歴声庵

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芝原拓自著 「世界史のなかの明治維新」

2007年07月26日 21時23分49秒 | 読書

 「世界史のなかの明治維新」と言うタイトルだけあって、序盤は開国より始まった交易によって、どれだけ国内の経済が混乱したのかと言うのを事細かく説明してくれています。主な日本の交易先だった当時の英国の輸出・輸入の実態を詳しく説明してくれ、これにより国内の物価や産業がどのように変化したのかを判りやすく説明してくれます。この開国により始まった交易による国内の経済混乱が、明治維新の要因の一つになったというのは承知していましたが、これに関してここまで詳しくかつ判り易く説明してくれた本は初めてだったので、本当に勉強になりました。
 その後もこの諸外国との交易を重視した幕末維新史の通説を書いてくれて、一般に警察権を掌握する旨ばかり強調される内務省を、諸外国との交易から国内産業を守る為の省庁という点を重視して書かれているのが印象的でした。そのような意味では「世界史のなかの明治維新」というより「世界経済と明治維新」といった印象が強かったです。
 もっとも単に経済だけではなく、明治七年の台湾出兵の際に何故清国が弱腰だったのかについての説明も判り易かったのですが、明治政府にとって経済的な重要問題である地租改正や秩禄処分に対して詳しく説明してくれるなど、経済を重視した幕末維新の通史という印象が強い内容でした。
 最後に気になったのが経済重視という視点から、井上馨等の大蔵省の官僚の手腕を高く評価しているのですが、この為大蔵省と対立した司法卿の江藤新平の行動を「大蔵省いじめ」と解釈しているのには違和感を感じました。


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1 コメント

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明治維新から脱亜へ (Hammett)
2015-08-04 15:25:34
いつから日本が征台や征韓を口にするようになった、この小誌を読んで少しわかりかけた思いで読み終えました。開国から欧米列強の圧力が日本をもその仲間にしたと言われていましたが、どうも違うようです。明治の指導者らには当初から”東アジアへの国権拡張”を目論んでいたようです。
この続きが読みたいです。
福沢諭吉が日清戦争開始のおり、戦時中だけは批判をせず勝利に口泡を吹いたという事実から、この小誌を探しました。
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