ご苦労さん労務やっぱり

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「雇い止め」に「無期雇用化」以上のリスクも

2018-04-03 21:59:03 | 労務情報


 改正労働契約法が施行されて丸5年、とうとう「2018年問題」のスタートを切った。各社どのような滑り出しだろうか。
 今日までの2日間に限っては、そして、小職の耳に届く範囲においては、5年を超えて有期雇用契約を締結している労働者が権利発生して早々に無期雇用契約への転換を申し込んだ、という話は、今のところ1件も聞かない。
 もっとも、彼らにしてみれば、次の契約更新までの間に無期契約になれば良いわけで、今のタイミングでそれを持ち出して働きづらくなってもいけない、との心理が働いているのかも知れない。

 一方、雇う側は、今後は(というより「5年前から」ではあるが)有期雇用できる期間は実質的に「5年以下」と考えなければならず、しかも、雇い入れの際に「最長5年である」旨を明示しておく必要もあるだろう。無論、将来的に無期雇用を考えられる余地があるのなら、「最長5年」のくだりは不要であるし、それが法の趣旨でもあるのは言うまでもない。

 ところで、一部の経営者(および一部の識者)からは、「無期契約化を防ぐために、5年が経過する前に雇い止め(有期雇用契約を更新しないこと)すれば良い」といった声を聞くことがある。
 しかし、それは、無期雇用化するよりも、むしろリスクが高いかも知れない。

 というのも、まず、労働契約法第19条は、「反復更新されてきた有期雇用契約を更新しないことが正社員に対する解雇と同視できる場合」または「労働者が更新を期待することについて合理的な理由がある場合」には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない雇い止めはできないとしているからだ。
 無期雇用化の可能性がある(すなわち5年経過を間近に控えている)雇用契約ということは、このどちらか(または両方)に該当する可能性が高く、そうであれば会社側からの一方的な雇い止めは許されない。

 では、契約を反復更新してきた有期雇用従業員との間で「不更新合意」(例えば「この契約を最終とし次期の契約は締結しない」といった条項)を交わしておけば、それに基づいて雇い止めができるかというと、それも簡単な話ではない。
 確かに、契約更新しない旨の合意が明らかであるなら、基本的には、両者の意思が尊重される。しかし、労働者側が「会社からの趣旨説明が不充分だった」とか、「合意しなければその時点で契約更新ができないと思った」などとして、錯誤無効(民法第95条)を主張したとき、会社側はそれを覆す材料を提示できるだろうか。
 この点からすると、「不更新合意に基づく雇い止め」も、リスクを含有しないわけではない。

 となれば、契約更新しない旨を持ち掛ける時期に差異はあるにしても、いずれにせよ、雇い止めしなければならない事情を丁寧に説明したうえで本人に納得してもらうしかない。つまり、無期雇用化した後で退職勧奨するのと変わらないのだ。
 そう考えれば、拙速に雇い止めするのは、トラブル発生やモチベーション低下の要因となるばかりかも知れず、そこまでのリスクを負って無期雇用化を防ぐことにどれだけのメリットがあるのかを見極める必要がありそうだ。


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