石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

IMF世界経済見通し:群を抜き6%以上の高成長を続けるインド(2)

2023-07-31 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0582ImfWeoJuly2023.pdf

 

2. 2022年~2024年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-11.pdf 参照)

 主要な経済圏と国家の昨年(実績見込み)、今年(予測)及び来年(予測)のGDP成長率の推移を見ると以下の通りである。

 

(今年は減速、来年は回復の年!)

2-1主要経済圏

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 全世界の3年間の成長率は3.5%(2022年)→3.0%(2023年)→3.0%(2024年)であり、3%前後で推移する見通しである。コロナ禍からは回復する一方、ウクライナ危機が長引き景気の下振れ要因が強く、今年と来年の世界のGDP成長率は停滞すると見込まれる。

 

 ウクライナ危機の影響を最も大きく受けるのはEU圏である。3年間の成長率は3.5%→0.9%→1.5%とされ、今年は3年間の中で成長率が大きく落ち込んでおり、他の経済圏と比べても際立って低い。ASEAN5カ国の成長率は5.5%→4.6%→4.5%であり、世界平均を上回る高い成長率を維持する見通しである。

 

 産油・ガス国が多い中東及び中央アジアの成長率はエネルギー価格の騰落に大きく影響され、3年間の成長率の推移は5.4%→2.5%→3.2%と見込まれている。昨年はエネルギー価格高騰の恩恵が大きかったが、今年は世界平均を下回り、来年は今年を少し上回る成長率で推移する見通しである。

 

(中国を上回る高い成長率を続けるインド!)

2-2主要国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

米国の昨年の成長率は2.1%であったが、今年(1.8%)、来年(1.0%)と連続して成長が鈍化する見通しである。日本の成長率は1.1%→1.4%→1.0%と1%台前半の低成長を続けるものとみられている。日本と同様先進工業国であるドイツの成長率は1.8%→▲0.3%→1.3%であり、今年はマイナス成長になると予測されている。同国は原料のエネルギー輸入価格が高騰する一方、世界景気の低迷で輸出が伸び悩んでいることが低成長の大きな要因と考えられる。

 

中国は3.0%→5.2%→4.5%であり、昨年から今年にかけて経済成長を回復するものの、その勢いは持続せず来年は5%以下にとどまると予測されている。コロナ禍以前は二桁台の成長率を誇っていたことに比べ中国の成長率は伸び悩んでいる。これに対してインドの成長率は7.2%→6.1%→6.3%であり、世界平均を大きく上回る6%以上の高い成長を維持する見込みである。

 

 中国、インドなどと共に新興経済国BRICSの一翼を担ってきたロシアの成長率は対照的な様相を呈している。昨年(2022年)は一昨年に引き続くマイナス成長(▲2.1%)であり、今年(1.5%)、来年(1.3%)はプラスながらも低い成長率にとどまると予測されている。ウクライナ紛争は未だ終息の見通しが立っておらず、ロシアの今年の成長率がさらに下がる可能性は否定できない。

 

産油国サウジアラビアの3カ年の成長率は8.7%→1.9%→2.8%であり、昨年は原油価格高騰の恩恵を受けたが、今年及び来年は世界景気の回復が遅れる一方インフレによる輸入価格の高騰のため、昨年のような高い成長率は期待できないようである。

 

(続く)

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(32)

2023-07-31 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第1章 民族主義と社会主義のうねり(16)

 

032.イスラエル独立(その4):対英テロ活動を経てついに独立(2/3)

 イスラエル独立前後の事情もこの一つの例である。建国の地パレスチナは第一次大戦後、英国の委任統治領となったが、そこには先住民のアラブ人が住んでいた。ユダヤ人は当初「シオニズム運動」に駆られ、次いで「バルフォア宣言」に勇気を得て続々と移住してきた。新移住者は先ず自分たちの土地の取得を目指した。オスマン・トルコ時代からの不在地主たちは戦後の混乱に不安を覚え、またユダヤ人が目の前に積み上げる現金に目がくらんで次々と土地を手放した。土地の所有者となったユダヤ人たちは小作人のアラブ人を追い出し集団農場キブツを造り始めた。

 

アラブ人とユダヤ人の間で紛争が起こるのは当然の成り行きであった。委任統治を任された英国政府はユダヤ人移住者による土地の取得を制限することにより、ユダヤ人とアラブ人の紛を少しでもなくそうとした。するとユダヤ人の反抗の矛先は英国政府に向かった。ユダヤ人とアラブ人と英国政府の三つ巴の対立の中でテロ活動が頻発した。

 

ユダヤ人が英国に対して行った最大のテロ活動が1946年7月のキング・ダビデ・ホテル爆破事件である。この事件により一般宿泊者を含む91名が死亡した。実行犯は過激派シオニスト組織で集団農場キブツの自警団をルーツとするハガナーである。ハガナーは後にイスラエル国防軍の母体となる。第二次大戦後、ハガナーとその後に生まれた対アラブ強硬派の軍事組織イルグンによる独立テロ活動が激しさを増した。手に負えなくなった英国はついに1948年5月14日をもって委任統治を返上することを決めた。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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