石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

敵の敵は味方かそれとも別の敵か? 複雑な中東の合従連衡と離合集散(中)

2020-09-21 | その他
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0515AllyOrEnemyInME.pdf

2.紛争の諸様相とその関係国(続き)
(2)宗教に関する紛争
(2-1)シーア派とスンニ派の対立
【問題点】イスラムの二大宗派シーア派とスンニ派による政治的・軍事的主導権争い。
【当事者】イラン 対 サウジアラビアなど中東湾岸諸国
【支援または同調する外国】 シーア派反政府勢力:レバノン・ヒズボッラー、イエメン・フーシ―派
 
(2-2)ムスリム同胞団の評価をめぐる対立
【問題点】スンニ派ムスリム同胞団がテロ組織かどうかをめぐりGCCが内部対立
【当事者】エジプト/サウジアラビア/UAE/バハレーン 対 カタール。
【支援または同調する外国】カタール支持:トルコ。

(3)内戦(代理戦争)
(3-1)イエメン内戦
【問題点】「アラブの春」(2011年)で失脚したサーレハ大統領の後継をめぐる主導権争い。
【当事者】首都サナアを含む北部を支配するフーシ派 対 アデンを臨時首都とするハーディー暫定政権及び南部独立派(南部暫定評議会)の連合勢力
【支援または同調する外国】 フーシ派支援:イラン、
ハーディー暫定政権支持:サウジアラビア有志連合軍、UAE(南部独立派、但し現在は撤退)

(3-2)リビア内戦
【問題点】「アラブの春」(2011年)によるカダフィ政権崩壊後の東部勢力と西部勢力の主導権争い。
【当事者】西部トリポリ拠点のシラージュ暫定政権 対 東部ベンガジのリビア国民軍(司令官:ハフタル)
【支援または同調する外国】 シラージュ暫定政権支持:トルコ/カタール/イタリア、
リビア国民軍支援:エジプト/UAE/仏/サウジ。

(4)領土・領海に関する紛争
(4-1)東地中海資源開発競争
【問題点】トルコ、キプロスの東地中海沖合の天然ガス開発をめぐる領海・EEZ(排他的経済水域)係争。
【当事者】トルコ 対 キプロス/ギリシャ
【支援または同調する外国】 トルコ側:リビア(シラージュ暫定政権)、ロシア。
キプロス/ギリシャ側:イスラエル/仏。

(4-2)天然ガスパイプラインをめぐる紛争
【問題点】西欧への天然ガス輸出を目指すパイプライン敷設競争。
【当事者】トルコ/ロシア(黒海South Stream) 対 イスラエル/ギリシャ/キプロス(EastMed)
【支援または同調する外国】(特になし)

(4-3)ペルシャ湾3島帰属問題
【問題点】ペルシャ湾(アラビア湾)沖合の3島の領有権をめぐる紛争。
【当事者】イラン 対 UAE
【支援または同調する外国】UAE側:サウジアラビアなどのGCC諸国。

(5)西ヨーロッパ諸国とトルコの対立
(5-1)NATO軍事同盟
【問題点】東西冷戦時代に旧ソ連に対抗するために創設されたNATOの中でイスラム圏唯一のメンバーであるトルコ。ユーラシア大陸の地政学の変化のため同国の役割が変質しつつある。
【当事者】トルコ 対 米/英/独/仏
【支援または同調する外国】トルコ側:ロシア

(5-2)EU加盟問題
【問題点】EU拡大の流れから取り残されたトルコ。
【当事者】トルコ 対 現EU加盟国
【支援または同調する外国】トルコ側:ロシア

(5-3)シリア・アフガニスタン難民問題
【問題点】トルコを経由してヨーロッパに向かうシリア、アフガニスタンの難民。人道的見地で対処するドイツと治安悪化を懸念するギリシャ、イタリア、仏などの受け入れ拒否国の対立。
【当事者】トルコ 対 西欧諸国
【支援または同調する外国】(特になし)

 上記のほかにもすでに勝敗が決着、あるいは帰趨が明らかになっているものの、その古傷が尾を引く下記のような問題がある。

・イラン/イラク戦争(1979~1988年)
・イラクのクウェイト侵攻と湾岸戦争(1990-91年)
・9.11米国同時多発テロ(2001年)(イスラム・テロ問題)
・イラク戦争(2003年)
・シリア内戦 (2018年~) (イスラム国IS壊滅後)

(続く)


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荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com


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石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2020年版石油+天然ガス篇 (10)

2020-09-21 | BP統計
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0514BpOilGas2020.pdf

(アジア・大洋州のシェアは22%から31%に拡大!)
(3)地域別の消費量の推移(2000年~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G03.pdf 参照)
 全世界の消費量に占める地域別の割合の推移を見ると2000年は北米が世界全体の31%を占めて最も多く、次いで欧州とアジア・大洋州が各22%、ロシア・中央アジア9%、その他地域(中南米、中東及びアフリカ)が15%であった。

 その後世界全体の消費量は増加したが、地域によって様相が分かれ、欧州は2,500万B/D前後にとどまり、北米地域も2015年ころまでは3,800万BDとまりであった。これに対してアジア・大洋州地域の消費量は大幅に伸び、2000年の2,600万B/Dが2004年には3千万B/Dを超え、また2012年に4千万B/Dを突破、2019年にはついに5千万B/Dの大台を突破している。この結果世界全体に占める割合も2000年の22%から2019年には31%に達している。

 2019年の地域別消費量はアジア・大洋州が5,100万B/D、北米 4,200万B/D、欧州2,400万B/D、ロシア・中央アジア地域1,400万B/D、その他地域3,400万B/Dとなっており、全世界に占めるシェアはアジア・大洋州が31%、次いで北米25%、欧州15%、ロシア・中央アジアが9%であり、これら4地域で世界の石油・天然ガス消費量の8割を占めている。かつて2000年には15%であった中東、南米およびアフリカ地域のシェアは21%に増加しており、発展途上国のエネルギーの消費が拡大していることがわかる。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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