手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

≪番外編≫現場で求められる力

2014-06-21 19:53:56 | 治療についてのひとりごと
※ FBの投稿より転載

若手セラピストから質問をいただきました。

「あるセミナーで講師の先生が、股関節を曲げて付け根が痛むとき、硬くなった殿筋をゆるめてもダメで、弱くなった腸腰筋を鍛えないといけないと言っていたのですがどう思いますか?」

聞くとご本人にも、股関節を曲げたときの痛みがあるそうです。



しばらく考えて私は答えました。
「試してみれば簡単に確認できることだから、自分で調べてみたらどうかな」



どうしようもないことならともかく、確認できることなら自分の目と手で調べるのがいちばんです。

もしかしたら何かコメントを受けることで安心したいのかもしれませんが、誰かに背中を押してもらったり、お墨付きがないと現場で使えないでは話になりません。



ただ、セミナーでは話の勢いでしょうか、自説のA(この場合なら腸腰筋を鍛える)の有効性を主張するために、B(殿筋をゆるめる)に否定的なことを述べるという、比較広告のような話の進め方をする講師の方も中にはおられます。

その話をしているのが有名な先生や、大御所のようなある種の権威がある方なら、強い説得力を持つかもしれません。

でも体性機能障害の場合はケースバイケースのことがほとんどで、絶対的にそうだといえるのはまれです。

ですから、そのような話を聞いたときコロッといかないために、ひとつだけアドバイスをしました。



「Aは効くけどBは効かない」という話を聞いたとき、

「Bは効くけどAは効かない」

「AもBも効く」

「AもBも効かない」

少なくともこの3つのパターンが起こる可能性を検討すること。

これを意識するだけでも相手の話を冷静に聞けますし、4つのパターンそれぞれを自分で検討できたら本当の力として身につきます。



現場では、特に慢性の機能障害の臨床では、すぐに答えが出ず、ハッキリとわからないことなんてよくあります。

ところが経験が浅いうちは、急いで確かな答えを求め、焦ってしまいがちです。

私もそうでした。

何かやらないと自分自身が不安になってしまうのですが、じっと我慢して見守る、待つということも時に必要です。



臨床で知識や技術が求められるのはもちろんです。

それに加えて不安定で不確かな、先の見通しが立ちにくい状況に居続けることができる、ある種のずうずうしさ。

時機をみて、危険性がないなら手探りで一歩ずつ進めていく粘り強さ。

このような、セラピストの内面の強さというのも求められるでしょう。



それを鍛えるのは現場で経験を重ねるのがいちばんですが、今回のような状況と出あった時、クリアするためにどう対処するのか。

避けずにその課題と向き合うのもよいトレーニングになると思います。