(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。http://mylibrary.maeda1.jp/0513MajorEneosIdemitu2020AprJun.pdf２．過去１年間の四半期業績の推移
ここでは２０１９年４-６月期から２０２０年４－６月期までの各四半期の業績推移を検証する。なお冒頭にも述べた通りメジャーズは毎年１-３月を第１四半期として四半期毎に業績を開示、１－１２月を年間決算としているのに対し、ENEOS及び出光は年度決算(４月-翌年３月)である。従って例えば今年２０２０年４－６月はメジャーでは第２四半期であるが、邦系２社は２０２１年第１四半期となる。
また邦系２社の各四半期決算は前四半期までの年度間の累計で表示され、３か月間の期間数値は示されていない。このためここでは前回と今回の四半期決算の差額を当該四半期３か月間の期間数値としてメジャーズと比較している。
(１) 売上高 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-20.pdf 参照)
２０１９年４－６月期の売上高はShellが９１８億ドルで最も多く、次いでBPおよびExxonMobilが７００億ドル前後で並んでいる。４位以下はTotal(５１２億ドル)、Chevron(３８９億ドル)、ENEOS２２９億ドル）、出光(１３４億ドル)と続いている。ENEOSはトップShellの４分の１、出光は７分の１の規模である。
７社の売上順位は１年間を通じてほぼ変わりがない。売上高は昨年末までなだらかな下降線をたどっていたが、今年１－３月期にメジャー上位３社の売上が急減、さらに４-６月期にはTotal、Chevronを含めメジャーズ全社の売り上げが急落している。この結果、２０２０年４－６月期はExxonMobil ３２６億ドル、Shell ３２５億ドル、BP ３１７億ドルと上位３社が一線に並び、Total ２１６億ドル、Chevronは５社中で最も少ない１５９億ドルにとどまっている。過去一年間でShellの売上高は３分の１近くに、またその他メジャー各社も２分の１に減少している。
ENEOSの売上高も前年４－６月期の２２９億ドルが、今期は１４３億ドルと４割近く減少、出光も１３４億ドルから３割減の９１億ドルになっているが、メジャー５社にくらべ減少の幅は小さい。前年同期はENEOSの売上高はメジャーで最も少ないChevronの６割にとどまっていたが、今期は格差が縮まりChevronと変わらない売上高となっている。
(２) 純利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-21.pdf 参照)
過去１年間、各社とも利益は大きく変動しており、今年１－３月期までの各期の利益トップ企業は、Chevron→Shell→ExxonMobil→Chevronと毎期入れ替わっている。また昨年４－６月期は全社で利益を計上していたが、今年１-３月期にはBP、ExxonMobil、Shellが欠損を出し、Totalも３，４００万ドルのわずかな利益にとどまり、いずれも業績が悪化した。
そして今期はさらに業績が落ち込みメジャー５社のすべてが欠損を計上、特にShell、BPのマイナス額はそれぞれ▲１８１億ドル、▲１６８ドルに達している。TotalとChevronも８０億ドル強の赤字決算であり、ExxonMobilのみが▲１１億ドルという比較的少ないマイナスで済んでいる。
これに対してENEOS及び出光の過去１年間の利益の推移を見ると、ENEOSは２億ドル(‘19 4-6月期)→５億ドル→５億ドル→▲２９億ドル→▲４，５００万ドル（’20 4-6月期）となっており、２０２０年１－３月期に大きく落ち込んだもののメジャーズ各社に比べ振幅は小さい。出光の場合は３億ドル(‘19 4-6月期)→２億ドル→１億ドル→▲８億ドル→▲８億ドル（’20 4-6月期）とここ２期は連続してマイナスであるが、他社に比べると傷は浅い。日系２社の利益状況がメジャーズと比べ比較的平坦に推移しているのは、原油価格の変動をガソリンなどの製品価格に転嫁することが認められ下流部門が安定した収益を確保できる制度に守られているからである。と同時に上流部門(石油・天然ガスの開発生産)がメジャーに比べて極めて小さく、原油価格の変動による巨額の機会利益(あるいは損失)がないためである。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
ここでは２０１９年４-６月期から２０２０年４－６月期までの各四半期の業績推移を検証する。なお冒頭にも述べた通りメジャーズは毎年１-３月を第１四半期として四半期毎に業績を開示、１－１２月を年間決算としているのに対し、ENEOS及び出光は年度決算(４月-翌年３月)である。従って例えば今年２０２０年４－６月はメジャーでは第２四半期であるが、邦系２社は２０２１年第１四半期となる。
また邦系２社の各四半期決算は前四半期までの年度間の累計で表示され、３か月間の期間数値は示されていない。このためここでは前回と今回の四半期決算の差額を当該四半期３か月間の期間数値としてメジャーズと比較している。
(１) 売上高 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-20.pdf 参照)
２０１９年４－６月期の売上高はShellが９１８億ドルで最も多く、次いでBPおよびExxonMobilが７００億ドル前後で並んでいる。４位以下はTotal(５１２億ドル)、Chevron(３８９億ドル)、ENEOS２２９億ドル）、出光(１３４億ドル)と続いている。ENEOSはトップShellの４分の１、出光は７分の１の規模である。
７社の売上順位は１年間を通じてほぼ変わりがない。売上高は昨年末までなだらかな下降線をたどっていたが、今年１－３月期にメジャー上位３社の売上が急減、さらに４-６月期にはTotal、Chevronを含めメジャーズ全社の売り上げが急落している。この結果、２０２０年４－６月期はExxonMobil ３２６億ドル、Shell ３２５億ドル、BP ３１７億ドルと上位３社が一線に並び、Total ２１６億ドル、Chevronは５社中で最も少ない１５９億ドルにとどまっている。過去一年間でShellの売上高は３分の１近くに、またその他メジャー各社も２分の１に減少している。
ENEOSの売上高も前年４－６月期の２２９億ドルが、今期は１４３億ドルと４割近く減少、出光も１３４億ドルから３割減の９１億ドルになっているが、メジャー５社にくらべ減少の幅は小さい。前年同期はENEOSの売上高はメジャーで最も少ないChevronの６割にとどまっていたが、今期は格差が縮まりChevronと変わらない売上高となっている。
(２) 純利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-21.pdf 参照)
過去１年間、各社とも利益は大きく変動しており、今年１－３月期までの各期の利益トップ企業は、Chevron→Shell→ExxonMobil→Chevronと毎期入れ替わっている。また昨年４－６月期は全社で利益を計上していたが、今年１-３月期にはBP、ExxonMobil、Shellが欠損を出し、Totalも３，４００万ドルのわずかな利益にとどまり、いずれも業績が悪化した。
そして今期はさらに業績が落ち込みメジャー５社のすべてが欠損を計上、特にShell、BPのマイナス額はそれぞれ▲１８１億ドル、▲１６８ドルに達している。TotalとChevronも８０億ドル強の赤字決算であり、ExxonMobilのみが▲１１億ドルという比較的少ないマイナスで済んでいる。
これに対してENEOS及び出光の過去１年間の利益の推移を見ると、ENEOSは２億ドル(‘19 4-6月期)→５億ドル→５億ドル→▲２９億ドル→▲４，５００万ドル（’20 4-6月期）となっており、２０２０年１－３月期に大きく落ち込んだもののメジャーズ各社に比べ振幅は小さい。出光の場合は３億ドル(‘19 4-6月期)→２億ドル→１億ドル→▲８億ドル→▲８億ドル（’20 4-6月期）とここ２期は連続してマイナスであるが、他社に比べると傷は浅い。日系２社の利益状況がメジャーズと比べ比較的平坦に推移しているのは、原油価格の変動をガソリンなどの製品価格に転嫁することが認められ下流部門が安定した収益を確保できる制度に守られているからである。と同時に上流部門(石油・天然ガスの開発生産)がメジャーに比べて極めて小さく、原油価格の変動による巨額の機会利益(あるいは損失)がないためである。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
