Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(172)

2016-06-29 00:10:00 | コラム
あーるじゅう「ご」→「ご」にん(GONIN)

まだ現代ほど情報社会とはいえなかった20年前―。

石井隆の新作タイトルが『GONIN』(95)であると雑誌で読んで、まず「どう読むのか」そして「どういう意味なのか」と思った。

「GO」で切ってから「NIN」を読むのか、
待てよ「NIN」とは人気絶頂だったバンド「ナイン・インチ・ネイルズ」の通称だ、石井監督が音楽を題材とする映画を? とか。

それからしばらくして、読みかたはふつうに「ごにん」でいいことを知った。

だから「誤認」だと思っていたのだが、叫ぶ俳優さんたちが並ぶポスターを見て「五人」であることに気づき、ちょっとだけズッコケた。

まぁたしかに『五人』と冠するより『GONIN』としたほうが、クールだわな。

様々な理由から「金欠」に陥った五人(佐藤浩市、本木雅弘、竹中直人、根津甚八、椎名桔平)が暴力団事務所の金を奪い、その結果、おっそろしいヒットマン(ビートたけし、木村一八)に追われるアクション映画。



意外と観ていないひとが多いので、コーエン兄弟の『ノーカントリー』(2007)複数版と思ってもらえれば。

あの映画のアントン・シガー(ハビエル・バルデム)も怖かったが、たけし演じるヒットマンもなかなかに強烈で、自分は「俳優たけし」における最高作だと思っている。

「保険利かねぇからよぉ、ウチらみたいな商売。プラスしてくれねぇとな、ダメだよ」

ひとりずつ殺されていく後半の展開は、アクションというよりホラー映画にちかい感覚かも。


去年―。
石井隆は「登場人物の遺族たち」という設定で物語を再び構築、『GONINサーガ』(2015)を発表。

鶴見辰吾(暴力団員)の息子が、東出昌大。
永島敏行(暴力団組長)の息子が、桐谷健太。
元グラビアアイドルの土屋アンナ。
暴力団3代目に、安藤政信。

ここにルポライターを演じる柄本佑が加わり、

「五人に殺された組関係者」のその後を描くことによって、19年前の事件を照らし出すという構成。





観る前の期待値は「それほど…」だったのだが、これがモノスゴ面白かった。

俳優たちは大熱演(とくに土屋アンナ)、
演出の熱量は前作以上であり、いやもちろんうれしかったのだが、どうした石井監督!? と思ってしまった。

にっかつの先輩として、エロの大先輩として尊敬する石井隆だが、ホンあるいは俳優によって、作品の出来は「そーとー高い山」に到達することもあれば、「そーとー深い谷」に落下してしまうこともある。

どんな監督だってそうだろうが、石井監督の場合は、その落差が「ひじょうに、ひじょうに」大きい。


96年―『GONIN』の姉妹篇ともいえる『GONIN2』を発表、これが珍作といえるほどのクオリティだった。

いわば女版の「五人」であり、



大竹しのぶ・余貴美子・喜多嶋舞・夏川結衣・西山由海などなどがアクションに挑戦、

セーラー服を着た大竹しのぶの勇気や、迫力満点の喜多嶋舞のヌードなど、飽きることはないものの、なんだかごちゃ混ぜに過ぎて、彼女らを引っ張る緒形拳が気の毒に思えた。

『GONIN』と『GONINサーガ』は石井監督の念願の企画、
『GONIN2』は、いわゆる「スタジオ主導の」企画モノだった・・・その差異からくる結果だったのだろうか。


次回のしりとりは・・・
ご「にん」→「にん」しん。

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明日のコラムは・・・

『脚でかせぐ』
コメント (2)
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