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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

荒波に翻弄される国際石油企業と政策に守られる邦系石油企業:2021年(度)業績比較 (1)

2022-05-17 | 海外・国内石油企業の業績

はじめに

 国内1位、2位の石油企業ENEOSホールディングス(以下ENEOS)と出光興産(以下 出光)の2021年度決算(2021年4月~2022年3月)が相次いで発表された。国際石油企業5社(ExxonMobil, Shell, BP, Total及びChevron、以下メジャーズ)の2021年決算(2021年1月~12月)については既に今年3月に「前年の悪夢から脱した五大国際石油企業:2021年度業績速報」としてレポートした。

 

本稿はこれら内外6社の決算資料の中から利益、売上高など比較可能な項目を抽出したものである。

 

メジャーズは四半期決算をメインとし3カ月ごとの数値を公表、第4四半期(10-12月)の決算資料で年間の業績を提示している。これに対してENEOS及び出光の決算期は4月から翌年3月までであり、3カ月ごとに期初(4月)からの累計額を表示している(例えば9月末は4-9月の6か月間、12月末は4-12月の9か月間の累積値である)。

 

決算期間が3か月ずれているため両者を正確に比較できず、特に一昨年以来のコロナ禍での景気低迷による石油の需要減退と価格下落及びそれに続く需要の回復とOPEC+の生産削減による油価上昇に見舞われ、国際石油企業の業績は売上、利益ともに激しく変動している。これに対して邦系2社はエネルギーの安定調達及び供給という政府の方針に沿って原油仕入れ価格を製品に転嫁することが認められ、さらにガソリン価格が高騰すれば価格差を補填される構造となっている。この結果、邦系石油会社は国際石油企業に比べると変動の少ない決算になっている。

 

以下の業績比較では両者の間にこのような大きな違いがあることを含んだうえでご一読いただきたい。

 

なお日本企業2社の決算は円建てであるため、各期の決算付属資料に示された為替レートで換算したドル建て表示で比較しており、2021年(度)の場合はENEOS112.0円/ドル、出光112.4円/ドルである。

 

メジャー五社、ENEOS、出光興産の決算に関するホームページは下記のとおりである。

 

ExxonMobil:

https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0201_ExxonMobil-earns-23-billion-in-2021_initiates-10-billion-share-repurchase-program

Shell:

https://www.shell.com/investors/results-and-reporting/quarterly-results/2021/q4-2021.html

BP:

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/fourth-quarter-2021-results.html

Total:

https://www.total.com/media/news/press-releases/Results-2020-and-TotalEnergies

Chevron:

https://www.chevron.com/stories/chevron-announces-fourth-quarter-2020-results

ENEOSホールディングス:

https://www.hd.eneos.co.jp/ir/library/statement/

出光興産:

https://www.idemitsu.com/jp/content/100039435.pdf

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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SF小説:「新・ナクバの東」(18)

2022-05-17 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年5月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

18. 「国境の南」作戦(5)

羊を放牧していたベドウィンの少年は西から東に向かう3本の飛行機雲に見とれていた。まもなく西の空に別の飛行機雲が現れた。先頭が2機、その後に3機、さらに最後尾4機の見事な編隊飛行である。少年にはそれがサッカーの攻撃の布陣そのもののように見えた。9機は最初の3機に追いつき、合計12機の大編隊となり、次には4機ずつの3編隊に分かれた。その後、左右の2編隊はジグザグ飛行を続けながらも次第に遠ざかり、残る中央の1編隊は真っ直ぐに飛び続け砂漠の地平線に消え去った。それはまさに見事なページェントを見る思いであった。少年はあんぐりと口を開けたまま空を仰ぎ興奮気味につぶやいた。<テントに戻ったら両親や友達に話さなくっちゃ>。

3機に取り囲まれたイスラエルの護衛機は時には速度をあげ、時には急上昇、急降下、旋回を繰り返し、敵機を振り切って給油機に合流しようとした。しかしサウジアラビア機はぴったりとそして執拗に寄り添ったままである。両方の戦闘機は全く同じ米国ゼネラル・ダイナミック(現ロッキード・マーティン)社製のF16である。飛行性能が同じであるためイスラエル機が如何にアクロバット技能を駆使しても結局サウジアラビア機を引き離すことはできない。

 

イスラエルのパイロットはミサイルで相手を攻撃することもできない。当たり前の話だが空対空ミサイルは真っ直ぐ前方にしか飛ばないから真横や真後ろにいる敵機は撃ち落とせない。むしろ後尾につけたサウジアラビア機ならいつでも自機を撃墜できるはずだが、攻撃する気配は見せない。サウジアラビアの3機はただ無言でイスラエル機と編隊飛行を続けるばかりであった。

 

イスラエル機のパイロットは言い知れぬ恐怖感と威圧感の中で次第に焦りを覚え始めた。追尾を振り切ろうとアクロバット飛行を繰り返したおかげで燃料を予想以上に使い果たしたようである。給油機と引き離され、砂漠の上空をあてどなく飛び続け、最早帰投のために残された燃料はぎりぎりである。ここはアラビア半島上空の敵地の真っただ中、砂漠に不時着する訳にはいかない。イスラエルの護衛機2機には基地に帰投する選択肢しか残されていなかった。

 

護衛の2機が踵を返すのを確認したサウジアラビア機のパイロットは基地の作戦本部に作戦終了を報告して帰途についた。

「客人の従者はお帰り願いました。」

 

(続く)

 

荒葉一也

 

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