「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「うつろ庵の薔薇 その1」

2013-05-10 15:04:20 | 和歌

 「うつろ庵」に咲く薔薇の種類はごく僅かだが、それぞれに存在感がある花を付けて
愉しませてくれているので、順次ご紹介する。

  

 この薔薇は、川崎市にあった向ヶ丘遊園のばら苑に、三十年ほど前に家族で遊びに行った際、苗木を買い求めたものだ。莟のうちは比較的に鮮やかな色を保つが、大輪の花になると淡い色調に変化する。 品種名を忘れたのは、薔薇に申し訳ない思いで、誠に残念だ。

 向ヶ丘遊園は凡そ十年程前に閉園になったが、市民のばら苑を惜しむ声に応えて、「生田緑地ばら苑」として川崎市が維持管理を引継いだと聞いている。 

 

 「うつろ庵」の住民は、薔薇の栽培については全くの素人で、薔薇の好き放題に委ねているが、それでも四季咲きの大輪を愉しませてくれる優れものだ。春の嵐が吹き荒ぶ時などは、大輪の花首が折れはせぬかと気がかりだが、健気に堪えて虚庵夫妻を感激させてくれた。

 薔薇の足元の土地を柔らかく耕し、肥料を与え、消毒をしたり適切な剪定をするなど、こまめに慈しめば、また違った姿を見せて呉れるのかもしれないが、「うつろ庵」では薔薇も他の草花も、そしてまた人間様も「在るが侭の共生」をモットーに暮らしている。薔薇の咲き具合も一つ一つが個性的なのは、その故かもしれない。

 

 それにしても、この薔薇の莟が開き始める頃の風情は、気品を湛えた、美女を思わせるではないか。花びらの色合いにも微妙な変化が認められ、美女の息吹きすら感じられる様だ。光線の具合にもよるが、重なる花びらが開く様は、神秘の世界を覗く思いだ。
 


           ばら苑ゆ嫁ぎ来りて律儀にも

           四季咲き重ねぬ三十余年も


           花びらの幽かな色の変化にぞ

           仄かにふれぬ美女の息吹きを


           ごく僅か花びら開きてその奥の

           神秘を思えばときめく胸かな