大学入試センターが読解力や推論力・分析力を問う「総合型試験」の導入の可否を、4年後までをめどに検討するらしい[1]。推薦入試、AO入試で大学生の学力が低下しているため検討しているらしい[1]。同試験は法科大学院の適性試験をベースに問題が検討されるという[1]。
はっきりいって、こんな試験改悪は絶対にやめてもらいたい。なぜなら、こんな試験は受験生たちに今のセンター試験以上に何の役にも立たない努力をさせることになるからだ。法科大学院の例を見ればわかるように、適性試験の能力など何の役にも立っていない。中央大学のように適性試験を考慮しない大学院すらあるように、重要なのは入学後等、将来進む分野に直結する能力であり、何の役にも立たない勉強を無理やりやらせるのは無駄であり、受験生もやる気がでないだろう。彼らがかわいそうである。適性試験で主に選抜された法学未習者の司法試験受験生が既習者受験生よりかなり合格率が悪いように適性試験の能力など何の役にも立たないことは証明されている。適性試験の勉強をさせるより、理系に進む人たちに将来使うであろう数学や英語の勉強をさせた方がよほど有益だし、受験生もモチベーションが保てるだろう。
そもそも今のセンター試験ですら私は廃止を主張している。数学や英語の能力を問うているが、高得点には数学等の能力よりセンター試験固有の事務処理的な能力が必要で、数学者ですら数学の問題を時間内に処理するのが難しいと新聞で読んだことがあるし、私もセンター試験の問題を見て、数学能力とは関係ない固有の事務処理能力が要求されている様を感じ、こんな試験なら廃止した方がいいと思った。
センター試験やその前身である共通1次試験は大学ごとの個別入試だけだと難問・奇問が多くなり、受験生の健全な学習の妨げになるという発想から生まれたものだ。確かにそれで難問・奇問は一掃されたが、上で述べたような問題を作り出した。そもそも、難問・奇問を一掃したければ、各大学がそういう問題を出さなければいいだけだ。今の2次試験の質で問題を出せばいいだけだと思う。
また、受験生の学力低下を防ぎたいなら、推薦入試やAO入試を廃止するのはわかるが、なぜ総合型入試を導入しようとするのかわからない。単に一般入試の枠を増やせばいいだけではないか。何の役にも立たない総合型試験の能力をもとに選抜を行うよりずっといい。
思えば、時代が進むほど試験は受験生にとって嫌なものに変化していく。例えば大学入試は最初は大学ごとの個別試験しかなかったのに、共通1次試験、センター試験の導入で受験勉強の負担が増えた。文系の人は数学や理科、理系の人は国語や社会など、苦手でやりたくもない勉強を大学入試を突破するため、しぶしぶ勉強するはめになった。さらにセンター試験は文系の人は社会が2科目中1科目選択から2科目必須、理系の人は2科目中1科目選択から2科目必須と負担がさらにきつくなり、数年前に英語でリスニングの試験が導入され、さらに負担が増えた。ほとんどの受験生がやりたくないと思っていただろう。
文部科学省はなぜこんなにも共通試験とか受験生の負担増に拘るのかよくわからないが、おそらく受験生のためにこういう制度を実施しているわけではなく、自分達の理想とする勝手な教育像を実現するために自己満足でしかない制度を導入するのだろう。
こういう制度変遷を見ていると、昔の人ほど昔に大学受験を突破してよかったと思うだろう。総合型入試の導入など絶対にやめ、センター試験を廃止し、今の2次試験の質のまま昔の個別入試だけかす制度にすべきである。
参考
[1]毎日新聞 (web) 2011.11.25