さっぽろ物理塾です

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過去現在未来の時空を行き来するでしょう。
希望を込めての日記・エッセイです。

熱源 を読んだ

2020-01-26 20:10:25 | 日記・エッセイ・コラム

川越宗一著「熱源」を読んだ。
久方ぶりに、気骨のある熱い小説を読んだ。
スケールが広く大きく、多人種間の人間を深く問うて、熱い芯の文学が現れた。

1980年代半ば、北大応電研の先生から、樺太でのビウスツキーの蝋管(ろうかん)レコードにアイヌやオロッコの歌・声を録音した現物を見た。ポーランドで発見されて、北大の文学部でなく応電研に持ち込まれた、とのことだった。 
苦労して再現した音声を聞いたことがあった。いらい不思議に思っていた。ビウスツキーって誰?がなぜ樺太?あの時代のヨーロッパで何が?などであった。

24日(木)午後、コーチャンフォーに出かけた。「LIFE3.0」を探したがなかった。
「時間は存在しない」はあったがこの次にしよう、と思った。
「猟人日記」を探したがなかった。
店員さんがカートに積んでいる本を見て「熱源」を見た。今、入りました、と。
迷わず買った。で、先ほど読み終えた。26日夜になっていた。

僕のうろ覚えのキーワードが繋がった思いで読んだ。フィックションとは言え、時代背景はかなり確か、を知った。
話の導入、幾つものミニ導入に意外性を感じつつ、それぞれが微妙に繋がる展開、ユーラシア大陸と樺太・日本にわたる大きな流れ、終戦のころの帰結。そして・・が心に残るもやもや。
僕がこれまでの人生で知りえたことと、実にマッチングしている記述に驚いた。

僕の祖父家族が北海道に入植したころ、十勝でアイヌの人たちにお世話になったことを聞いていた。子供のころ、奔別炭鉱での樺太・満州からの友達との思いでがある。      
転勤で浦幌・鵡川・本別でのお付き合いでの思い出がよみがえった。
一族のブラジルでの黒人・インディオ・ポルトガル人農業労働者との付き合いの話を聞いていた。
日本人だから、と特別ではない。当たり前に仲良くしていることだ、と育った。

直木賞を得て、評価された。
芥川賞もそうであるが、せっかく、素晴らしい小説でデビューしたのに、多くの作家が「殺人もの書き」になるのが嘆かわしいのだ。どうか、そうならないように願望いたしたいのです。そうなったら「熱源」は台無しになってしまいます。