ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

賃金の「○○ペイ」払いに関する議論が加速

2021-11-03 18:36:54 | 労務情報

 現行法令では、賃金をデジタルマネー(「〇〇ペイ」と称するものが多い)で支払うことは許されていない。 労働基準法第24条は「賃金は‥通貨で‥支払わなければならない」と「現金払い」を原則としており、労働者の同意を得た場合の「銀行・証券会社等の本人口座への振り込み」・「退職手当に限り小切手等での支払い」が認められている(同法施行規則第7条の2)だけである。
 しかし、近年デジタルマネーが普及していることを踏まえ、厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会)では、現在、資金移動業者の口座への賃金支払いについて議論を重ねている。 もっとも、昨年7月に閣議決定された『成長戦略フォローアップ』では、「2020年度できるだけ早期の制度化を図る」としていたので、スケジュール的には遅れている状態だ。

 労政審が慎重になっているのは、賃金のデジタルマネー払いを可能とすることに、主に労働者保護の観点から、次のような懸念が出てきたからだ。
  (1) 即日、1円単位での引き出しが可能か
  (2) 資金移動業者が破綻した場合の補償が充分か
  (3) 事実上、使用者が特定の業者を指定することにならないか
  (4) 入出金記録や使途に関する情報が第三者へ漏洩しないか

 ちなみに、この5月1日から、資金決済法が改正施行され、資金移動業者(為替取引を業として営む金融機関でない者)が、「第一種資金移動業(高額類型)」・「第二種資金移動業(現行類型)」・「第三種資金移動業(少額類型)」に区分されることとなった。
 このうち「第一種資金移動業(高額類型)」は、金融庁の認可(他の類型は登録制)を要する一方、100万円(従来の上限額)を超える為替取引(海外送金を含む)が可能となり、銀行の行う業務に大きく近づいたと言える。
 厚生労働省は、上述の懸念に関して、資金決済法の改正と相俟って、金融庁と連携しながら規制する仕組みを設けることで解消しようとしているのだ。

 このような観点で、労政審の議論を注視し、近々公布されるであろう厚生労働省令を解釈するようにしたい。
 そして、経営者や人事担当者は、自社において賃金のデジタルマネー払いを導入することのメリット・デメリットを、今のうちから整理・検討しておきたい。

 なお、議論されている「デジタルマネー」とは、「〇〇ペイ」等による“日本円”の電子マネーのことである。 まれに、“外国通貨”や“仮想通貨”での支払いも可能となるかのようにとらえる向きもあるが、それは誤解であることを強調しておく。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 育児短時間勤務者の賞与は減... | トップ | 突然の団体交渉に驚かないで »

労務情報」カテゴリの最新記事