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「幻滅のたびに甦る期待はすべて、未来論の一章を示唆する。」(Novalis)

珍しいキノコ舞踊団『家まで歩いてく。』(彩の国さいたの芸術劇場 小ホール)を見た。

2005年03月10日 | Weblog
うっとりするような柔らかく光る膜が、あまねく舞台を包んでいる。ある種ディズニー映画が持つ独自の質と等価と言うか、等価の効果が効いている。その心地よさにうっとりするのもすやすやしてしまうのも一興だろう。でも、なんか歯がゆいような気持ちになっているぼくがいる。スキッとしない。これでいいのかな?て気になる。スィートなソウル・ミュージックあるいはシナトラみたいなメロウなポップスが漂い、そのリズムにかなり表ノリで反応する踊りが続く。合間にはダンサーたちがマイクを持って自分の子供時代を語る。その物語は、一見楽しい想い出にも映るが、兄弟げんか、姉のヒステリー、父親の躾(暴力というと大げさかも、でも)、飼い犬の暴走(セミを食べる)など、イタイ話ばかり。この現実と過剰なまでのファンタジーとがどう絡んでいくのか、と思ってみていたけれど、ささやかな兄弟げんか→仲直り的なフレーズが踊られてはいたものの、充分に説得的な展開を見ることが出来なかった、と言う印象を持ってしまった。NHK教育のお遊戯の時間的な演出が施されつつ、それはでも、一体誰に向けてのそれなのだろう、と疑問に思ってしまった。たのしくてそうかいでかわいい、という説明は、あまりに当たっていてはみ出さない今回の公演では、切なく響いてしまう。ぼくは個人的には、ときに観客も巻き込みながらの盆踊りなだれ込み系のキノコ公演がやっばりすきだな、と思う。

ところで、この公演、A席は3500円。この値段、ぼくが今週火曜日の朝、仕事がはじまる前に築地に行って食べたお寿司と同じ値段。初築地で、何も分からずネットで調べた「大和」という店にともかく並んで食べたのだけれど、いやあ美味かったッス。目を閉じて眉間に皺寄せて集中して食べたくなる一貫to一貫。職人の振る舞いも手つき表情会話の様子もともかく面白かった。せっまい店の細いカウンターの棒(?)上にどんと置かれた鮨の風情も面白い。ダンス公演は、この魅力に勝てるのか、そんなこと考えながら、さいたまをあとにした(とかいってぼくは全然美食家ではなく、この日の公演の帰りには「王将」で夕食でありました、が)。