手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

こまめにしたい手指の手入れ その5

2012-07-07 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回の続き≫


続いて前腕の伸筋のセルフケアです。


前腕伸筋の機能異常によって、伸筋の腱鞘炎・テニス肘(上腕骨外上顆炎)を起こします。


これらの筋は細くて長いため、制限が存在する部位へ効果的にストレッチを加えることがなかなかたいへんなことがあります。





そのような時は、肘を曲げて机のふちに前腕伸筋を当てます。


反対の手で手首をつかみ、前腕伸筋を机に押しつけながら、ゆっくりと上下に動かすと上手く刺激できます。







ポイントは、机に当てた前腕の小指側を、自分の顔のほうへ向くようにしておくということです。




こうすることで、前腕伸筋群に上手く刺激を加えることができます。


反対に親指側を向けると、尺骨が当たりますのでご注意ください。


シンプルですが、意外と手ごたえを感じると思います。


もし、机の角ではあたりが強いようなら、ハンカチなどを間に入れておくとよいでしょう。





なお、手指は前腕の前面にある筋肉とのバランスで活動しており、屈筋のトラブルが伸筋に影響を与えていることもあります。


念のため、両面ともケアしておきましょう。





ついでにお話ししますと、腱鞘炎や手根管症候群になっている方の多くは、胸郭の筋肉も緊張して硬くなっています。


本来なら、細かい作業をするときでも胸郭の筋肉は働きます。


ところが、胸郭の筋が緊張してスムーズに働かなくなると、胸郭の仕事量を手先で補わなくてはならず、手の筋肉に大きな負担が掛かるようになります。


その結果、腱鞘炎や手根管症候群を起こすこともあると考えられます。





さらに胸郭から腹部の制限のために呼吸が浅くなると、酸素の供給が追いつかないために疲労や機能障害の回復が遅れることがあります。


今回テーマなら手の症状ですが、胸郭や腹部に制限がなくても、仕事中、たとえばデータ入力中に呼吸が浅くなる、あるいは止めているという習慣が、症状に悪影響を及ぼすこともあります。


このように展開していくと、一部分の症状にも全身が関与していることになりますね。





でもはじめから無理をして、全身を考えなくてもかまわないと私は思っています。


まずは、自分の手をケアしながら進めていけばよいでしょう。


身の丈に応じて、わかるところから始め、次第に隣接する部位へと広げていけば、やがて全身を視野に入れてみることができるようになります。





では、始めてみてください。


手の筋の緊張は、どのように分布しているでしょうか?


触診して感じとりましょう。


そのような緊張の分布をとるのは、どのような使い方をしているからでしょうか?


日ごろの仕事や生活を振り返りましょう。





何か自覚症状を持っている方は、症状の出ている部位と緊張の分布との関係を考えましょう。


自分の前腕から手にかけて存在する緊張によって、運動時にどのようなストレスがかかるのでしょうか。


腱にトラブルを起こしていなくても、前腕にできたトリガーポイントの関連痛によって、手や指に痛みやしびれ、違和感をもたらすことがあります。





続いて、上腕から胸郭にかけてストレッチをしながら抵抗感の強い部分を調べ、その緊張の分布が前腕に及ぼす影響を考えましょう。


試みとして腰部・腹部、または骨盤を前後左右に傾斜させて胸郭に及ぼす影響を感じ取り、そのメカニズムを考えましょう。


もしくは頚椎の傾斜させ、同様の変化を考えるのもよいでしょう。





わからなかったら、解剖図譜のテキストを見ながら考えるとイメージしやすいですよ。


このように学習すると、自分の感覚・経験と知識・概念が結びついて、頭でっかちにならずにすみます。


私はこうして、少しずつ勉強しました。


よかったら試してみてください。





さて、今回の「こまめにしたい手指の手入れ」5回シリーズは、一年を又にかけ飛び飛びでお伝えしましたが、手はいうまでもなく私たちにとって商売道具です。


しかも、替えが効かない道具です。


くれぐれも大事にしてくださいね。