紹介する映画は「按摩と女」若き日の「佐分利信」「高峰三枝子」の出演する映画である。
ストーリーを紹介しておこう。

温泉按摩である徳市と福市は感がとても鋭く、目がみえないにもかかわらず通り過ぎる人の数を当てたり、その素性を言い当てたりすることができた。
また、毎日何人の人を追い抜いたかと言うことに、一種の生きがいを感じるちょっと変わったコンビである。
徳市は、ある日東京から来たという女からマッサージの依頼を受ける。
感の鋭い徳市は、その女から妙な不安感を感じ取る。
時同じくして、その温泉旅館に泊まっていた学生たちが、入浴中に財布を盗まれると言う事件が発生する。
その犯人とは果たして.......

まずこの映画の素晴らしいところは、計算されたカット、レールカメラによる流麗なショット、画面を暗転するタイミング。
全てにおいて、完璧なまでの完成度である。
そしてセリフの言い回しの妙。小津安二郎の映画のような「クスッ」とするような見事さ。
映画、映像への監督の拘りがこれほど垣間見える作品もないであろう。
特に計算しつくされたワンシーンは、観ているととても勉強になる。
残念ながら、現在の邦画界では、このような作品を作れる監督はいないであろう。
「彦六おおいに笑ふ」以来の戦前邦画の名作を観たと思う。
観ていない方がいらっしゃったら、是非観ることをおすすめする。

1938年、日本製作、モノクロ、トーキー、監督:清水 宏

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