ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその108-酔いどれ天使

2013年10月07日 | 邦画
黒澤明の初期の傑作。

以前このブログで黒澤作品については何本かご紹介した。
しかし今回紹介する映画抜きで初期の黒澤は語れない。
その映画とは「酔いどれ天使」である。
戦後間もない街を舞台とした医師と若いやくざの物語である。
ストーリを紹介しておこう。
アルコール好きな周りからは「酔いどれ」と呼ばれている医師真田はある日手を怪我した松永と言う若いやくざを手当てする。
彼はこの近辺の闇市を仕切っている若いが大物のやくざだった。
怪我の治療中妙な咳をする松永に真田は「おまえたちような自堕落な生活をしているものは結核にかかりやすい」と言う「それなら結核かどうか診てもらおうじゃないか」を上着を脱ぎ捨てる松永。
眞田は彼の体に聴診器をあて、彼が結核であることを見抜く。
それを聞いた松永は真田に手荒い態度をとりその場を後にする。
後日結核患者というとどうしても見捨てておけない眞田は彼の出入りする酒場へ何度も足を運び治療をうけるように説得する。
最初は彼を煙たがっていた松永だが徐々にその心境は変化をしてくる.......
まずこの映画で見事なのは戦後間もない風景を完全に再現したセットであろう。
これは古川ロッパ(昭和初期の名コメディアン)が主演した「新馬鹿時代」のセットをそのまま流用したものだという。
立派なセットをその映画のためだけに使うのはもったいないと考えてこの映画にも使うことになったらしい。
そして映画の創りは文句なくつけいる隙のない出来栄えである。
それに加え松永役の三船敏郎の演技が圧巻である。
そのギラギラした強烈な個性はこの一本で三船を世間に知らしめるには十分であったろう。
そして初期の黒澤作品に見られるようにはっきりと主題を表現し、その映画内でそれを言い切る力強さは見事である。
名シーン、名シークエンスはいたるところにあり、いつまででも語れそうな映画である。
そしてラスト、はかなく悲しい結末には美しささえ感じさせられるところがある。
そして黒澤はこの映画の最後に映画を通して語る「希望」と言うものの素晴らしさを。
1948年日本製作、1948年4月日本公開、モノクロ、98分、監督:黒澤明

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