Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

知らなくていいこと、なんてない。 その弐 ~2018総括(10)~

2018-12-03 00:10:00 | コラム
18年総括の「映画」篇、21傑の第2章。

きょうの発表は15位から11位まで。


とっとといくぜ!!

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第15位『リバーズ・エッジ』

ひどいいじめを受けている山田くんと親しくなったハルナは、彼から「ある秘密」を打ち明けられる。
それは、河原に放置された死体だった・・・。

未だ復活を祈るファンの多い漫画家・岡崎京子の代表作を、「原作モノ」に強い行定勲が映画化。

この原作漫画が発表された当時、好いていた女子が熱狂的な岡崎ファンで、彼女の強い薦めから自分もすべての岡崎作品に目を通した。
登場人物より「やや年上」にはなるけれど、90年代を若者として生きてきた自分にとって、あの時代の空気を完全再現してくれているというだけで感慨深かった。

宮台真司は当時の若者に「終わりなき日常を生きろ」といった。
9.11テロや3.11を経過したいま、この物語を照射することによって変遷する青春論「の、ようなもの。」さえ展開出来そうで興味は尽きない。

しかしながら。
じつは、上に書いたようなことを真剣に考えながら観る必要はないのかもしれない・・・と思うのは、息を呑むほど美しい二階堂ふみの肢体を拝むことが出来たから。

冗談でいっているわけじゃない、映画ってエロスなんだなとあらためて気づかされたのだもの。



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第14位『ファントム・スレッド』

優雅ではあるけれど、やっぱりどこかおかしい。
もっとはっきりいえば、あきらかに気が触れている。

50年代、ロンドン―。
仕立て屋ウッドコックが見初め、彼にインスピレーションを与えつつ、彼の玩具のままではいなかったモデルのアルマ。
ふたりの精神的攻防戦が、スリリングに倒錯的に描かれる。

米映画界の「先端」をいく「PTA」ポール・トーマス・アンダーソンが、再び「異能のひと」ダニエル・デイ=ルイスを起用し、服飾業界の「先端」を生きた男と女の物語を紡いだ。

「辞める辞める詐欺」を絶賛展開中のルイス様、ほかの俳優であれば実力者であっても「それほどいうのなら辞めろや」と思うかもしれないが、宮崎爺とこのひとだけは、詐欺を展開出来るほどの才能と魅力と「資格」を持っていると思う、だから実際に辞めてもらっては困る―と思っているひとは沢山居るでしょう、こんな「どうかしている」演技を見せられたら。



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第13位『万引き家族』…トップ画像

母・初枝の年金だけでは暮らせず、足りない分は家族ぐるみの万引きで補完する主人公一家。

観る前は「当たり屋」を家業としてしまったオオシマの名作『少年』を想起していたが、是枝監督が描くのは「疑似家族」の物語。
90年代以前であれば「ツクリモノ感」が濃厚だったかもしれない、しかし、いまの日本にはそれが「あり得る」と思えてしまう「隙」がある―監督の狙いは、まさにそこにあった。

素麺とセックス、茹でたトウモロコシに見えない花火。
そして、「好きだから叩く、なんてウソだからね」の台詞。

映画はディティールと、ちょっとしたことばが大事―デビュー時から信じつづけてきたものが詰まっていて、これは是枝監督の集大成だろう、そんな作品でパルムドール受賞とは、ちょっと出来過ぎている気がするほどの慶事だと思う。

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第12位『若おかみは小学生!』

交通事故で両親を亡くした小学6年生の「おっこ」が、おばあちゃんの経営する温泉旅館「春の屋」で「若おかみ」として修業していく物語。

人気の児童文学を映画化―といっても、原作そのものもテレビシリーズのことも知らなかった。
そして観始めてからも、どちらかというと好きではない絵柄で正直「どうかな…」と思っていた。

思っていたが、巧みなストーリーテリングに乗せられ、いつの間にか気持ちよく泣いていた。

エンドクレジットでやっと気づく、そうか監督の高坂希太郎って『茄子 アンダルシアの夏』のアニメーターじゃないか! と。

プロフェッショナルたちがプロフェッショナルの仕事をやり遂げる。
宮崎爺や細田守、庵野秀明、新海誠など個の際立つアニメーターが多いなか、このアニメーション映画はチームワークで創り上げた印象が強く、そこがとても新鮮だった。



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第11位『止められるか、俺たちを』

若松孝二、2012年に交通事故で死す―。
好戦的なピンク映画監督として当時の若者の共感を得た「若松と、そのゲバラたち」を、若松プロ出身の白石和彌が描く青春映画。

若松を演じた井浦新、「表現への欲求」と「おんなとして生きること」で悩むヒロインを門脇麦が熱演、
しかし正直にいえば「うまくいっていない」演出も「多々」ある。

それでもこの位置につけているのは、いまは「どこにもない」であろう「熱き映画制作の空間」というものに、抗い難い魅力を感じてしまうから。
どうかしているほど滅茶苦茶な映画道なのに、羨ましい。

そんな嫉妬心を抱く映画小僧は、自分だけではないはずだ。



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明日のコラムは・・・

『知らなくていいこと、なんてない。 その参 ~2018総括(10)~』
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