歴声庵

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三池純正著 「真説・川中島合戦」

2008年09月23日 20時06分50秒 | 読書

 史上名高い第四回川中島合戦を、「上杉軍と武田軍による予期せぬ遭遇戦」と言う主張で書かれた本です。川中島合戦についてはそれなりに知っていると思っていたものの、本書を読むとまだまだ知らない事があったので、読んでいて楽しかったです。

 本書は実際の川中島合戦の説明に入る前に、まずは資料に残る川中島合戦についてが説明されます。「甲陽軍艦」の信憑性が低いのは多く知られているものの、そもそもその「甲陽軍艦」くらいしか、第四回川中島合戦について記述された書物が無いと言うのが意外でした。てっきり上杉側の史料には、第四回川中島合戦について書かれていると思っていたのに、上杉側には第四回川中島合戦について書かれた資料は無いと言うのは知りませんでした。また上杉流軍学のルーツが本家の米沢藩ではなく、紀州藩だと言うのは知らなかったので興味深かったです。
 丹念に資料を読み込んだ上で書かれた内容は興味深く、楽しく読む事が出来ました。特に善光寺の記述については興味深かったです。宗教史についての知識の無い私は、善光寺を単なる地方の一寺院としか思っていなかったので、本書に書かれていた善光寺の影響力と、信玄が善光寺を甲斐に持ち帰った事による効果についての記述は興味深く読ませて頂きました。
 この様に本書は資料を丁寧に読み込んだ上での記述をしてくれているので、資料が殆ど無い第四回川中島合戦については、謙信が単身信玄の本陣に斬り込んだなどの通説は否定出来たものの、自分の説がまた推測の域を出ない物であるとして書かれているので、その真摯な姿勢には好感が持てました。筆者が主張する第四回川中島合戦が「上杉軍と武田軍の予期せぬ遭遇戦」だったと言う説が、正しいかどうかと言うのは私には判らないものの、興味深い説の一つだとは言えるのではないでしょうか。

 以上の様に本書は資料を重視した内容になっており、その資料を重視する姿勢には好感が持てるものの、(近代史に比べて)良質の資料が少ない戦国史を研究するのがいかに難しいかと言うのを実感する内容でした。