石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2020年版石油+天然ガス篇 (12完)

2020-09-23 | BP統計
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0514BpOilGas2020.pdf

(天然ガスと石油を合わせて97%に達した米国のエネルギー自給率!)
(6)米国の石油・天然ガス自給率の超長期推移(1980~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G06.pdf 参照)
 米国の石油・天然ガスの需給ギャップが近年急速に改善しつつあることについては既に石油篇、天然ガス篇でも触れたが、本項では改めて1980年から2019年までの約40年間にわたる石油と天然ガス並びに両者を合わせた自給率の推移を検証する。

 まず石油については、1980年は生産量1,017万B/Dに対し消費量は1,706万B/Dであり自給率は60%であった。つまり米国は必要な石油の6割を自国産で賄っていたことになる。1980年代前半は生産が1千万B/Dを超える水準で推移する一方、消費は1,500万B/D台に減少した結果、自給率は67%まで上昇した。ただその後は海外の安価な石油に押され生産は減少の一途をたどり2005年から2007年までの3年間の自給率は34%に落ち込んでいる。この時、米国は必要な石油の3分の1しか自給できなかったのである。

 しかし2000年初めから石油価格が急上昇し、米国内で石油増産の機運が生まれ、同時にシェール層から石油を商業生産する方法が確立し、2009年以降同国の石油生産量は大幅に増えた。反面、景気の後退により消費量が漸減した結果、2019年は石油生産量1,705万B/D、消費量1,940万B/Dで自給率は88%に達し過去39年間では最高である。

 次に天然ガスを見ると、1980年代前半の自給率は100%に近く、ほぼ完全自給体制だった。80年代後半以降は生産が伸び悩む半面、消費が増加したため、自給率は漸減の傾向を示し、1992年には自給率が90%を割り、2005年には82%まで低下、需要の約2割を隣国カナダからの輸入に依存することになった。しかしその後シェールガスの開発生産が本格化するに伴い生産量は急激に増大し、2017年には自給率は100%を超え、2019年も過去最高の109%を達成、完全自給体制を整えた。米国は数年前からLNGの輸出を開始、今後本格的な天然ガス輸出国になろうとしている。

 石油と天然ガスを合わせた自給率は1980年に73%であった。1984年には78%までアップしたが1985年以降は長期低落傾向となり、2005年の自給率は50%まで落ち込んだ。しかしその後は急速に回復、2019年の自給率は過去最高の97%を達成、ほぼ完全自給の体制を確立している。因みに2019年の石油・天然ガスの合計生産量は石油換算で3,291万B/D、また合計消費量は同石油換算で3,399万B/Dである。需給ギャップは100万B/Dであるが、シェールガス及びシェールオイルの増産は今後も続くものと見られ、エネルギーについては米国の将来は極めて明るいと言えよう。

(石油+天然ガス篇 完)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2020年版石油+天然ガス篇 (11)

2020-09-22 | 今日のニュース
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0514BpOilGas2020.pdf

(19年間で石油・天然ガスの消費が3.8倍に急増した中国、日本は2割減!)
(5)主要5カ国の消費量推移(2000年~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G04.pdf 参照)
 米国、日本、中国、ロシア及びインドの5カ国について2000年から2019年までの各国の石油と天然ガスの合計消費量を見ると、米国の消費量は他の国を圧倒しており2000年は3,042万B/Dとロシア(885万B/D)の3.4倍、日本(685万B/D)の4.4倍、中国(512万B/D)の6倍あり、インド(270万B/D)に対しては10倍以上の差があった。

 米国の消費量は2012年まで横ばい状態を続けたが、その後は増加傾向にあり、2019年は3,399万B/Dに達している。これに対して中国の消費量は爆発的に増加しており、2004年には日本を超え、さらに2009年にはロシアを追い抜き米国に次ぐ世界第2位の石油・天然ガス消費国となり、2019年の消費量は2000年比3.8倍の1,935万B/Dに達している。この結果かつて6倍であった米国と中国の差は2倍以下にまで縮まっている。

 インドも中国程ではないが年々増加しており2000年に270万B/Dであった消費量は、2003年には300万B/D、そして2009年には400万B/Dを突破、2019年の消費量は2000年比2.3倍の630万B/Dに達しており日本を上回っている。

2000年に685万B/Dであった日本の石油・天然ガスの消費量はその後2009年まではほぼ一貫して減少し、同年には600万B/Dを下回った。その後漸増し2016年までは600万B/D台を維持したが2017年には再び600万B/Dを割り込み2019年は568万B/Dとなり2000年を2割弱下回っている。比較した5か国の中で2000年の水準を下回っているのは日本だけであり際立った特徴を示している。これは景気低迷によりエネルギー消費が減少したこと及び省エネ政策によりエネルギー効率が向上したためと考えられる。

(続く)

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敵の敵は味方かそれとも別の敵か? 複雑な中東の合従連衡と離合集散(中)

2020-09-21 | その他
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0515AllyOrEnemyInME.pdf

2.紛争の諸様相とその関係国(続き)
(2)宗教に関する紛争
(2-1)シーア派とスンニ派の対立
【問題点】イスラムの二大宗派シーア派とスンニ派による政治的・軍事的主導権争い。
【当事者】イラン 対 サウジアラビアなど中東湾岸諸国
【支援または同調する外国】 シーア派反政府勢力:レバノン・ヒズボッラー、イエメン・フーシ―派
 
(2-2)ムスリム同胞団の評価をめぐる対立
【問題点】スンニ派ムスリム同胞団がテロ組織かどうかをめぐりGCCが内部対立
【当事者】エジプト/サウジアラビア/UAE/バハレーン 対 カタール。
【支援または同調する外国】カタール支持:トルコ。

(3)内戦(代理戦争)
(3-1)イエメン内戦
【問題点】「アラブの春」(2011年)で失脚したサーレハ大統領の後継をめぐる主導権争い。
【当事者】首都サナアを含む北部を支配するフーシ派 対 アデンを臨時首都とするハーディー暫定政権及び南部独立派(南部暫定評議会)の連合勢力
【支援または同調する外国】 フーシ派支援:イラン、
ハーディー暫定政権支持:サウジアラビア有志連合軍、UAE(南部独立派、但し現在は撤退)

(3-2)リビア内戦
【問題点】「アラブの春」(2011年)によるカダフィ政権崩壊後の東部勢力と西部勢力の主導権争い。
【当事者】西部トリポリ拠点のシラージュ暫定政権 対 東部ベンガジのリビア国民軍(司令官:ハフタル)
【支援または同調する外国】 シラージュ暫定政権支持:トルコ/カタール/イタリア、
リビア国民軍支援:エジプト/UAE/仏/サウジ。

(4)領土・領海に関する紛争
(4-1)東地中海資源開発競争
【問題点】トルコ、キプロスの東地中海沖合の天然ガス開発をめぐる領海・EEZ(排他的経済水域)係争。
【当事者】トルコ 対 キプロス/ギリシャ
【支援または同調する外国】 トルコ側:リビア(シラージュ暫定政権)、ロシア。
キプロス/ギリシャ側:イスラエル/仏。

(4-2)天然ガスパイプラインをめぐる紛争
【問題点】西欧への天然ガス輸出を目指すパイプライン敷設競争。
【当事者】トルコ/ロシア(黒海South Stream) 対 イスラエル/ギリシャ/キプロス(EastMed)
【支援または同調する外国】(特になし)

(4-3)ペルシャ湾3島帰属問題
【問題点】ペルシャ湾(アラビア湾)沖合の3島の領有権をめぐる紛争。
【当事者】イラン 対 UAE
【支援または同調する外国】UAE側:サウジアラビアなどのGCC諸国。

(5)西ヨーロッパ諸国とトルコの対立
(5-1)NATO軍事同盟
【問題点】東西冷戦時代に旧ソ連に対抗するために創設されたNATOの中でイスラム圏唯一のメンバーであるトルコ。ユーラシア大陸の地政学の変化のため同国の役割が変質しつつある。
【当事者】トルコ 対 米/英/独/仏
【支援または同調する外国】トルコ側:ロシア

(5-2)EU加盟問題
【問題点】EU拡大の流れから取り残されたトルコ。
【当事者】トルコ 対 現EU加盟国
【支援または同調する外国】トルコ側:ロシア

(5-3)シリア・アフガニスタン難民問題
【問題点】トルコを経由してヨーロッパに向かうシリア、アフガニスタンの難民。人道的見地で対処するドイツと治安悪化を懸念するギリシャ、イタリア、仏などの受け入れ拒否国の対立。
【当事者】トルコ 対 西欧諸国
【支援または同調する外国】(特になし)

 上記のほかにもすでに勝敗が決着、あるいは帰趨が明らかになっているものの、その古傷が尾を引く下記のような問題がある。

・イラン/イラク戦争(1979~1988年)
・イラクのクウェイト侵攻と湾岸戦争(1990-91年)
・9.11米国同時多発テロ(2001年)(イスラム・テロ問題)
・イラク戦争(2003年)
・シリア内戦 (2018年~) (イスラム国IS壊滅後)

(続く)


本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com


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石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2020年版石油+天然ガス篇 (10)

2020-09-21 | BP統計
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0514BpOilGas2020.pdf

(アジア・大洋州のシェアは22%から31%に拡大!)
(3)地域別の消費量の推移(2000年~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G03.pdf 参照)
 全世界の消費量に占める地域別の割合の推移を見ると2000年は北米が世界全体の31%を占めて最も多く、次いで欧州とアジア・大洋州が各22%、ロシア・中央アジア9%、その他地域(中南米、中東及びアフリカ)が15%であった。

 その後世界全体の消費量は増加したが、地域によって様相が分かれ、欧州は2,500万B/D前後にとどまり、北米地域も2015年ころまでは3,800万BDとまりであった。これに対してアジア・大洋州地域の消費量は大幅に伸び、2000年の2,600万B/Dが2004年には3千万B/Dを超え、また2012年に4千万B/Dを突破、2019年にはついに5千万B/Dの大台を突破している。この結果世界全体に占める割合も2000年の22%から2019年には31%に達している。

 2019年の地域別消費量はアジア・大洋州が5,100万B/D、北米 4,200万B/D、欧州2,400万B/D、ロシア・中央アジア地域1,400万B/D、その他地域3,400万B/Dとなっており、全世界に占めるシェアはアジア・大洋州が31%、次いで北米25%、欧州15%、ロシア・中央アジアが9%であり、これら4地域で世界の石油・天然ガス消費量の8割を占めている。かつて2000年には15%であった中東、南米およびアフリカ地域のシェアは21%に増加しており、発展途上国のエネルギーの消費が拡大していることがわかる。

(続く)

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今週の各社プレスリリースから(9/13-9/19)

2020-09-19 | 今週のエネルギー関連新聞発表
9/14 経済産業省
梶山経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣と露ノヴァク・エネルギー大臣がTV会議を行いました
https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200914002/20200914002.html


9/15 BP
bp and Microsoft form strategic partnership to drive digital energy ‎innovation and advance net zero goals
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-and-microsoft-form-strategic-partnership-to-drive-digital-energy-innovation-and-advance-net-zero-goals.html


9/17 石油連盟
杉森 石油連盟会長定例記者会見配布資料
https://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2020/index.html#id1901


9/17 OPEC
JMMC focuses on market stability and full conformity
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6099.htm
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石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2020年版石油+天然ガス篇 (9)

2020-09-18 | BP統計
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0514BpOilGas2020.pdf

(石油から天然ガスへシフト!)
(2)石油と天然ガスの消費量の推移(1970年~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G02.pdf 参照)
 1970年から2019年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1970年の石油と天然ガスの消費量は石油が4,530万B/D、天然ガスは9,615億㎥(石油換算1,660万B/D)であった。合計すると石油換算で6,190万B/Dとなり、両者の比率は石油73%、天然ガス27%で石油の消費量は天然ガスの2.7倍であった。

 石油の消費量は1980年代前半に停滞し、1999年及び2009年に減少したもののほぼ毎年増加している。一方天然ガスの消費量は半世紀近くの間右肩上がりに増加しており、2019年の合計消費量は石油換算で1億6,600万B/D(内訳:石油9,830万B/D、天然ガス3.9兆㎥)であり1970年の2.7倍に達している。石油と天然ガスそれぞれについて見ると、石油は2.2倍、天然ガスは4.1倍と天然ガスの伸び率は石油よりかなり高い。この結果、2019年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は59%対41%であり、天然ガスの比率は過去49年の間に14ポイント上昇している。地球環境問題の高まりにより石油に比べてCO2発生量が少ない天然ガスの利用が進んでいることがわかる。

(続く)

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石油と中東のニュース(9月18日)

2020-09-18 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・OPEC+閣僚会合オンラインで開催。サウジ石油相、減産順守はわずか6カ国と強く批判。  *
*OPEプレスリリース:https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6099.htm
参考:「サウジアラビアを危うくする二人の王子:皇太子と石油相

(中東関連ニュース)
・レバノン新内閣組閣に介入するヒズボッラーを阻止するフランス。米関与が問題を複雑化
・米、レバノンのヒズボッラー関係者に経済制裁措置
・リビア、トリポリ暫定政府のサラージュ首相、退任を表明
・イエメン内戦、和平の兆し見られず。進展は捕虜交換のみ
・サウジ商工会議所連盟新会頭の略歴
・アブダビ投資庁ADIO、イスラエルに事務所開設
・ドバイDP World、イスラエルのハイファ港民営化に地元企業と共同参入
・カタール投資庁(QIA)、クレディスイスと数十億ドル規模のクレジットビジネスを形成
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データベース更新のお知らせ

2020-09-18 | データベース追加・更新
下記データベースを更新しました。ご自由にお使いください。

原油生産の推移(2017年1月~2020年8月

OPEC
サウジアラビア
イラン
ベネズエラ
リビア
イラク
ナイジェリア
UAE
米国
ロシア
米国・ロシア・サウジアラビア
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敵の敵は味方かそれとも別の敵か? 複雑な中東の合従連衡と離合集散(上)

2020-09-17 | その他
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0515AllyOrEnemyInME.pdf

1. 問題ごとに敵と味方が錯綜する現代中東
 今も昔も中東は紛争が絶えない。イスラエルとアラブの第一次~第四次中東戦争はその典型的なものである。最近のイスラエル-UAE/バハレーンの和平締結により新たな段階を迎えたが、その他にも多くの問題が発生している。ざっと上げただけでも、シーア派イランとスンニ派アラブの対立、ムスリム同胞団の対応をめぐるカタールとサウジアラビアとの断交などイスラムに根差す問題、リビア及びイエメンにおける「アラブの春」以降の国内覇権争いはイラン、サウジアラビア、トルコ、エジプトなど地域の大国の代理戦争の様相を呈している。また最近では天然ガスをめぐる東地中海の大陸棚あるいはガスパイプラインがホットな話題となっている。その他にも長い歴史的経緯のあるクルド民族独立問題、シリア内戦とそれによる難民のEUへの殺到など人道的な問題がある。そして第二次大戦後の西欧と中東関係の軍事面の中核をなすNATOあるいは政治・経済面でのEUをめぐりトルコが揺さぶりをかけるなど地域の安定を脅かす問題が頻発している。

 これら個々の問題では当事者が敵と味方に分かれて争っている。そして対立する当事国を支援しあるいは同調する国がある。当事者にとって「敵の味方は敵」である。ところが支援国が別の問題では敵の支援に回ることも珍しくない。こうなると「敵の味方は敵」なのか、それとも「敵の敵は別の敵」なのか、敵と味方の区別が判然としなくなる。現代中東を外部から見ると、同盟関係と敵対関係が一体どうなっているのか極めて分かりにくいのである。

 本稿は個々の問題点について敵味方で対立する当事国及び支援あるいは同調する国家の関係を大まかに俯瞰し、その中で主要なゲームプレーヤーを演ずるトルコなどいくつかの国を取り上げて、その国が各問題に関与する事情を概観する。これにより複雑な現代中東の合従連衡あるいは離合集散を解読しようとするものである。

2.紛争の諸様相とその関係国
(1)国家の独立・承認に関する紛争
(1-1)イスラエル・パレスチナ問題

【問題点】イスラエル国家の承認及びパレスチナ国家の独立。
【当事者】イスラエルとパレスチナ(PLO)。
【支援または同調する外国】イスラエル側:米国、パレスチナ側:アラブ諸国及びOIC(イスラム協力機構)
加盟国。

(1-2)クルド民族独立問題
【問題点】トルコ、シリア、イラク及びイラン4カ国にまたがって居住するクルド族と各国政府との独立あるいは自治権をめぐる紛争。
【当事者】クルド族:PKK(トルコ)、YPG(シリア)、クルド愛国同盟(イラク) 対 トルコ、シリア、イラク各国政府。
【支援または同調する外国】(特になし)

(1-3)北キプロス独立問題
【問題点】トルコ系住民が居住するキプロス島北部の分離独立問題
【当事者】キプロス 対 トルコ
【支援または同調する外国】キプロス側:ギリシャ。北キプロス・トルコ共和国承認はトルコのみ。

(続く)

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荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com


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石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2020年版石油+天然ガス篇 (8)

2020-09-16 | BP統計
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0514BpOilGas2020.pdf

(米国一国で世界の5分の1を消費!)
(1)2020年の石油と天然ガスの国別消費量
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-T01.pdf 参照)
2020年の世界の石油消費量は日量9,827万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの消費量は年間3兆9,292億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの消費量を石油に換算すると6,771万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの消費量は1億6,600万B/Dとなる。両者の比率は石油59%、天然ガス41%である。

消費量を国別に見ると、世界で石油と天然ガスの合計消費量が最も多いのは米国であり、また石油・天然ガスのいずれをとっても世界1位である。同国の消費量は石油換算で3,399万B/D、全世界の21%を占めており世界の5分の1の石油と天然ガスを消費していることになる。

米国に次いで消費量が多いのは中国の1,935万B/D(石油換算)である。同国は石油の消費量は世界2位(1,406万B/D)、天然ガスは世界3位(石油換算530万B/D)であり、石油の比率は72%、天然ガスは27%である。第3位はロシアの1,097万B/Dで石油と天然ガスの合計消費量が1千万B/Dを超えているのはこの3カ国だけである。第4位はインドで合計消費量は630万B/Dである。

これら4カ国の消費量を前年の2018年と比較すると、中国は前年より6%と大幅に増加しており、インドも3%増である。米国も1.3%とわずかながら増加しているが、4カ国中ロシアのみは前年比1.3%減である。

5位及び6位はそれぞれイラン(合計消費量587万B/D、石油34%、天然ガス66%)とサウジアラビア(同575万B/D、66%、34%)、7位は日本である。日本の合計消費量は568万B/Dで内訳は石油381万B/D、天然ガス1,081億㎥(石油換算186万B/D)であり、石油が天然ガスの2倍である。日本は消費上位国の中で対前年度減少率が3%と最も多く、順位も昨年の5位から7位に下がっている。

以下10位まではカナダ(合計消費量448万B/D、原油54%、46%)、ドイツ(同381万B/D、60%、40%)、韓国(同372万B/D、74%、26%)と続いている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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