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ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子のブログ。
お金に関する情報や日頃感じたことを発信していきます。

運用会社としての鎌倉投信(その1)

2012-09-17 12:52:17 | 投信

9/15(土)に鎌倉投信でセミプロ向けセミナーというのがあり、資産運用部長新井和宏さんのお話をきいてきました。投資経験者や金融機関に勤めている方、メディアの方などから「いい会社に投資するだけでリターンあげられるの?」とか、「結い2101ってSRIファンドなの?」といった質問をされることがよくあります。私は鎌田社長だけでなく、新井さんからもお話を伺ったことがあり、それほど違和感は感じていなかったのですが、たしかにこちらだけみると、「理念はわかるけど…。で??」となる方もいらっしゃるかもしれませんね(苦笑)。

ということで、今回は運用担当者である新井さんが「運用会社としての鎌倉投信」というテーマで、少し専門的な話を交えて運用の説明をする会がありました(レジュメ60ページ、1時間半びっしりと説明されましたので、要点のみまとめています)。

経歴→住友信託を経て、BGIへ。約20年の運用経験。アセット・アロケーションが主軸だが、エンハンスド・インデックス、4資産バランス、通貨、ヘッジファンドなど様々な運用に携わる。運用兼企画セクションにいたため、経験の幅は広い。

日本株にβ(ベータ)は存在するのか?→存在する。ただ、リスク対比でやたらに低い。それは「自動車・電機業界依存」「外需依存」「少子高齢化などの社会・構造的な問題」があるから。

仮説の検証→「社会的な問題を解決しない限り、日本株の長期的な上昇はない」。これが鎌倉投信の根幹。こう思わない人は「結い2101」に投資しないほうがいい。

低成長市場(国)への投資手法

-ニッチなイノベーション(→時価総額の小さな企業群に世界シェアが高い企業が存在する。グローバルニッチなマーケットにおいてトップシェアをとる小さな会社が多い)

-物・サービス飽和時代のビジネス(→サービスが同じなら共感性の高いものを選ぶ)
-社会的問題解決型ビジネス
-集中投資

市場に関する仮説

-市場は基本的に効率的。ただし、例外的にアノマリーは存在する。しかし、アノマリーも安定的ではない(→アノマリーは変化する、逃げる。運用会社はそれについていけるかどうか。効率的市場仮説;日本は「セミストロング・ファーム」。BGIは世界的にインフラが整っていて、運用担当者も多数いる。同じことをやっても(鎌倉投信という)ベンチャーが勝てるはずはない。

●鎌倉投信の発想;「インデックスについていかない方法論はないか?」→TOPIX以外への投資、タイミングを分散する、キャッシュを1つの資産として持つ。

個人投資家の特徴               個人向け商品を作るときの解決策

-過去の失敗にも、成功にも引きずられてしまう → ①低いボラティリティ

-下方リスクへの低い許容度(下がるとイヤ)  → ②安定的なリターン

-知識レベルに大きなばらつき           → ③シンプルな商品

-市場が下がったときに売却する習性      → ④応援先を応援する仕組みづくり

補足)投資で成功するには安いところで買って、高いところで売ること。下がったところで売らないようにする習性を商品としてつくれないか。そのための仕組みとして「受益者総会」や「いい会社訪問」などを実施。

運用者の特性     

-ファンドマネジャーのサラリーマン化(→指数にちょっと勝てればいい、隣の席の人にちょっと勝てばいいという人が増えた)

-マネジャーの分断(アセットアロケーションと個別資産) 

-ファンドマネジャーとポートフォリオマネジャーの統合(→ファンドマネジャーはいい会社を買いたいと思っているが、ポートフォリオマネジャーはリスクを下げたいと思っている。つまり向いている方向が違う。以前は分けていたが、今はひとりで兼務するケースが多い。その結果、リスク管理が甘くなることも…)

-第三者評価への依存(BARRA、SRI)

●では、差別化の可能性は?

⑤インデックスの呪縛からの解放

⑥キャッシュマネージ

⑦銘柄選択とリスク管理のバランス(→ポートフォリオマネジャーとファンドマネジャーのバランスをとる)

⑧主体的な調査体制(直接訪問。地方のアナリストがついていないところにアノマリーが存在する)

⑨新規上場銘柄や直近業績の悪い銘柄を敢えて保有

●運用コンセプト

×インデックス、×PI、×ロングショート

◎「企業業績にどうしたらトラックできるか?」…企業業績=純資産と配当金額の増加率は右肩上がり。

●期待リターン・想定リスク水準の設定
・企業の純資産の増加率平均値 →5.2%
・期待リターン5% ÷ 期待シャープレシオ0.5以上 = 想定リスク10%以内

どうしたら企業業績についていけるか

-インデックスの説明力を低下させる

-アノマリーは不安定で小さい。日々努力するしかない

-リスクを下げること(→こちらは技術的にできる。リターンは神のみぞ知る。-リスクを下げるためにも、キャッシュを1アセットとして持つ、東証一部銘柄をポートフォリオの半分以上は持たない)

●アセット・アロケーターとして学んだこと

-TAA(タクティカル・アセット・アロケーション=市場の短期的な環境変化のタイミングを捉えて、機動的に資産配分の変更を行う手法)はリスクの割にリターンが低い(→要は、当てられない)

-機械的なリバランスは度の頻度でやっても大差ない(→利益がでてから。どの程度で行うかは匙加減)

-キャッシュも1アセットである

●キャッシュ比率の決定要因

-直販なので、資金の出と入りがみえるので、キャッシュマネジメントしやすい。これは直販のメリット。

-今は(株式比率を)60~70%の範囲内で管理している。

-ボラティリティの変化によって、キャッシュを変化させることでリスクを抑える。

-ヒストリカルボラティリティ(過去250日)をみて、ボラティリティが上がったら株式比率を下げ、逆にボラティリティが下がったら株式比率を上げる

(続く…)


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