「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「うつろ庵の芍薬」

2012-05-29 22:40:00 | 和歌

 「うつろ庵の芍薬」をご紹介する。

 この芍薬は、虚庵居士が横須賀に居を構えて間もなく、同僚が株を持参して下さったもので、それ以来かれこれ三十余年も咲き続け、愉しませてくれる律儀ものだ。


 
 同僚だった彼は磯釣りが趣味で、しばしば「うつろ庵」を訪ねて近くの海で黒鯛釣りを愉しんだ。そんな或る日、親父さんが丹精して育てた「芍薬の株」をお土産に下さった。その際に「芍薬は連作を嫌うので、出来る限り場所を移動して植え替えをしなさい」との、親父さんのご指導を伝えて下さった。

 狭い「うつろ庵」の庭では植え替えも侭ならないが、ご指導に副って可能な限り植え替えを続けたが、このところ植え替えもついつい間があいてしまった。しかしながら芍薬は、五月になれば見事な華を愉しませて呉れている。久しく彼とも逢ってないが、芍薬が咲くと彼の笑顔が想い出され、「黒鯛がつれました」と誇らしげに報告に立ち寄ったあの頃が懐かしい。


 

          しろたえの花びらの縁にごく細く

          慎ましやかに 紅をさすかも


          芍薬の花綻びて空模様の

          気になる今日かも 雨傘立てかけ


          幾とせを経にしものかわ芍薬の

          花咲きぬれば彼を偲びぬ


          丹精を込めにし芍薬 株持たせ

          指導の言葉を伝える思いは


          親父さまの思いを受けて芍薬は

          いまだに華やぐこころを忘れず