続きです)
●BGIから学んだこと →「取るリスクと取らないリスクをはっきるする」。これがもっとも重要
●取っているリスク
・株式の本源的価値
・サイズ(→企業規模小さい会社に投資。イノベーションを起こしやすい)
・流動性(→他の運用会社が取れなくて、鎌倉投信がとれるリスク。解約はキャッシュで対応。株は動かさなくてすむ。月々の積立金額もわかるし、入金を前提にリバランスが可能。直販の利点を使える)
●取らないリスク
・市場予測・株価予測はしない。どの会社の株が上がるかはわからない。だから、投資先の銘柄は等配分、業種もニュートラル。同業種は20%以内に抑えている。
・投資タイミングもとらない。ほぼ毎日買っている
・積極的なTAAもしない
●アクティブ運用の基本法則
IR(インフォメーション・レシオ)=IC(情報価値)×√BR(頻度)
-ICはそれほど大きくないと思っている。その分、BRで稼ぐ。特に流動性の低い会社は驚くほど少ない単位で買っている(バレないように)。
-投資先の銘柄は等配分。今は1銘柄が(ポートフォリオ全体の中に占める比率は)2%。比率が2%を超えたところは売る(利益が出ている場合)。毎日売る。どこまで上がるか分からないから。逆に、ウエイトを下回ると買う。が、あくまでも簿価を下回る水準まで下がったら。あとは自動的に買う。
●徹底した分散→「市場・業種」「スタイル」「外需・内需(今は25%:75%)」「地域・決算日、本社の場所など」「投資タイミング」
-ファンドマネジャーは1社だけをみて、割安な株を買っていく。でも、ポートフォリオ全体でみたときに割安になっていないことも多い。「俺はあの時点でこの会社を買っていた」という人はたくさんいるが、「俺はあの時点でこのポートフォリオを組んでリターンをあげた」とコメントする人はいない。
-私たちは「ポートフォリオ全体」でPBR管理をしている。
-運用は1人の「技量」ではなく、「技術」として行うべき(→技術は継承できる。私が事故に遭っても他の人が対応できる)
-「ポートフォリオは芸術」だと思っている。当初から100銘柄くらい投資先の候補があって、その中かポートフォリオに足りないものを加える。あるいは「その中からどれを加えるとリスクが下がるか」といった視点で候補企業の中から組入を決定(自称「オタク」だとおっしゃってました)。
こうして出来上がった運用コンセプトが「ベンチマークなし」「(超)中小型」「予測しない;市場は効率的である」「直接リサーチ型」「リスク管理型」
―いい会社というのは投資するときの「制約条件」のようなもの。いい会社は最終的に社会が決めるもの。いい会社をうまく組み合わせるしくみをつくり、お客様にリターンを提供することが仕事。鎌倉投信の投資哲学を実現するしくみをプロとして提供することが大事だと思っている。
●リスク・リターン
「結い2101」のパフォーマンス評価(2010年3月29日~2012年8月31日)
・実績リターン 年率2.6% (TOPIX -10.8%)
・実績リスク 年率8.7% (TOPIX19.3%)リターン
Q&Aは省略します。
(感想)90年代から投信のファンドマネジャーの方の取材をしていましたが、「この銘柄をどこで仕込んだか」的な話が圧倒的に多い…。新井さんのように「予測はしない。当たらないから」と言ってしまうアクティブファンドマネジャーは初めてかもしれません(笑)。 今回の話を聴いて、「アセットアロケーション全体で管理する」、ポートフォリオのPBR管理やキャッシュ管理などで「リスクを抑えること」をすごく意識されていると感じました。また、キャッシュの比率が高いため、上昇相場では他の投信ほど上昇しないだろうという点にも言及されていました。
以前こちらにも書きましたが、投信を購入するときには5つのPについて確認することが重要だと思っています。「理念に共感したから」だけではなく、「目先の成績がいいから」と飛びつくのでもなく、(ここまで詳しい説明を聴く必要はないですが)他のこともバランスよく調べてから購入する・しないの判断をしても遅くないと思いますし、結果的にそのほうが長く持てるのではないかと思うのです。
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