中国人民解放軍のなかでAI開発に辣腕を発揮していた一人の大佐が急逝し、7月15日に八宝山革命墓地で葬儀が行われたと『サウスチャイナ・モーニングポスト』が伝えた(2023年7月17日、電子版)。
この人工知能の指導者は軍事シミュレーション用AIのソフトウェア開発を担った馮陽河大佐で、享年38歳という若さだった。死因は交通事故という。
そもそも八宝山で葬儀が催行される「資格」とは軍人ならば、元帥、将軍、有力軍事委員会委員が対象である。中級将校が八宝革命墓地に葬られたことは軍から異例に評価されたことになる。すなわち軍におけるAI開発への多大な貢献が認められたのだ。
ならば憑は何を開発したのか? 憑陽河は湖南省長沙にある国立国防技術大学(NUDT)の准教授だった。
この大學は米国のブラックリストからは漏れているが、「211プロジェクト」「985プロジェクト」など内容が不明の研究にくわえ、スパコン「天河」シリーズの開発で知られる。『天河』は2013年から二年間、スパコン演算速度で世界一を記録した。
人民解放軍が共同訓練をシミュレートする目的で使用するAIプログラム「ウォースカル1」と「ウォースカル2」の開発チームを率いた。憑は2011年から2013年にかけて「共同訓練プログラム」の一環としてハーバード大学で統計学を、アイオワ大学で高性能コンピューティングを学んだ。米国が中国を「戦略的パートナー」などと持ち上げていた頃である。
2014 年に博士号。国立国防技術大学によれば馮教授は過去10年間におよそ60本の論文を発表しているという。
日本で発覚した「産業技術総合研究所」の研究データ漏洩事件は中国籍の元上級主任研究員を逮捕したが、この中国人は「国防7校」の一つ、北京理工大の教授を兼務していた。
権恒道元産総研上級主任研究員は「フッ素化合物の合成技術に関する研究データ」を盗み、中国の化学製品メーカーに送信していた。
人民解放軍と関係が深い「国防7校」とは、北京理工大、北京航空航天大、ハルビン工業大、ハルビン工程大、南京航空航天大、南京理工大、西北工業大である。現在日本の十の大學が、これら国防七校からの留学生を受け入れている。
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