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http://mylibrary.maeda1.jp/0606SovereignRatingJuly2024.pdf
2.2021年7月以降の格付け推移(続き)
(改善著しいオマーン!)
(3)GCC6カ国の格付け推移 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01c.pdf参照)
GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見る。なおUAEはアブダビとラス・アル・ハイマの2首長国のみが格付けされている(ドバイは格付け対象外)ため、本稿ではアブダビの格付けをUAEとみなして比較している。
まず2021年7月時点ではアブダビはAAであり、これに続きクウェイトとカタールがAA-に格付けされていた。しかしクウェイトは2021年下半期にはA+に格下げされ、これに対してカタールは2022年下半期にAA-からアブダビと同格のAAに格上げされている。
3カ国は政治体制、人口・経済規模などが似通った産油(ガス)国である。それにもかかわらずクウェイトが格下げされているのは、同国が中途半端な議会制民主主義を採用している結果、政情が安定せず経済改革がほとんど進まないことに原因があると考えられる。カタールについては前項でも触れた通り天然ガス(LNG)が世界的に品不足で価格が高騰したためである。
サウジアラビアはこれら3カ国より低いA-であったが、2023年上半期にAに格上げされている。世界的な景気回復とOPEC+の協調減産による原油価格の上昇が同国の経済見通しを明るいものにしている。但し同国はUAE(アブダビ)、クウェイト、カタールを大きくしのぐエネルギー歳入を誇りながら、一方で人口も3カ国より飛びぬけて多いため、財政的なゆとりが乏しい。S&Pはこれらの事情を考慮してサウジアラビアの格付けを他の湾岸産油国より厳しく見ているようである。
産油量の少ないオマーンとほとんどないバハレーンの格付けは2021年7月時点では他の4カ国よりかなり低いB+にとどまっていた。その後、バハレーンは現在までB+格付けのままであるが、オマーンは2022年に一気に2ランクあげてBBとした後、2023年下期にさらに1ランク上のBB+に格付けされている。BB+は投資不適格では最も上のランクであり、同国は投資適格を目指して努力中である。
以上
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