石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

中東とエネルギーのニュース(7月10日)

2024-07-10 | 今日のニュース

(エネルギー関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・ハリケーンの影響軽微で原油価格安定。Brent $85.79, WTI $82.35

・イラン石油相:来年3月までに石油生産を400万B/Dに引き上げ

(中東関連ニュース)

・ガザ停戦協議、10日にカタールドーハで再開:エジプト紙報道

・ガザ地区の子供は餓死状態に:国連人権専門家がイスラエルを非難

・イエメンフーシ派、Maerskコンテナ船をアラビア海で攻撃、損害なし

・イラン新大統領:レバノンのヒズボッラーを引き続き支援する

・トルコのシリア接近でトルコ在留シリア人が祖国送還を懸念

・日本-アラブ経済フォーラムで来日のアラブ連盟事務総長、パレスチナ承認を要請

・中国電気自動車メーカーBYD、トルコに年産15万台の工場建設。EUのダンピング関税回避

・エジプト:1-3月期スエズ運河輸入57%減、出稼ぎ送金17%減

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2024年版解説シリーズ(1)石油1

2024-07-10 | EIエネルギー統計

ロンドンに本社を置くEnergy Institute (以下EI)が2024年世界エネルギー統計(Statistical Review of World Energy 2024)を発表した。

*HP:https://www.energyinst.org/statistical-review

 

因みにEIはエネルギー関連分野のエンジニアやその他の専門家のための専門組織であり、2003 年に石油協会とエネルギー協会が合併して設立され、約 20,000 人と 200 社の国際会員がいる(ウィキペディアより)。本統計は2022年まで国際石油企業bp社が発表してきた世界エネルギー統計(bp Statistical Review of World Energy)をそっくり引き継いだものである。

 

以下は同レポートの中から世界のエネルギーの生産量、消費量、貿易量等について石油及び天然ガスを中心として解説したものである。

 

なお2022年以前のbpエネルギー統計については下記をご参照ください。

http://mylibrary.maeda1.jp/BPstatistics.html

 

I.石油

1.世界の生産量

(1千万B/Dを超える米国、サウジアラビア、ロシア!)

(1) 2023年の国別生産量(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-T01a.pdf参照)

 2023年の世界の石油生産量は9,626万B/Dであり、前年の9,441万B/Dを2%上回った。国別では米国が最も多く1,936万B/Dであり、これは全世界の生産量の20%を占め突出している。これに次ぐのがサウジアラビアの1,139万B/D、ロシア1,108万B/Dで共に全世界の12%近くを占めているが米国の半分強にとどまっている。前年と比較すると米国が8.5%増加したのに対して、サウジアラビアとロシアはOPEC+(プラス)の協調減産方針に基づき前年を下回る生産量にとどまっている。生産量が1千万B/Dを超えるのはこの3カ国だけであり、3カ国の世界生産に占める割合は43%に達している。

 

 世界4位のカナダから10位クウェイトまでの各国の順位と生産量は以下のとおりである。

 4位カナダ(565万B/D)、5位イラン(466万B/D)、6位イラク(436万B/D)、7位中国(420万B/D)、8位UAE(392万B/D)、9位ブラジル(350万B/D)、10位クウェイト(291万B/D)。

 

(50年間で2倍に増えた石油生産量!)

(2) 1970~2023年の生産量の推移(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02a.pdf参照)

 1970年に4,800万B/Dであった石油の生産量は1980年には6,300万B/Dに増加した。1980年代前半は価格高騰のため需要が減少、生産量も減少を余儀なくされたが、1985年以降再び成長軌道に乗り2004年には8千万B/Dを、また2015年には9千万B/Dを突破し2019年には9,500万B/Dに達した。2020-22年は新型コロナウィルス禍のため経済活動が低迷、石油需要も大幅に減退したため、生産量は9千万B/D前後まで低下した。しかし2023年の生産量は9,626万B/Dと新型コロナ禍以前の水準を超えるまでに回復している。

 

(シェールオイル開発で米国が驚異的な生産増!)

(3)主要国の過去10年間の生産量の推移(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03a.pdf参照)

 ここでは石油生産量が世界1~3位の米国、サウジアラビア、ロシアに加え、米国の経済制裁のため石油輸出に苦しむ世界5位のイラン及び世界8、9位のUAE、ブラジルの6カ国について過去10年間の生産量の推移を検証する。

 

 2014年の石油生産量は米国が1,181万B/Dと最も多く、サウジアラビアが僅差の1,152万B/Dで続き、ロシアも1千万B/Dを超える生産量であった。これに対しイランは371万B/D、UAE 359万B/D、ブラジルは234万B/Dであった。

 

 この後シェールオイルの生産を本格化させた米国は2017年以降加速度的に増産し、世界一の石油生産国の座を確固たるものとしている。これに対し石油歳入に頼るサウジアラビアとロシアは石油価格の高値維持を狙い、OPEC+(プラス)として協調減産体制をとった結果、生産量は長期にわたり停滞している。

 

 イランは2015年まで400万B/Dを下回るレベルで推移した。その後2017年には494万B/Dまで回復したが、2020年には大きく減退し(323万B/D)、過去10年間では最も低い生産量となった。これは米国の経済制裁とコロナ禍の影響が重なったためである。コロナ禍が終息した2023年の生産量は466万B/Dまで回復、コロナ禍前の水準に戻った。イランはOPEC+の協調減産の対象外であり、さらに欧米の禁輸制裁措置をかいくぐり、中国、インドなどへの輸出が伸びていることが生産増の要因である。

 

 UAEの2014年の生産量は359万B/Dでイランとほぼ同じである。このような状況は10年間続いており、2016年から2018年まではイランがUAEを上回り、2019年から2022年まではUAEがイランを上回っている。しかし2023年はUAEの生産量392万B/Dに対し、上記の通りイランの生産量は466万B/Dに達し再びイランがUAEを追い越している。

 

 ブラジルは深海油田の開発が軌道に乗り、2014年以降生産量が順調に増加した。即ち2014年に234万B/Dであった同国の石油生産量は、2020年には他の産油国が新型コロナ禍の影響で生産が減少した中で唯一前年を上回り300万B/Dの大台を突破した。そして2023年には過去10年間で最高の350万B/Dにアップ、10年前に比べ120万B/D増加している。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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