冬が又来て天と地とを清楚にする。
冬が洗いだすのは万物の木地。
天はやっぱり高く遠く
樹木は思いきって潔らかだ。
虫は生殖を終えて平気で死に、
霜がおりれば草が枯れる。
この世の少しばかりの擬勢とおめかしとを
冬はいきなり蹂躙する。
冬はこがらしの喇叭を吹いて宣言する、
人間手製の価値をすてよと。
君等のいじらしい誇をすてよ、
君等が唯君等たる仕事に猛進せよと。
冬が又来て天と地とを清楚にする。
冬が求めるのは万物の木地。
冬は鉄碪を打って又叫ぶ、
一生を棒にふって人生に関与せよと。
_____高村光太郎「冬の言葉」___
雪の上に落ちる雪は
すぐに消えてしまうように思えるのだけど
いつの間にか
どっしりと積もっていて
眺めているワタシの
虚ろなはずの思いも
いつの間にか
ずっしりと重なって重なっていて
「君は何を求めているのか」
聞こえてくる冬の言葉に
答えようにも声がでない
いや、出るはずもない
もとより何も考えていないのだから
からっぽ
からっぽ
飽きもせず
また、雪の落ちるのを眺めているだけ
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