「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「六ヶ所村の野花 その1 鰭玻璃草」

2009-10-10 00:36:29 | 和歌

 青森県六ケ所村を先月に続いて再び訪れたら、野に咲く「鰭玻璃草・ひれはりそう」が迎えてくれた。

 先月は原子力技術者研修の講師として招かれ、今回は築地市場で青果物を扱う企業の経営陣と幹部職員が、核燃料サイクル施設を見学するのに同行して、講演と共に参加者との意見交換をするのが目的であった。「食の安全」が人口に膾炙される昨今だが、青果物を使う幹部職員が核燃料サイクル施設を
見学して、自らが周辺青果物の安全を納得したいとの思いには、真摯な姿勢が感じられた。
地球上の全ての食品に放射性物質が含まれ、それを食べている皆さんも「放射能人間だ」との説明には、目から鱗の態であった。

 過密なタイムスケジュールが組まれた慌しい日程であったが、ごくわずかな時間とは言え、野の花との出会いをも愉しめたのは、思わぬ収穫であった。

 六ヶ所村には、田舎に似合わぬスパハウス「ロッカポッカ」があって、掛け流し温泉や泡風呂などと
共に、無料で休憩できる大広間、美味しい料理を食べさせてくれるレストランなどが、日頃の憂さと疲れを解放して呉れる。隣の「六趣」醸造所では、土地の名産・長芋から焼酎を醸造するプロセスを見学して、試飲も楽しめるとあっては「呑兵衛」の虚庵居士には、堪らぬスポットだった。

 昼食会のビールでほんのりと頬をそめて、「ロッカポッカ」の外に出たら、秋風が爽やかに吹き抜けていった。道沿いにぶらりと足を運べば、そこは将に自然が歓待してくれる世界であった。





             道端の草叢に埋もれひそと咲く

             野の花 そなたの名前をきかまし







             鰭(ひれ)は魚 玻璃は野花の花のいろ

             重ねて名付けるいにしえ人はも


             花の散るのちに残るはしべなるや

             はたまた鰭の白き小骨か


             野の花は己の名前も意にもせで

             ただひたすらに咲くぞいとしき