「ゲド戦記」原作者である、ル・グウィンから、映画についての正式なコメントがあることを知る。これがとんでもなく悲しい内容。
こちらが、オリジナルで、
Ursula K. Le Guin: Gedo Senki, a First Response.
こちらが和訳。
ジブリ映画「ゲド戦記」に対する原作者のコメント全文(仮).
だいたい原作のある映画は、原作と「同じ」作品ではない。
その意味で、映画版に百パーセント満足な小説家は少ないだろう。もちろん、「映画が原作を超えた」と感じさせてくれるような幸福な事例はあるにせよ、どちらにしても「同じ」ではないのだ。
だから、ル・グウィンが映画化を認めた時点で、ある程度はそのような不幸は予測できたはずで、だからこそ、彼女はこの痛烈な文章でも「品」を保って、「自分の作品ではないのだから」と理解を示そうとしているように読める。
とはいえ、さすがに、"I wonder at the disrespect shown not only to the books but to their readers."(原作のみならず、その読者たちに対する敬意を欠いているのではないか)とまで、原作者に言われた日には、制作者はたまったものではないだろう。ぼくは映画は当面見ないので(たぶん、DVDになるまで)、これがル・グウィンの要求水準が高いのか、それとも作品が万人の目にダメダメなのか、分からないけれど、しかし、とにかく不幸だ。とっても不幸だ。
にもかかわらず、映画化にはこういったことはつきもの。そういうものだ、と言い切ってしまうこともできなくはない。
一点だけ、ジブリ側の失点として、胸が痛く、腹が立つのは、この部分。
I am sorry that anger and disappointment attended the making of this film on both sides of the Pacific Ocean.
I am told that Mr Hayao has not retired after all, but is now making another movie. This has increased my disappointment. I hope to put it behind me.
駿氏は、監督業を引退するから息子にやらせると言ったにもかかわらず、本人がすでに次回作の準備にとりかかり、「ゲド」にはほとんどノータッチ。
これは本当なのだろうか。
もしも、本当だとしたら、背信行為だろう。もちろん、駿氏側にも言い分はあるのだろうが、すっきりしない。
原作者本人はもう、なかったことにしたい、みたいなことを言っているので、深追いすべき問題ではないのだろうが。
なにがどうなったのか知らないし、知りたくもないが、すごく胸が痛い。
胸を痛めるあまり、なんら建設的な意味もないまま、文章にしてしまう次第。