鉢植えの「メキシカンセージ」が、「うつろ庵」の玄関先で晩秋の薄陽を受けて咲いている。この花は、うつろ庵に嫁いできてかれこれ十余年を経るが、夏から秋にかけて独特の花を付けて、毎年楽しませてくれる優れものだ。
鉢植えゆえ、背丈はそれほど徒長しないが、嫋やかな茎にしては花数が多いので、何れも首を傾げてもの思わせぶりな風情だ。
鉢の傍を通っただけでも、花が揺れて挨拶してくれるので、何とも人間味あふれる花だ。路地に植えれば株も増えるだろうし、背丈ももっと成長するのであろうが、「うつろ庵」では敢えて玄関先に置いて、家人のお出掛けや帰宅に際して、花とのささやかな挨拶を楽しんで来た。
株の根元には既に新芽も見えている。数少なくなった残り花も、精一杯に咲いて晩秋を過ごす気配が感じられるこの頃だ。そろそろ草茎を切り詰めて、来春のための準備に協力してやらねばなるまい。
鉢植えのメキシカンセージは嫋やかに
揺れて挨拶する気配かな
玄関を出れば紫小花揺れて
見送る声をこころに聞くかな
紫の小花は口をごくわずか
開けて囁く その声きかまし
身にまとう綿毛は寒気をしのぐらし
晩秋に咲くメキシカンセージは
行く秋の気配を夙に身に受けて
冬の支度を 君整えるかや
萌え出ずる新芽を如何に守らむか
やがて厳しき冬の寒気を