Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

それから

2015-06-24 05:53:36 | コラム
某日―。
天候が優れないので、「仕方なく」電車で現場に向かう。

ふだん電車に乗らなくとも、定位置は決めている。
ドア付近。

いや、でもちゃんと、乗降の際はいちど降りて妨げにならないよう気をつけているよ。
あの場所から、ゼッタイに動かないヤツも居るものねぇ!!

相変わらず電車では座らない。
体力維持? のためと、席を譲る際のアレヤコレヤが面倒だと思っているので、だったら最初から座らないよ、、、という考えである。

乗車時間が短ければ人間観察・美女観察を、長ければタブレットで読書する。

で、その日は短めだったので人間観察を。
すると、ある美少女に目が留まった。

私服の女子高生かなぁ、ややギャルっぽい格好をしているが、文庫本を読んでいる。
ブックカバーをしていないから、すぐになにを読んでいるのかが分かった。

自分の終生の愛読書、漱石作『それから』だったのである。

マジか!?

いまっぽい女子高生が、カバーをつけずに『それから』を読んでいる!!

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「あなたにこれから先どうしたらいいという希望はありませんか」と聞いた。
「希望なんかないわ。なんでもあなたの言うとおりになるわ」
「漂泊―」
「漂泊でも好いわ。死ぬと仰れば死ぬわ」

代助はまたぞっとした。

「このままでは」
「このままでもいいわ」
「平岡君はまったく気がついていないようですか」
「気がついているかもしれません。けれども私もう度胸をすえているから大丈夫なのよ。だっていつ殺されたって良いんですもの」
「そう死ぬの殺されるのと安っぽく言うものじゃない」

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いま、朝日新聞で『それから』が再掲載中で、あらためてこの傑作と向かい合っているが、文章が表現が完璧に過ぎて、毎日毎日落ち込んでいる。
そうして、千円札紙幣に描かれた肖像画に手を合わせている。

ごめん、ちょっと嘘を吐いた。
でも、手を合わせたいと思わせるほどに、自分はこのひとのことが好きだ。


声をかけたかったし、向こうも応じてくれそうだと思ったが、いやいやこっちだって仕事中じゃないか。
(緒形直人と)話すきっかけがほしくて、わざわざ同じ宮沢賢治の文庫本を持ち歩いていたのは、『北の国から』の中嶋朋子だったねぇ。。。


話せなかったが、うれしい。
とにかくうれしいよ、現代っ子があんな風に『それから』を読んでくれるなんて。

というわけできょうは、いつも展開している映画の10傑のような感じで、本の10傑をやってみたい。
だいぶ前に載せたような気もするが、少し変化があったものでね、あらためて。


※小説・批評・漫画すべての本が含まれる


(1)『それから』(夏目漱石)

これを読んで、モノカキになりたいと思った。

(2)『山月記』(中島敦)

すぐ読み終わる短編だが、時間をかけてじっくり読みたい。

(3)『百年の孤独』(ガルシア・マルケス)

これ読んでもいないのに表現を語るな―と、先輩に強引に読まされた。

(4)『詩人ケン』(業田良家)

漫画と詩の融合。

(5)『悲しみよこんにちは』(フランソワーズ・サガン)

冒頭に尽きる。

(6)『大いなる助走』(筒井康隆)

愉快、痛快。

(7)『東大一直線』『東大快進撃』(小林よしのり)

後半の怒涛の展開は、『それから』に匹敵する。

(8)『映画辛口案内』(ポーリン・ケイル)

自分が初めて手にした批評集。

(9)『山の音』(川端康成)

『雪国』や『伊豆の踊り子』に比べて地味かもしれないが、深~~いテーマが宿っていて感動した。

(10)『黒い雨』(井伏鱒二)

記録文学の頂点に位置する作品かと。


※そういえばこのPVの男女も、「本」きっかけで出会ったんだよね




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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『ダーリンとハニー』
コメント (3)
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