歴声庵

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毛利敏彦著「明治六年政変」

2005年12月23日 19時54分18秒 | 読書
 いわゆる明治6年の「征韓論」政争を扱った内容なのですが、征韓論と言えば大久保利通・岩倉具視・木戸孝允等の外遊派と、西郷隆盛・江藤新平・板垣退助等の内治派との権力闘争と言うのが通説ですが、この本は明治6年の政変を江藤新平と木戸を筆頭とした長州派との権力闘争で、従来明治六年政変の主役とされている西郷と大久保は、この江藤と長州派との権力闘争に巻き込まれたに過ぎないと言う斬新な内容でした。
 元々江藤新平が司法卿時代に山県・井上・槙村等の長州派の汚職を激しく攻撃したのは有名ですが、これを江藤の正義感から行われたと主張する人と、彼の権力欲から出たライバル追い落としの行為と主張する人に分かれますが、筆者の毛利氏は前者の代表者で、江藤が正義感を持ちかつ卓越した行政手腕を持った人間として描いてします。実際私の江藤観も毛利氏の影響を大きく受け、明治政府の中では大久保利通に続く逸材として認識しています。
 その大久保と江藤が政敵だったと言うのは有名ですが、この本では子分を攻撃された木戸が江藤を敵視し、これが明治6年の政変に繋がったと言う、従来とは違った視点で描かれているのが斬新です。まあ文献の解釈に多少強引な所がありますが、通説の外遊派対内治派と言う単純な図式よりかは、江藤対長州汚職派とこれに巻き込まれた大久保と岩倉と言う説の方が説得力があると感じました。
 私は戊辰戦争後の歴史には疎いので専門的な事は判りませんが、そんな初心者的にはかなり楽しめた内容だったので個人的にはお勧めです。


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