転職後しばらく読書感想が書けなかったのですけれども、盆明け辺りから下請けも正式稼動し、読書が出来る時間が出来たので、久々に読書感想を書かせて頂きます。
タイトルに惹かれて購入したものの、この本で描かれている軍需物資はあくまで材木資源のみで、「森林資源から見た戦国合戦」と言った方が相応しい内容だったので、正直期待していた内容とは違う物でした。
この材木資源については非常に詳しく書かれており、当時の城や陣地や作るのに必要な材木から始まり、戦国武将の林業行政についてや、当時の森林生態までの広範囲について資料を駆使して描いてくれています。実際戦国合戦では多数の材木資源を必要としていたのは知っていたものの、その森林資源の運用については感心を持った事が無かったので、本書での説明は非常に勉強になりました。
特に船橋の説明については非常に興味深かったですね。当時の技術力では大きな河川に橋を掛ける事が出来なかったので、戦国時代の軍勢は橋橋を掛けて渡河していたと言うのは多くの書物に書かれているものの、この橋橋の運営について詳しく書かれた書物は初めて読んだので、本書の橋橋についての説明は非常に興味深かったです。
他にも当時の植林行政や、当時の戦国武将がいかに森林資源を保有している為に努力していたかなどの記述は、他の本では知る事の出来ない戦国時代の一面を知る事が出来ました。
以上のように森林資源から見た戦国史の本としては優れているものの、冒頭に書いた通り「軍需物資から見た戦国時代」のタイトルからすると偏った内容だと思います。確かに材木物資(森林資源)も大切だと思うものの、当時の軍需物資で最も大切なのは鉄と火薬だと思いますので、その鉄や火薬などの軍需物資についての記述は皆無なので、その辺では肩透かしをくらった気分です。
しかし本書を読む限り、筆者は元々戦国時代における環境変化(環境破壊)を書きたかった模様なので、筆者の試み自体は見事成功したかと思います。そのような意味では非常に優れた内容とは思うものの、ただタイトルと内容が合っていないと言うのが本書の問題点と言うべきべきでしょうか。
余談になりますが、戦後の杉の植林行政が、今の花粉症問題に繋がっているのは、恥ずかしながら初めて知りました。