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10月7日のハマスによるイスラエル入植地奇襲をきっかけに始まったガザ戦争は、イスラエル軍がガザ北部を焦土化し、南部でも都市部に張り巡らせたハマスのトンネル網をしらみつぶしに攻撃する悲惨な市街戦が繰り広げられている。パレスチナ側の死者は女性・子供を含み2万人を超え、ハマスにとらえられた人質の多くも解放されず停戦の気配は見えない。国連安保理も機能マヒしたまま時間だけが過ぎていく。イスラエル軍とハマスの戦力の差は圧倒的であり、戦争がいずれイスラエルの勝利で決着することは衆目の一致するところであろう。ただ戦後のガザがどのような形になるかは不透明である。
ここでは当事者たちの本音と本性がどのようなものかを探りながら、戦後ガザの姿を推測してみよう。
ネタニヤフ極右政権の本音と本性
完全比例制のイスラエルでは政党が乱立している。現在のネタニヤフ政権は極右政党がキャッスティングボートを握り、彼らはユダヤ民族の本音と本性をむき出しにしている。
彼らはユダヤ人が神に選ばれし者であり(選民思想)、イスラエルの土地ははるか昔に神から与えられたものである、と主張している。ユダヤ人は2千年前に祖国の土地を追われ(ディアスポラ)、移り住んだヨーロッパ各地で蔑視され抑圧された。さらに第二次大戦では1千万人以上が強制収容所のガス室に送られた(民族浄化)。金融業で成功したユダヤ人は、第一次世界大戦で欧米連合勢力を支援し、見返りとして祖先の地イスラエルを取り戻した(バルフォア宣言)。彼らは「民なき土地に土地無き民を」をスローガンにヨーロッパから移住した。「民なき土地」と呼んだパレスチナであったが、もちろんそこにはディアスポラ以前からアラブ人が連綿と住み続けていた。スローガンとは時に荒唐無稽であっても響きが良ければ実態とは無関係に利用されるものである。
第二次大戦後にイスラエルは国家として独立した。そして4度の中東戦争で周辺アラブ諸国を完膚なきまでに打ち砕き、「不敗神話」を打ち立てた。一方でユダヤ人は自分たちをゲットー(ユダヤ人居住区)に押し込め、最後は強制収容所で死の苦しみを与えたヨーロッパ各国に絶えず贖罪意識を喚起した。米国に移住したユダヤ人たちは世界の超大国にのし上がる米国の政治・経済を牛耳り(ユダヤロビー)、さらにキリスト教の聖地エルサレムをアラブ・イスラム教徒から守るという看板を掲げて、米国の世論をイスラエル支持一色に染め上げた。
ネタニヤフ政権の本音と本性は上記のことから次のように読み取れる。まず敵との戦争が不可避と判断されれば躊躇せず先制攻撃を行うこと、そして国際世論を敵に回してでも手段を選ばず敵を徹底的に壊滅することである。イスラエルにとって攻撃こそ最大の自衛策であり、勝利こそ全てを正当化する。今回のガザ戦争でハマス側に先制攻撃されたことは誤算であったが、直ちに報復しハマスをせん滅するまで戦いは止めないと明言している。
イスラエルがここまで強気なのは米国が絶対に見捨てないと確信しているからである。またガザとウクライナの二重紛争にうんざりしつつあるヨーロッパ諸国に対しても折に触れてアウシュビッツの贖罪を持ち出して牽制している。冷酷なイスラエルに妥協と言う言葉はないのである。
(続く)
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荒葉一也