太田川の鮎釣り、解禁日は6月1日。
釣り人のいない我が家では、その話題で盛り上がることもなかった。
おいたちを紐とけば、高校生まで太田川とは何かと縁深く育っていて、
泳ぎは「太田川の河童」と異名を持つほどに川に浸かっていたし、
鮎は自分の家で獲る人はいないのに、夏の食材としてポピュラーであった。
味も私の好みに合っていて、塩焼きを頭だけ残して、
猫のようにむしゃむしゃ食べていたのを覚えている。
ところが、高校を卒業して家を離れて以来、鮎は私の口から遠ざかり、
たまに料理屋さんで、1尾800~1000円も支払っているのに頭も骨も尻尾も残して、
わずかな身だけが胃に収まる上品な食べ物に変わっていた。
それでも、ここ数年の近年は、友人のご主人が趣味の釣り人でみえることから、
毎年数尾のいただきものがあった。
有り難がりながら、昔懐かしい食べ方で、年に一度は食することも出来ていたのだが、
友人の話では、ご主人が体調を崩されて免許証返納、鮎釣りも難しくなってきているらしい。
再び、「太田川も遠くになりにけり」の状態だ。
その太田川を訪れてみる。
どなたかは知らないが、釣り人はいて、
膝位まで水に浸かりながら、流れの中で足を踏ん張り、8mもあるという釣竿を振り回してみえる。
足・肩・首に疲れが残るが、その最中は無心になれてストレス解消になるらしい。
押し並べて、趣味とはそういうもので、疲れは快い筈である。
また、少し離れた川下に移動してみれば、釣り人が憎しみを抱いてしまうほどの
鮎取り名人?の鳥、「川鵜」が岩にいて、時に羽を大きく広げてまるで深呼吸している様子。
やがて、彼なりの漁法で鮎を獲ろうと動きはじめたか、水面を蹴って私の視界から飛び去るのだが、
わずかな範囲にもそれぞれの営みが見え、地球は止まることなく回っている。




※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます