10月8日 水曜日
たまたま”他人”が仕事場から去るのが早い夜。
一人残って、紙とパソコンに向かい、血走ったまなこで眉にシワを寄せていた。
流すインターFMから腰が砕けるような曲が聴こえて、ああーと官能を片方で感じつつも、仕事上は個人的急場。
その合間に遊びに行ったネット上のニュースで、部分月食を知る。
こう言うと、まるであたかも恣意的な綴り。。。と思われてしまう平成26年さん。他人が抱く真偽は、もう後が無い私にはどうでもよいが、今週は本当に美しい月夜が続いており、部分月食は21時15分ごろに終わってしまうらしい、と知る。
先ほど「一人残って」と言ったが、実際はその空間にもう一人居た。
もう一人とは、見た目(外壁)にだまされてしまうファンに枚挙いとまない、私にとっての邪魔者。しょせんは寝技で生きる、しょんべん臭い類の確信犯。蒲池法子並みの田中みな実的明らかすぎる三文芝居。だのに、馬鹿な男は恋したり・自分に気があると勘違いしている。それを利用した”あざとい”賢さ。
数メートルという至近距離に居る中、インターFMではデイヴ・フロムさんらが”ナンパ”がどうしてこうしてと、渋く笑いながら「もう月食は終わったんですか?」と言っていて、そのやりとりが聞かれる気恥ずかしさを覚える。
放送が終わる21:00にパソコンを落とし、勢い付けて・一気にしょんべん臭い空間を破り、黙って脱出する。
月夜の下に出る。
高い空を、連続体のうろこ雲が走っていた。
肉眼で、月が半分犯されているのを確認し、スカイツリーの真下で御神体で写真を撮る阿呆みたいに、クチを開けて空を見る残り10数分を味わう。最後、月は沸き立つ雲に呑み込まれて消えていった。
小学生の頃、三ノ輪の物干しで一夜、皆既日食全部を見ていた。そんな生家・リアリズムの宿はもうこの世には無く、私の記憶の底で眠っている。
島にたどり着いては、最近知り合いになったばかりの、茶ネコさんとの再会。座り込んで、カリカリを、と思うが、ミャーミャー鳴いても臆病で、一定距離からこちらに来ない。
澄んだ眼に魅かれるが、鳴くことも眼の綺麗さも、長年の経験からむしろどこかが痛いかつらいかを訴えているようで、心配する。
帰っては、再度、80年代の雑誌類をめくりながら、今度は1983年秋のイギリスチャートを写経してみる。
ニューミュージカルエキスプレス 1983年9月24日(日本発売雑誌は10月初旬)
1位 UB40 レッド・レッド・ワイン
2位 ジェネシス ママ
3位 カルチャークラブ カーマ・カメレオン
4位 ピーボ・ブライソン&ロバータ・フラック 愛のセレブレイション
5位 ポール・ヤング カムバック&ステイ
6位 ライアン・パリス ドルチェ・ビタ
7位 ロッド・スチュアート 君はハート泥棒
8位 ステイタス・クオー オル・ラグ・ブルース
9位 マッドネス ウィング・ユー・オブ・ア・ダヴ
10位 ヘヴン17 ホイールズ・オブ・インダストリー
4位の曲は、当時「ベストヒットUSA」のブリジストンCM曲。改めて見て、イギリスのチャートにあることに違和感を覚えた。
”関西人は、東京みたいに広告宣伝にダマされてまで飲食店に行列せえへんのや”と言われていたが、実際目の前でその様を見た90年代前半のシーンみたいに思う。
■土屋昌巳 「小さな森の人」1998(「森の人」収録)■
月夜を見ながらすみかに戻って、脳裏に浮かんだ曲を探しに、ゴミ屋敷をがさがさする。
しかし、土屋さんのアルバム「森の人」は見つからず。なんとかその前に出た5曲入りミニアルバム「モッズ・フィッシュ」だけが見つかる。
外の風のさわやかさや虫の音色、草むらや眠る花、それを見下ろす月。
その中を、わざわざ島の中を遠回りする道を辿るうちに、生き物たちが夜になって、ねぐらの森に戻っていくような感覚を覚えた。
金曜の夜「アクセル」というテレビ番組に出演していた幸宏。ゲストとして出演した土屋さんの回を思い出す。
同時に、思い浮かんだのが,、どういうわけかこの一曲だった。
■XTC 「オール・アロング・ウォッチタワー」1978■
XTCはリアルタイムで出会った「Black Sea」より前の音が理解できないでいたが、素人であった浪人の頃、聴き録音した「全英ポップス情報」のある夜、番組最後に掛かった曲がコレだった。
その日にやっと受け入れる器が出来て、ある状態になると聴く一曲となった。
10月9日 木曜日
昨夜と似たような時間に帰路を辿ると、今度は雲が切れ・あらわになった丸いお月さん。
それが歩くたびに、上から追っかけてくる。
今夜も月はこうこうと輝いている。
■土屋昌巳 「フランク」1997(「モッズ・フィッシュ」収録)■