染織工房豆ブログ

染織工房「豆」の日々の記録

続 時計のベルトの裏側

2014年08月20日 08時57分43秒 | 鹿革制品
先日のひき続いて革のベルトを制作しました。
クレイジーアワーというちょっと変わった時計のベルトを制作しましたが、折角クレイジーって言うくらいなら、ということで、馬革で制作。
ちょっとやわらかいのですが、まあ、なんとかいい感じです。裏はもちろん朝霧の鹿です。猫が食べたタンニン鞣しです。

それから、鹿革ならば何でもいいかと言われますが、個人的にはよくありません。
世間に流通している鹿革はクロム鞣しが大半を占めています。日本の鹿革はほとんど中国や北米産の物のようですが、生産性などから、クロムという金属でなめされています。このクロム鞣しは悪くはないのですが、3価クロムというそこら辺に普通にあるもので鞣します。これを焼却すると酸化して六価クロムになります。これはちょっと有害な金属となりますので、皮革が不燃ごみ指定されるのはこんなことが理由です。

このことが悪いとかクロム鞣しはいけないとか言うつもりはありません。それはそれでしっかり処分すればいいだけです。

ただ、仕上がりに大きな違いがでます。
鹿にかぎらず、タンニンなめしはよく水を吸います。すると脂が抜けやすくなり硬くなってしまいます。でも鹿はあまり硬くなりません。基本的にタンニン鞣しはもともと硬いです。ただこの鹿革は柔らかいです。このへんは細かい鞣し方の違いもあるのですが、時間があればおいおいお知らせしたいです。

クロム鞣しは、水に強いです。撥水効果があります。ですから、個人的な染色が難しいです。工場での染色が一般的です。
そして兎に角柔らかいです。また工程も少くすみ、タンニン鞣しに比べて安価で製造できます。被服に多く使われているのはこんな理由からです。

するとですね、この素材感の違いは鹿では随分違います。同じ素材ということから比べてみると、レーヨンと綿くらい違います。
この違いも染織家でないとわからないかもしれませんが、そのくらい違う。知らない人もいますが、レーヨンも綿からできているんですね。ですから、レーヨンは天然染料で染まります。

タンニン鞣しの革は汗を吸ってくれますが、クロム鞣しは吸いません。これは素材の特性なので、仕方がありません。でも、それぞれ濡れてもあまり硬くなりませんから、他の皮革に比べて良いことに変わりはありません。でもどうせ使うなら、水分を吸うタンニン鞣しを使ったほうがいいに決まっています。でも、残念ながら、市場に出回っている鹿革はほぼクロム鞣しです。
ですから、裏を鹿革で作っているものはそうは無いです。これは多くの人に体感していただきたいと思っています。

という、僕の作る鹿革ベルトがいいよっていう話でした。


革のベルトは基本受注生産となります。
時計の大きさや形状によってベルトの大きさが変わることと、時計の保証ができかねるからです。
面白い時計で作ってはおりますので、これが欲しいと言われれば、お譲りすることは可能です。価格は応談でお願いします。

裏はこんなです。
裏を染める時はどうしても、アカハライモリを思い浮かべるのは僕だけではないと思います。


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