「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「カルーナ」

2011-02-06 22:31:42 | 和歌

 懐かしい花に出逢った。

 大分前のことだが、ニューヨークでの娘の結婚式の後、その足でヨーロッパ旅行に出掛けた。その折に、確かフランスであったかと思われるが、この花に出逢った記憶が蘇ってきた。

 
 
 定かなことは思い出せないが、古い建物の脇の植え込みに咲いていた。レンガの壁を後ろにしたここの花の佇まいが、遠い昔に出逢った花の姿とよく似通っていたからであろうか、図らずも旅の中のほんのヒトコマが思い出されて、思わずカメラに収めた。

 幸いなことに、この花の脇には住人が素焼きの名札を立ててくれていた。「”カルーナ”ツツジ科の多年草です」と書かれていた。花を近くでのぞき込んだら、脇には細く曲がりくねった枯枝が見えたので、草花にしては気配がちょっと違うのかなと、疑問が残った。

 細い枝は高々ニ十センチ程の背丈だが、無数に立ち上がって、それぞれに沢山の白い小花を付けている。小花はもう少し開くのだろうか、満開にはまだ日時がはやいのだろうか?

 念のため花図鑑で調べたら、驚くべき記述が見つかった。曰く、「北極圏周辺から北アフリカにかけて広く自生し、氷点下30℃ほどの耐寒性を備えると共に、耐暑性にも優れる常緑低木」と書かれていた。

 随分とタフな性質を持ち合わせ、背丈が低いとは言え小花をこれ程につけるカルーナは、人々に愛されぬ筈はあるまい。花の色も花の咲き方も、八重咲き、蕾状の花など等、色々あるようだ。しかも常緑とは言え、葉の色もピンクの若芽から、明緑色・暗緑色・黄色・オレンジなどと様々な変化を見せる優れもののようだ。散歩の折には、時々立ち寄ってその変化の程を観せて貰うのが楽しみになった。


            住人の人柄しのばる名札かな

            花観る人への気配りよければ


            身の程はいと小ぶりなれど背伸びして

            小花をつける姿に見惚れぬ


            古びたる風情のレンガを背に負ふは

            古き記憶のカルーナならずや


            様々に彩り変えるこの花に

            またもあい見む散歩の途上で